おねえちゃん
刑事課に戻って鈴木さんを呼び出した。
鈴木さんは思い出したかのようにビニールに入った
トライアスロンスーツを持ってきていた。
刑事課だから白い手袋かと思いきや、
「まだ、空けていないんだよね」と、素手でそのまま取り出した、
おおぅ、事件扱いではないと確信しているのかね・・・
「これポッケが裏地にあるかも知れませんよ」
「うーん、ないなぁ」
「あ、腰の横に大きなボタンホールみたいなのがあるでしょ」
「おー、ちっさなポッケやなぁ・・・、カード出てきた」
ガチョーン、記憶喪失ミステリーにまではならんかったか、
「J-WESTのJCBカード、珍しいねぇ・・・
YUKO TAKAKI 、あぁじゃあ、たかきゆうこ さん な訳だ」
なんともぼんやりとした反応をする警察官なんだろう。
携帯電話番号の件については、話をすると、
すぐに鈴木さんが電話してくれるらしい。
「一緒にデスクまできて貰っていい?」
「はい」
緊張はしない、什器が長年大切につかわれているのが分かる、
別の意味での雰囲気がある。
直ぐに電話をかけ始める、電話機は新しい、スピーカーボタンがある。
呼び出し音までの感じで、どこの携帯会社が予想がつく。
2回コールで女性がでた、警察からの電話は知らないから、
すぐには取らないのが普通なのだが、
すぐに「おねえちゃん?」と声がする