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クールビューティー・俺  作者: 王子様
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ツンツン王子様系への道

 昔、こんなことを聞いた。



姉:「よっちゃん、これからの時代はイケイケ俺様系よりもツンツン王子様系だよ!」



 姉の言葉は相変わらず難解すぎて理解できなかったが、要するに毒舌系男子はモテる、ということらしい。なぜ人を傷つければモテるようになるのか、その因果関係は全くもって不明ではあるが、まるで人生を一巡したかのように万能な姉の言うことならば間違いはないと判断した幼き俺は、姉の言う通りに『ツンツン王子様系』になることを決意した。これで「幼なじみのかなちゃん」から好意を寄せられることになるだろうと姉も太鼓判を捺してくれた。



姉:「よっちゃん、ツンツン王子様系になるためには喧嘩が強くなきゃダメだよ!」



 幼少の頃より既に「暴力は何も生み出さない」という持論は持っていたが、全知全能に最も近い姉の言うことならば間違いはないと判断した俺は、姉の作る『激マズ筋肉増幅圧縮ドリンク&ミール』を飲みながら筋トレに励んだ。



姉:「よっちゃん、ツンツン王子様系ならお金はいっぱい持ってなくちゃダメだよ!」



 筋トレに励む子どもの俺に姉が語ったのは、極ふつうの正論であり世界の常識だった。親のアカウントからハッキングを掛けて創られた架空名義の口座を不正利用して行った株式投資で、姉からの薫陶を受けた俺は巨額の富を獲得することに成功した。具体的には我が国の国家予算10年分程度。



姉:「よっちゃん、ツンツン王子様系なら勉強もばっちり出来なくっちゃダメだよ!」



 まだまだ子どもの柔らかい脳味噌をフル活用して様々な言語や理科数学の知識を教えてもらった。でも人間性を形成するのに重要な芸術や国語、道徳などは一切ノータッチであったので、何か深い意味があるのかもしれないと勘繰った。なかった。



姉:「よっちゃん、ツンツン王子様系なら相手を思いやる罵倒を覚えなきゃダメだよ!」



 未だ幼稚園にすら入園していないぐらいに幼かった俺は、それって矛盾してないかと思った。罵倒という言葉は、激しく罵ったり、酷く悪様に貶すことだと理解していたからだ。相手を思いやる発言とはむしろ真逆だろう、と。しかし三千世界の神々よりも深淵なる智謀に長けた姉の言うことならば間違いない。言葉の裏に相手を思いやる心を添える練習をした。




 姉から課される訓練を全て熟し、合格を言い渡される頃には俺は既に高校生になっていた。義務教育中も学校が終わればすぐ帰宅していたのでもっと早く『ツンツン王子様系』になれると思っていたのに、実際は想定よりもだいぶ出遅れた。というか姉がこんなにも尽くしてくれるとは想像だに出来なかった。姉は全知全能の神の如く非常に飽きっぽいので、ただの気紛れで施しを受けられているという現状に甘んじたヘタレ、もとい言われたことしかやらない俺のことなどすぐに捨てると思っていたからだ。

 姉式『ツンツン王子様系』検定に合格した後の最近のルーティンは、起床→ランニング→姉の作った朝食で有り余る活力を抑え気味に調整→学校→帰宅後すぐに筋トレ→喧嘩の術として姉から教わった武術の型稽古→学校の予習復習→姉の作った夕食で体内から調整→風呂→姉考案の強くなるためのマッサージ→姉直筆の台本で罵倒練習(対象は畏れ多くも完璧な姉)→就寝。

 もはや『ツンツン王子様系』とやらには全く無関係な『ただただストイックなスポーツ少年』のような気がしてならないが、姉が合格と言ったので恐らく今の俺は『史上類を見ないレベルで仕上がったツンツン王子様系』なのだろう。因みに「幼なじみのかなちゃん」には既に俺以外の彼氏が出来たことを追記しておく。

罵倒練習の一部


「節制の効かないデブは、肥え太るだけの家畜と同じだ。(だから少し食べるのは我慢しようね、君は理性を持った人間なんだから。)」

「汚い泣き顔だな。(早く泣き止んでね。)」

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