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第4話

 オレは慌てて周りを見渡してみる。


 結構な数の負傷者が居る。

 地面に蹲って呻いている者も居る。

 こりゃ、ほっとけないんじゃ……


 オレ自身、ほぼ強制的に連れて来られているんだ。

 これを作った存在が、一般的な感性を持ち合わせているはずがない。

 それに、たとえただのデータであったとしても、見て見ぬふりは後味が悪い。


 おりゃあ、ただのゲームであったとしても、無害な草食動物を狩るのは躊躇う方なんだよ。


 すぐさま、先ほどのようなボールが落ちてないか地面を見渡す。

 何個か落ちてるのが確認できたので、急いで集めて回る。

 その内、先ほどの兵士も戻ってきたので、一緒に探すようにジェスチャーで伝える。


 ただ、兵士にボールを開けさせようとしたのだが、いくらボタンを押しても開かない。


 このボール、他の奴は開けられないのか?

 また、兵士達が戦っていた場所には一個も落ちていなくて、全てオレが戦って来た道筋にだけ落ちていた。

 なるほど、オレが倒した敵だけがアイテムを落とし、その操作もオレしかできない訳か。


 まあシステム上、NPCが倒した敵からアイテムが出るゲームは滅多にないかな。


「おっ、なんか赤いのが落ちてるぞ」


 レアアイテムかな?

 ドロップボックスの色によって、レアリティや種類が違うのはよくある事だ。

 今より性能の良い、武器とが防具かもしれない。


「おっしゃ! レアアイテムゲットだゼ!」


 と、喜び勇んでボールを開いたのだが――――真っ赤な液体を湛えたペットボトルであった。

 またしても飲み物?

 効果が違うのだろうか?


 一時的に攻撃力や素早さを上げるアイテムかもしれない。

 少し飲んでみる。


「おおっ! これは旨いぞ!」


 なんか体力が回復した気がした。

 えっ、これも回復薬なの?

 味がいいだけの回復薬? まじでぇ……


 通常ドロップは不味い回復薬で、レアアイテムは旨い回復薬。これぞVRならではの醍醐味。と言えるのだろうか。


 うん、旨いのはイイコトだよ? イイコトなんだけどね?

 あの不味いのは正直、罰ゲームでも飲みたくない。

 出た先から兵士に渡している。


 うん、これは自分用に取っておこう。


「というか、回復薬しかドロップしないの?」


 あとあれだな、片っ端から開きまわっているが、ペットボトルの状態だと持ち歩くのが大変だ。

 インベントリとかあって、どっか亜空間にでも放り込んでおけりゃいんだけど、どうやらそんな機能はないらしい。

 出たアイテムは自分で持ち歩きましょう。みたいな?


 それもまたVRの醍醐味なのかもしれないが。


 あっ、それで最初は小さなボールとして落ちるのかも。

 ボール状態ならそれほど邪魔にはならない。

 良し、とにかく敵を倒して赤いボールを探すんだ。


 赤いボールはやはりレアアイテムらしく、中々落ちない。


 その代わり、白いのは結構ドロップする。

 出る度に兵士達に渡しているんだが、だんだん兵士達の態度が恭しい感じに変わってきた。

 最後の方には跪いて頭を下げて受け取るほど。


 まあ、効果はバツグンだからなぁ……


 奇跡の薬、とでも思われているのかもしれない。不味いけど。

 兵士さん達は頑張って飲んでいる。不味いのに。

 なんとなく、自分だけが旨い回復薬を飲んでいるのが後ろめたくなってきたゾ。


 兵士達の中には、なぜか女性や子供が含まれている。


 なので、そんな子達にはこっそり、美味しい回復薬を飲ましてあげる。

 すると凄く感謝されて、手を取って泣き出す始末。

 これはあかん、長引くときっと碌でもない。


 そう思い立ち、敵のボスらしきモンスターに特攻をかけたのだが、これがまた、滅法強いのなんのって。

 フルプレートの両手にそれぞれ鉈を持っているモンスターで、大きさは3メーターはあろうかというほど。


 フルプレートって時点で、防御力は高く、少々攻撃を与えてもビクともしない。

 そのくせ、両手に持った鉈から繰り出される攻撃は猛攻を極める。

 VRの場合、左右に武器を持っているという事は、手数は倍、単位時間における攻撃回数も当然、倍になっている訳だ。


 回復アイテムをほとんど兵士達に渡しているのでゴリ押しもできない。


 慎重に敵との距離を測りながら、攻撃を加えていく。

 この戦いで、ガードシステムがあるのも分かった。

 武器でガードするような姿勢を取ると、体を半透明な球状の物に覆われる。


 どうやら、全方位の攻撃をガードできる模様。


 さらに、必殺技にカウンターが備わっているようで、敵の攻撃が当たる瞬間に必殺技を放つと、それをガードしながらカウンターで大ダメージの攻撃が入る。

 いやほんと、最初に説明ぐらい入れてくれよ! って話だ。

 なんとかそれを駆使してボスを討ち取る。


「よしっ、金色のボールが落ちたぞ」


 幸先がいいのか、またしてもレアボールをゲット。

 しかもボスクラスからのドロップだ、今度こそイイモノに違いない。

 と思ったのだが。


 開いてみると何やら人形が出て来た。

 陰陽師さんが使うような、紙で作られた人型。


 これはあれかな? 一回死んでもその場で復活できるとかいう。

 結局、回復薬かよ!

 このゲーム、ドロップは回復薬だけ、なんて事はないだろうな?


 いや、その場で復活できるのは嬉しいよ? 嬉しいけどね、なんだかなあ。


 まあ、より強い武器や防具がドロップする場合、それに比例して敵も強くなっていくのだろう。

 レベルだけではなく装備品まで、となると、敵の強さがどんどん上がっていく。

 それでオレは強くなれるのはいいだろうが……最初からここに居る人達は災害レベルが上がっていくだけ。


 ラストダンジョン付近に住む人は能力がずば抜けている。なんていうのは現実にはあり得ない訳で。

 これが現実の人間の住む世界であると仮定すれば、敵の能力が上限なく上がっていくシステムだと、人類が滅んでもおかしくはない。


「装備品はドロップしないのかも知れないな」


 ロールプレイングというよりアクションに重点を置いたゲームだと思えばいいだろう。


 それはそれとして、現地の人達が随分大喜びで、なにやら宴会場のような場所に連れて行かれる。

 そこでは飲めや歌えやの大騒ぎで、大層な美少女からの歓待を受けることになる。

 何度も頭を下げ、隣に座ってお酒らしきものを注いでくれる。


 ちょっと手が触れただけでも真っ赤になる、その美少女。


 ふむ、さりげなく、肩に触れてみる。

 特に抵抗はない、むしろ嬉しそう?

 えっ、セクハラすんなって?


 いやこれはゲームですよ! ええ、ゲームなんですから!


 昨夜はお愉しみでしたね、なんてことだって出来るVRなんですから!

 なんだが、俄然やる気が出て来たな。

 えっ、なんのって? そりゃもう……モンスター退治ですよ? ええ、そうですとも。


 でも、ちょっとぐらいサービスシーンがあってもいいと思いませんか? でへ、でへへ……

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