ギルドマスターがお呼びです
IT系だとWBSというもので仕事の進捗管理しています。ワーク・ブレイクダウン・ストラクチャーですね。カタカナで言われた時の違和感が凄い(笑)
さて本が売れたぞ。
お姉ちゃん、外に出てお昼ご飯食べようよ。今日は私が奢るからさ。
へへへ、いつも食べさせてもらってばかりだから、初めてお姉ちゃんにご馳走してあげるのだ。
さっさと屋台にいこう!レストランでもいいかな?
私はウキウキしながらお姉ちゃんの手を取ってギルドの出口を目指した。
1冊目の本が売れなかったのは残念だけど、確かにお土産になるよね。
図書館ダンジョンに行ってきたぞ!って自慢できそう。
挿絵もとても素敵だったしね。
「…待てやコラ」
痛い痛い!なに?肩が痛い!
さっきカウンター前で別れたはずの受付の女の人が、なぜか私の肩をつかんで引き留めてる。
あのカウンターどうやって飛び越えたの?
なんでそんな怖い顔で、私のこと見てるの?
それより何で私の肩をつかんでるの!?
ミシミシ言ってる!痛いから!
「…失礼しました。先ほど申し上げた『恋の宙返り・豚男にキスはナシよ?』は言葉の通り、入門用の本ですので珍しくありません。
これは本当のことです。
ただ今まで持ち帰られた『恋の宙返り・豚男にキスはナシよ?』は文字だけでした。
挿絵が入っていた、という報告はこれまで一度も耳にしたことがありません。
本当に挿絵がありました?
拝見しても?」
「は、はい」
怖くなって本を渡すと受付の女の人はひらり、とカウンターに戻りどこから取り出した白い手袋をつけてページをパラパラとめくり始めた。
「…本当に挿絵が入っている。
しかもズレヒゲ様の絵がふたつも。
お時間取らせませんので、詳しい人間に見せてもよろしいですか?」
「は、はい」
受付の女の人が怖い顔をして私を見るので、頷くしかない。
私の本をもって奥に消えた受付の人の背中を見送ると、周りがザワザワしているのに気づいた。
『ステラシアさんの白手袋が久しぶりに出たわ』
『それよりズレヒゲ様の挿絵とかおっしゃってませんでした?』
『あの方向に消えた、ということはギルマス確認案件ですわね』
『それよりあの攻読者の方、今日が初めてで2冊と仰ってたような…』
『まさかレイティアおねえさまに愛されているのでは?』
無人のカウンター前で待っていると周りのザワザワが大きくなり、視線が刺さってくる。
隣にいるお姉ちゃんを見ると、やっぱり顔がこわばってる。
私はいたたまれなくなって、すっとお姉ちゃんの陰に隠れた。
「ルシャルさま、ギルドマスターがお呼びです。こちらへどうぞ。
お姉さまもご一緒に」
「ひ、ひゃい」
受付の女の人、ステラシアさんがいつの間にか後ろに立っていて、私と姉は図書館ギルドの奥の部屋に連れていかれた。
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