ギシギシの泥沼・柔肌皇子と尻尾くん
盛りそばってどうやって食べてます?
私は最初はそばだけの薬味抜きで食べるのが好きです。刻み海苔とかネギは最後に食べる。だってインパクト強すぎだから。
「え、いきなり2冊もですか?」
図書館ダンジョンから出た私たちは、ギルドに寄って読んだ本の報告をした。
報告しないといけないらしい。
「ルシャルさんが読んだ本は第1階層のもので、『恋の宙返り・豚男にキスはナシよ?』と…えええ?『ギシギシの泥沼・柔肌皇子と尻尾くん』ですか!」
ギルドの受付にいた女の人は、私が持ち帰った2冊の本を見るとサッと顔色を変え、入り口近くの掲示板に貼ってある「依頼票」のところに飛んで行った。
「…やはりありました。『ギシギシの泥沼・柔肌皇子と尻尾くん』は、買取依頼が出てます。
今なら金貨6枚で買い取ることもできますが、どうしますか?」
え?金貨6枚?
私はビックリしてお姉ちゃんの顔を見た。
お姉ちゃんもビックリしている。
何しろお姉ちゃんが私に持たせてくれたシムベナまでの旅費は金貨1枚と銀貨2枚だったから。
『金貨6枚ももらえるなら、お姉ちゃんにお金渡せるかも?』
そう考えた私は、受付の女の人の気が変わらないうちに売ることにした。
「でもどうして本の買取依頼が出てるんですか?
さっさと図書館の中で読んだらいいんじゃないの?図書館だとタダで読めるんだし。
「事情は依頼主によって違いますが、一番大きな理由は『最後まで読みたかったのに、時間切れで泣く泣く図書館を去ることになった』という感じですね。
あなたも分かりかと思いますが、図書館ダンジョンの本は1ページ読むのにかなりの精神力を必要としますから。
あとうっかりお気に入りのページばかりを繰り返し読んでいて、時間が無くなったという方もいます。
読み終えていない本はダンジョンの外に持ち出せないので、お金はあるけどダンジョンに来る時間のない人が買取依頼を出すみたいですね」
となりでお姉ちゃんが『わかるわぁ』と言わんばかりにウンウンと頷いている。
そういえばお姉ちゃんは途中から読んでるくせに、初めて来た私よりも読むのが遅い。
今日も私の奇行が気になってあまり読めず、読み終わった本はないとのこと。
人のせいにしないで欲しいなあ。
そもそも本なんて、クッションに座る間に読めちゃいませんか・・・?
まだ納得できないものの、私は受付で金貨を6枚受け取った。
すぐに4枚をお姉ちゃんに渡した。
そうだ。もう1冊あった。
面白い物語だったけど、もう頭の中に入ってるから売ってもいいや。
「あのう、この本は売れませんか?」
「『恋の宙返り・豚男にキスはナシよ?』ですね。
残念ながらこの本は、第1階層に挑んだ多くの攻読者が読破に成功しており、あまり珍しくないため買取依頼もないのですよ。
図書館型ダンジョンに初めて来たお土産としてお持ちになったらいかがですか?」
そうかー残念。売れなかったよ。
でもまあ1冊売れてお姉ちゃんにお金を返せたからよかったかもね?
お姉ちゃんは「こんなに要らないわよ!」と驚いていたけど、私のために出してくれた旅費とかたまに村まで送ってくれる領都のお土産とかでお金使わせているの知ってるからさ。
感謝してるよお姉ちゃん!
「今日は蕎麦食べた!」という人は☆☆☆☆☆をお願いします!
そのほかの人もぜひ評価をお願いします~。