5 5と1と3とプラス1(その1)
「レイも今日ここで一緒に野営するの?」
リズリーアが屈託なく、にこにこレイノルドに話しかけている。
レイノルドはじりじりと後退った。
「べ、べ、別に、居たくて居るわけじゃ、ない」
うん。
もう日はすっかり暮れたし、夜だし。
「えー、でも、明日ここから帰るつもりじゃないでしょ?」
「ここまで来て、明日ただ帰るなんて意味がないだろう」
うん。
散歩で入る場所じゃないもんね。
ロッソからだいぶ遠いしね。
「じゃあレイも火番よろしくね! 順番最初でいい? ラウル、レイ、おじさん、セレスティの順」
「か、構わない、が」
うん。
いい感じだリズ。
俺一番目がいい。
セレスティが「私が中番をやります」とグイドに言い、「俺は慣れてるから問題ない」とグイドが返す。
うう、ごめんなさい。楽しようとしてごめんなさい。
「俺が二番目をやります」
とラウルは自己申告した。何と言ってもこの一行の責任者だ。楽な役ばかりしてはいけない。
「レイは何か目的があって来たの?」
「――そうだ。俺には俺の目的があって」
「そっか」
リズリーアはぱん、と両手を合わせた。
「ラウルの手伝いしたいもんね!」
うん――うぇ!?
先ほどから火の様子を念入りに見ていたラウルは、焚き火の向こうの二人を二度見した。
「ばっっ――、そっ、そんなのじゃない!」
レイノルドの挙動が不審になっている。
焚き火を挟んでラウルと目が合い、影がくっきり浮かぶほど眉間に皺を寄せた。
「おっ、俺は――」
「違うの?」
「リ、リズちゃん……」
ヴィルリーアが袖を引いている。「あんまり、はっきり聞いちゃ悪いよ……」
「だってぇ、面白いし」
「面白い!?」とレイノルドは端正――なはずの顔を思い切り歪めた。
「お――俺は、きりふり山に用があって」
「何の用? 危ないよ? 一人で入るところじゃないよ?」
「あ――」
うん。
リズ。
突っ込んじゃいけないところだそこは。
「いーじゃん、一緒に行こうよ。一緒に行ってほしいなぁ」
「えっ」
焚き火の灯りに紛れたようだがレイノルドは顔を赤くした。
「盾は多い方がいいし」
うん。
そうだね、うん。
「た、盾?」
盾だね。
けれど狼との戦い、レイノルドの剣は見事だった。
「詠唱中、あたしとヴィリ無防備だから」
「やっぱり初めての実戦じゃ、勝手が違うし」と続ける。
「ご、ごめんね……僕、慌てちゃって」
ヴィルリーアが俯いてリズリーアの袖をつまむ。
「もう、いいんだってば。実戦でなきゃできないことばかりなんだから。あたしもきっと同じだし、いい経験だよ」
リズリーアは双子の両手を同じく両手で握り、額をコツンと当てた。
にこり。
首を傾げてレイノルドに愛らしく微笑む。
「盾が厚ければ落ち着けると思うんだ。ね」
「そ――」
レイノルドは口籠もり、顔を逸らした。
「そのくらいなら、やってやる」