表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Draft Off  作者: わかこ
3/12

トライアスロン

彼女は見事なまでに無傷だった。


脳波は正常であるとの事だ。


・・・ふと思い立ち、看護婦長に事故当時着ていたスーツを

見せてもらえないかと訪ねてみた。


警察が回収していったとの事だった。


それはそうだろう。


破れた部分はあったかと訪ねたが、婦長は立ち会っていないので、

わからないという事だった。


探偵でもあるまいし、これ以上立ち入って聞けない気がする。


彼女は黒髪だったであろうが、プールやけで少し茶色みがかっている

相当泳がないとここまで色抜けしない。

その証拠に生え際の根本はは真っ黒だ。


水色の入院着から四肢の手足のみが伺える。

トライアスロン選手なのであろうか、極端に絞られている。


女性なのに、体脂肪が13%くらいしか、なさそうだ。

点滴のある手の甲に見える血管や足の甲がそれを物語っている。


マニキュアもペディキュアもなく、綺麗に整えてある

いい爪切りを使っているな・・・

AAではなく、Aだな・・・


「何と失礼な!」と自分に注意する。


こうなると、ロングどころかアイアンマン選手なのかもしれない。

静かに眠る彼女の顔立ちは、至って端整な日本人といった感じだ。

一重まぶたに、短いまつげ。

通った鼻立ちに、薄いが大きめの唇。

シワが多い唇は、よく食べ・よく喋る人なのかもしれない。


身長は150cm程度か、フレームサイズを思い出しながら、

自分勝手に納得する。


挨拶したときの笑顔からは想像できなかったが、

この顔が笑顔になると、あんなにも可愛く見えるものかと、

思い出しながら、ぼんやり眺めていた。


今の彼女は持ち物一つなく、着るものもなく、この躰一つがここにある

心電図の音だけが部屋に響く。


・・・


ふと、彼女の右手を見ていると、中指が「ピクッ」と動いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ