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Draft Off  作者: わかこ
2/12

意識がない

数日経っても連絡がないので、

彼女の自転車をひょいと持ち上げ、クローゼットの奥にしまう。

仕事柄、自宅の出入りが多いので、動線のじゃまになるからだ。


意識は戻ったのだろうか、だとしたら連絡があるはず。

仕事が一段落したら、病院に行ってみよう。


そう考えながら、キーボードの前に座った。


・・・


何か気になる・・・


そう、彼女の自転車にはなにか文字が書いてあった。

「書いてあるなぁ」と思っただけで、よく見ていなかった。

ふとキータッチを止め、クローゼットに向かう。

トップチューブの右側にだけ、ピンクの文字で


”draft off”


ん・・・「ドラフティング」?


ギャラモンフォントで小さく印してある。

モリサワではない、Adobe Garamond Pro のフォントだ。

その彼女の真っ白な Domane SLR は、ロライブトレインが Dura-Ace Di2

当然、僕の嫌いなディスクブレーキ仕様になっていた。


よく見ると、左フォークと、左のペダルに擦り傷がある。

それはそうだ、3メートルは離れた場所に、これはあった。

今回の事故のものだろう。


推測すると、自ら左に転倒したと思われる。

本人は軽傷で目立った傷があったかまでは、確認していない。


気になって、仕方がなく外出着に着替え、

ハンチングを横目に髪をなでつけ、外に出た


僕はロード以外の移動手段を持たない。

病院まで5kmほどあったが、めずらしく歩いていった。


タクシーに乗る距離でもないし、あの事故を見たので、

いまは余計に使いたくない。


あぁ、自転車って便利だけどロードバイクってやつだけは、

駐めておくものじゃないから、こういう時に困る。


受付での説明が面倒だった。

なにせ名前も知らないのだ。


交通事故で救急搬送されたことと、女性であり、

淡いピンクのトライアスロンスーツを着ていたことだけが情報だ。


看護婦長が横で聞いていて、それを察して案内してくれることになった。


意識はまだないそうだ、あれからもう5日が経っている。


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