それがレイティア様の望みでもありますので
深く考えずに18時更新にしました。そういえば中途半端な時間ですね・・・。
「ようこそ、ルシャルさま。
私はこの図書館ダンジョンのギルドマスターを拝命しておりますカミョンと申します」
「は、はい。ルシャルです。
こっちは姉です」
連れ込まれた部屋の中では優しそうな女の人が出迎えてくれた。
あ、お茶とお菓子も出てきた。美味しそう!
「どうぞ、召し上がってくださいな。
早速ですが、ルシャルさん。
あなたは今日初めて図書館ダンジョンに入って、お昼前の短い時間で2冊を読破したと聞いております。
間違いございませんか?」
私は口の中が蕩けそうになるくらい甘い焼き菓子を頬張ったまま、こくこくと頷いた。
「そしてルシャルさんが持ち帰られた『恋の宙返り・豚男にキスはナシよ?』にズレヒゲ様の挿絵が入っておりました。
私も拝見しましたが、大変驚きました。
これはギルドにとっても大きな発見です。
よろしければ金貨40枚でお譲りいただきたいのですが、いかがでしょう?」
なんかよく分からない金額が出てきた。
私は判断できなくて、隣にいるお姉ちゃんを見た。
お姉ちゃんは青い顔をしたままこくこくと頷いていたので、私も同じように頷いた。
あ、出されたお菓子食べていない。美味しいのに。
私がもらってもいいかな?
「ありがとうございます。良い取引でした。
ルシャルさんには、攻読者としての才能がありますね。
これからも図書館ダンジョンギルドと良いおつきあいを長くお願いします」
「たまたまですよ!きっと偶然だと思います。
図書館の本は面白くて、私はただ読んだだけですから」
「そういう幸運も実力のうちですよ。
これからもたくさんの本を読んでくださいね。
それがレイティア様の望みでもありますので。
では金貨を用意させますね」
ギルドマスターさんは、優しそうに微笑んでくれた。
この人はいい人かもしれない。
いや、いい人だと思う。
◆
私とお姉ちゃんは、受付で教えてもらったレストランでお昼ご飯を食べ終えてボーっとしていた。
「金貨46枚って、びっくりだね。
さすが領都はすごいねえ。さっきのお菓子も美味しかったよ。
お姉ちゃんはどうして食べなかったの?」
「カミョン様の前で食べられるわけないでしょ!
あなたが平気な顔をしていたので、逆に怖かったわ。
あー粗相しなくてよかった」
「カミョン様って優しそうな方だったけど、そんなに偉い人なの?」
「領都の超有名人よ。
ズレヒゲ様の姿絵の鑑定とトレードで頭角を現した才女。
図書館ダンジョンができてすぐギルドを立ち上げて、本の売買や貸し出し商売をあっというまに軌道に乗せたの。
あの方がいなかったら、図書館ダンジョンもここまで有名になってなかったかもね。
いまは女爵を拝命している貴族様よ」
「ふえええ。やっぱりすごいんだねえ」
「それより私がこんなに金貨もらっちゃっていいの?何もしてないけど…」
「いいよいいよ、私が持ってても仕方ないしさ。
お小遣いとお土産代と帰りの旅費があればいいからさ」
そう。私はお姉ちゃんに結局金貨を36枚渡した。
お姉ちゃんはそれを自分だけのお金にするみたいだ。
図書館ギルドが預かってくれるんだって。
私も預かってもらおう。金貨10枚持ってるの怖いもんね。
「それよりお昼ご飯の後はどうする?
領都にはほかにも楽しいところがあるわよ。
夕方前に買い物をして一緒に家に帰るけど、それまではルシャルの行きたいところに連れて行ってあげるわよ」
「そうだねえ」
どこがいいのかな?よく分からないな。
でも図書館ダンジョンは楽しかったなあ。
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