ロードバイク
ふと挨拶を交わしたロード女子が交通事故にあう。
なぜだか、僕が付き添う羽目に。
ん、記憶喪失!
どうなってしまうのでしょう?
いつものサイクリングコース、秋も深まり銀杏を避けながら走る。
あれを踏むと大変なんだ、タイヤが臭くなる。
「あっ」
銀杏を避けたいが、バスが後ろから迫ってくる。
仕方がないので右手を大きく出して合図する。
手を出したまま車線中央まで素早く移動する。
中途ハンバに避けては逆に危ない。
轢いてしまうぞと思われるように、「きちん」と前に出る。
銀杏を通り過ぎたら、走行車線左側に寄せ、
「ありがとう」の合図を出す。
肘を曲げると左折の合図になるから、斜め上に上げて手首を振る。
そう、左折時に左手を差し出すのはロード乗りの後方への合図であり、
車両からは見えづらいから、間違いなのだ。
しばらくすると、知らないロード女子が対向車線に見える。
向こうから会釈をしてきたので、笑顔でこちらも会釈した。
レディースの淡いピンクのトライアスロンスーツだ。
桜吹雪が腕と大腿にあしらってある。
手首と足首は臙脂色のラインになっている。
おしゃれだ。
すばらしいヒップをお持ちであるAAカップか・・・っと、
TRECか・・・
低身長の女子がサイズを選択することになると、
ブランドも限定されてしまう。
僕みたいにチタンバイクをフルオーダーする稀有なやつは少ないのだ。
ボトルゲージは空で、パンク修理セットと思われるサドルバックのみの装備だ。
何も背負っていないので、トライアスロンスーツだから、
持ち物はなにもない。
20代前半に見えた彼女は、僕より先にこちらに気づき、挨拶してきた。
トライアスロンなのだから、それはそうだろう。
間違いなく10km近辺の子とうことになる。
だとすると、移動かウォーミングアップだろうし・・・
可愛い子だったなぁ・・・
「キキーーーッ」
「ガシャァァァーーーーン」
対抗4車線の幹線道路に大きな音が響いた。
慌てて減速して歩道に乗り上げ、止まって後ろを振り向く、
彼女だ。
電柱にぶつかったタクシーの横に倒れた彼女がいた。
・・・
救急車に同乗し、私もロードに乗っていたからか、
何も聞かれないので、流れで同乗してしまった。
まぁ顔見知りということにしよう。
幸い軽傷のようだが、意識が戻らない。
顔見知りだが、名前も知らないと伝えると、
僕の住所と連絡先を伝え、ひとまず病院をあとにした。
現場に戻り、残っていた警察官に目撃状況を伝え、
初めて合った人であることと、彼女の状態と、
挨拶程度はしたことを伝え、彼女の自転車を預かることにした。
・・・
結構、自転車は数メートル飛んでいたが、
無傷な状態だった。
タクシーは乗客はなく、運転手は即死だったという。
詳しく聞く理由もないので、2台の自転車を両手に担いで、
自宅まで3km程歩いて帰った。
女子用のフレームというだけ合って、6.8kgより軽い。
あ・・・、別にUCI規定は関係ないか。
リビングにそのまま持ち込んで座り込んだ。
30kmほど走った帰りだったので、シャワーが浴びたい。
ジャージを脱ぎ、レーパンをおろしならが、
ふと彼女の自転車に目を向けた。
そこには・・・