タダで面白い本が読める素敵な場所らしい
新しい連載小説を書き始めました。たぶん20話いかずに完結する予定です。
図書館ダンジョンって、設定だけで書き始めました。もしあったら行ってみたいですよね!?
私がレカオシーナ伯爵領都・シムベナに遊びに来たのは、15歳になったばかりの春だった。
シムベナの商家に嫁いだ4歳年上の姉が招いてくれて、路銀も送ってくれたのだ。
『ルシャルも何年かしたらお嫁にいくのだから、今のうちにシムベナに遊びにいらっしゃい』
その手紙を読んで、私は喜び勇んで丸一日も馬車に揺られた。
かなりお尻が痛くなったのは、乙女の秘密だ。
シムベナは私の想像以上に大きな街で、到着するなり「ふぉぉぉお」と変な声が出てしまった。
これも乙女の秘密だ。
まあこんな私の秘密なんて誰も気に留めないだろう。言ってみたかっただけだ。
そしてシムベナ到着2日目にして、私の運命は大きく変わることになる。
◆
「図書館ダンジョン?なにそれ?」
「いまシムベナの女たちに大人気なのよ。これから連れて行ってあげる」
ダンジョンっていうと、地下に潜って化け物と戦ってお宝を手に入れる冒険の舞台でしょ?
図書館というのは本がたくさん置いてあって、頭のいい人が行く場所だ。
ぜんぜん違うその2つが合体することがピンとこない。
まるで小麦と魚を合体させるようなものだ。
ああでもそれは油で揚げるとフライになるか。美味しいよね。
そうそう、図書館ダンジョン。
姉によると、なんでもタダで面白い本が読める、素敵な場所らしい。
姉も何度か行ったことがあるらしい。
うーん、我が姉は優しい人だけど戦闘力はないはず。
その姉が楽しめる、と言っているので信頼して後を付いていくことにした。
小一時間歩いて、ようやくその図書館ダンジョンとやらににやってきた。
ビックリした。
すごく大きな屋敷だ。うちの村長の屋敷を横に6倍、縦に3倍にしたような立派な屋敷だ。
こんな大きな建物を見ることができただけで、私はシムベナに来てよかった!と思った。
遠くから見ただけでもビックリしたのに、なんと姉は中に入るという。
怒られたりしないかな?と不安になったが、姉のことを信頼して門をくぐることにした。
だってこれより小さな村長の屋敷ですら入ったことないんだもん。怖いから。
門をくぐると、そこは活気のある役場みたいになっていた。
「すいません、妹の新規登録をお願いします」
「ではこちらへどうぞ」
姉に促されて、私はカウンターの上で紙に名前や出身村などを書いた。
「お姉ちゃん、これなんなの?」
「これは冒険者の登録みたいなものよ。図書館ダンジョンに入るのに必要なの」
「お金かかるんじゃない?」
「だいじょうぶ。お金はいらないから安心して」
本当にお金いらないのかな?と思って心配になった私は、周りを見回して奇妙なことに気づいた。
「お姉ちゃん、どうしてここには女の人しかいないの?」
ひっきりなしに人が出入りする、その建物の中はなぜか女の人しかいないのだ。
ダンジョンに来たはずなのに格好もみな冒険者らしくなく、普段着だ。鎧を着たり防具を身に着けている人は一人もいない。
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