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日常生活に支障をきたし本人の意思で読書中断が困難

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カミョンは驚いていた。


『話には聞いておりましたが、これほどとは・・・』


結局、「やっぱり図書館ダンジョンがいい」と昼食後に戻ってきたルシャル(姉は他に行きたかったが根負けした)に同行して、カミョンも入場したのだ。


するとルシャルは解き放たれた矢のような勢いで第1階層をパスし、第2階層に挑んだ。


『この短い時間に、すでに2冊目。しかも攻読中にも関わらず、表情にまったく変化がない』


カミョンは周りを見回してみた。


図書館ダンジョンの第2階層にはそれなりの数の攻読者がいる。


だがその多くは、ページをめくるたびに「ふぉおお」とうなったり、開いた本を胸に抱いたままブルブルと震えたり、スライムクッションの上で奇声をあげながら身体をくねらしたりしている。


あの様子では1日に数ページしか読み進めることができない、と言われても納得するしかない。


だからこそギルドに本の買取依頼がくる。


それに第2階層の本は、第1階層よりやや過激になっていると言われている。


だがルシャルは顔色一つ変えず、機械的にシャッシャッをページをめくっていくのだ。


最後まで読み終わったのか、パタンと本を閉じるとルシャルは目を閉じてスライムクッションの上で背伸びをした。


「あー面白かった。あれお姉ちゃんは?」


「お姉さんは先に帰られました。


ルシャルさんは自由に本を読んでいいそうですよ」


その言葉は本当だった。


カミョンが図書館ダンジョン・ギルドで責任もってルシャルを預かる、と説得してルシャルの姉には先に帰ってもらったのだ。


「そうなんだ。カミョンさんは本を読まなくていいの?」


「はい、私は従者枠でお付き合いしておりますので」


図書館ダンジョンには奇妙なルールがある。


各階層において、ダンジョンマスターであるレイティアが薦めた最低2冊の本を読破しないと先に進めないのだ。


ただし攻読者には1名、従者が付くことが許されている。


貴族令嬢が攻読者になることもあり、身の回りの世話をする人間が必要になるからだ。


従者は攻読者に付き添うことで読破していない階層にも進むことができるが、そこでは本を読むことができない。


従者は本を書棚から取ることはできず、また手に取った本を自ら開くこともできない。


「私だけ読書を楽しんじゃってごめんなさい~」


「いえいえ。ルシャルさんにたくさん本を読んでいただくことがギルドの望みでもありますので。


どうしますか?まだ時間はありますのでこの階の本をお読みになりますか?」


「そうだなー面白かったけど、ちょっと物足りないから次の階層に進んでみます」


物足りない?


ルシャルが第2階層で読んだのは『なんで僕がお嬢様のメイドに?』と『兄の婚約者。秘密のバイトがバレました』の2冊だ。


カミョンの記憶によるとドキドキ度がいずれも2、ガッツリ度が2と3の中堅レベルだ。


なおドキドキ度とガッツリ度についてはギルド独自の分類ではなく、ダンジョンマスターにして著作者でもあるレイティアによるものでいずれの本にも奥付に書かれている。


「ドキドキ度」については「好意を寄せる殿方と初めて手をつないだ時がドキドキ度1」と定義されており、ドキドキ度2以上の本については、ギルドでは「まれに失神を伴う興奮あり。ベッドでの読書を推奨」としている。


また「ガッツリ度」は「食事を1回忘れるほどがガッツリ度1」と定義されており、ガッツリ度3以上の本について、ギルドでは「日常生活に支障をきたし、本人の意思で読書中断が困難」としている。


もっともガッツリ度が3以上の本でもドキドキ度が高ければ、興奮のあまり失神して強制中断となることもあるため、誰でも一気に読破できるわけでもない。


なのに。


ルシャルはカミョンの目の前で2冊を平然と読破した。


おそらく1冊につき10分もかかっていないだろう。


このスピードで本当に読破できるのか疑問に思ったが、実際に本の表紙は赤から青、つまりダンジョンマスターであるレイティアも認めた読破状態(持ち帰り可)になっている。


「次は第3階層に行ってみたいかなあ。・・・おおう?」


スライムクッションから立ち上がろうとしたルシャルの前に淡い光の柱が立ち上がり、すぐに消えた。


そこには小箱が残っていた。


それはシムベナ図書館ダンジョンではじめて確認された、宝箱の出現だった。

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