091 シロネ7 危機?
色々ありましたが、ようやっと北大陸に到着しまして、危機です。
ワタシの存在意義の危機です。
セージ様が人形達と呼んでいるそれらは、久遠の騎士と呼ばれる人形型兵器だそうですが…役者時代によく演目で演じていたおとぎ話に出てくる破壊の天使とかいうやつでは…。
いえ、違いますね。
まさかですよね。
うんうん。ハー様のお宅訪問時でもなんとかの守護騎士とか言われていたし。
セージ様の鑑定でも久遠の騎士とか出ているようだし。
ワタシの知っているおとぎ話…まさかこの久遠の騎士がモデルとなって出来たお話ではないですよね。ね。ね?
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で、その久遠の騎士さん達、めちゃくちゃ有能なんですよねー。
そしてめちゃくちゃセージ様に忠実です。忠誠心の塊です。
多少と言わず、かなりセージ様との距離感は近いですが、人形だとわかっているせいか、セージ様もそこまで圧迫感を感じてなさそうですし。
あれ…。これ、アレですよね。
ワタシ、いらなくないですか?
いやいやいや、そんな。
待って下さい。
捨てないでください。
すてないでくださいいいいい!
頑張ります!
ワタシ、がんばりますからぁぁぁぁ!
と、内心捨てられた子狐状態でしたが、セージ様はいつも通りワタシに接してくれます。
流石セージ様です。
というのもありますが、久遠の騎士さん達、セージ様に対しては超有能ですが、それ以外にはかなりポンコツでした。
よかった…!
まだワタシの仕事、ありました!
ワタシの仕事はセージ様の対人に対しての窓口です。
なるべく穏便に済むようにやり取りをするエージェント的なアレです。
久遠の騎士さん達はセージ様の意図や無意識を完全に把握しているっぽいので、セージ様がどうでもいいと感じている他人に対してはとても高圧的です。
それはもう、とんでもなく高圧的です。
そんな久遠の騎士さんとセージ様がどうでもいいと感じている他人に対しての窓口業務も加わり、最近はなんだか忙しいです。
お貴族様とお話しする機会もべらぼうに増えました。
これはちょっと本格的にお貴族様対策をしなくてはなりません。
立ち居振る舞いや受け答えの仕方、暗黙の了解的なお貴族様なら知ってて当然の知識や常識などなど。
うん。忙しいです。
物凄く忙しいです。
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北大陸では本物のお貴族様からきちんとしたマナーを学ぶ機会があり、忙しくも有意義に過ごすことが出来ました。
異空間内で数年しっかりお貴族様からマナーを学んだ久遠の騎士さんからも学ぶことも出来ています。
ワタシも異空間でしっかり勉強したかったですが、セージ様に多方面で頼られるのも良かったです。
なんか、毎日が充実してるって言うか、自分、セージ様に重宝がられてるって言うか。
とか調子に乗った考えをしていた過去の自分の左頬を、右ストレートで力の限りぶん殴りたいです。
ハルト様から派遣されたロボ型久遠の騎士さんのヒューイが有能すぎる件。
セージ様とは適切な距離を保ちつつ、場の空気となることも出来ればその場の空気を察しておどけてみせたり、交渉役に徹する事も出来れば人間のように振舞い、嫌な人間を演じたりしてセージ様のお役に立ちまくってます。
今では立派な執事です。ロボ型執事です。あのロボ感さえなければ、セージ様のお隣に控えていても違和感ないです。
セージ様はそのロボ感を気に入ってるっぽいんですけど、セージ様の妖精のような雰囲気とはあまり合いませんね。
かといってマモル様より派遣されているピクシー=ジョーのようなニヒルな大人の男感あふるる小さな妖精がそばに控えているセージ様というのも合わないのですが。
そうなってくると見た目の華やかなシェヘルレーゼのしっくり感たるや。
セージ様の隣に侍っている姿は、“ですよね感”があります。
アーシュレシカの美少女なメイドさんってのもわかる感じもします。男型ですけど。
そう言えばセージ様、謎なくらい子供によってたかられますからね。
セージ様には子供心を刺激する何かがあるのでしょう。
本人至って愛想のかけらもないのですが、何故そのようなセージ様を子供たちは好くのでしょうか。不思議です。
ワタシならセージ様が神に見えるのも不思議ではないのですけどね。
…話がそれました。
そうです。ワタシのアイデンティティーが薄れゆく今日この頃です。
一応おそばにいる事は出来ているのですが、最近ワタシは何のお役にも立ててないです。
セージ様のお茶もお食事も着替えに至るまで全て誰かしらの久遠の騎士がしてしまいますし、なんならワタシもセージ様と一緒にお世話されている気がしなくもないです。
ハルト様とマモル様と別行動をとるようになったセージ様は、以前よりも口数が少なくなりました。
しゃべらなくてもセージ様の言わんとすることをよく察してしまう久遠の騎士がいますからね。
それもありますが、セージ様はどこか遠くをぼんやり眺めている機会が多いと言いますが。
ずっとスマホやタブレットを使用し、ゲームで目を酷使するより余程イイとは思うのですが、ワタシは不安です。
セージ様がどこか遠くに行ってしまうような…。
「でしたらどこまでもついて行けばいいのです。それが側近と言うものでしょう?」
嫣然とこちらを見やるシェヘルレーゼがいます。
「な、なんすか急に?!」
「随分と大きな独り言でしたので、いっそ周囲に聞かせているのかと、つい反応を返してしまいました」
穴があったら入りたい。
独り言、恥ずかしいです。
死にたい。
あ、死んでる場合ではないですね。
セージ様に生かされたこの命、無駄に散らしてはセージ様に顔向けできません。
「ご丁寧にどうもッス。はずかしいッス」
「いえいえ。あなたのセージ様への忠誠心、悪くありませんよ。そのまま励むといいのです」
上から発言に聞こえますが、これでいて彼女はワタシに好意的です。
どうでもいい他人ならこのおかたは声すら掛けませんからね。
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セージ様はおばあさまとお父様とのあまり感動しない再会をしました。
セージ様、異世界の人じゃなかったでしたっけ?
それにしてもセージ様とセージ様のおばあさま、そっくりです。
セージ様のおばあさまがもう少し若かったら、セージ様がもう少し大人になられたら、全く見分けがつかないでしょう。
双子と言われても分からないかもしれません。
とても不思議ですが、そういうモノと受け入れることにしました。
こういうのはあまり考えても良いことはなさそうです。
そしてセージ様のおばあさまの住んでいる国へ行くことに。
その経路で船旅の運びとなりまして。
セージ様のおばあさま方に関してはセージ様のお願いもあってシェヘルレーゼが担当する事になりました。その補佐にアーシュレシカです。
ここに来てセージ様、自らの久遠の騎士を血縁者に付けることにしたようです。
幸いにしてセージ様の僕たるワタシも、ここに来てようやっとセージ様のおそばでお仕事ができています。護衛を張り切るティムトとシィナも久遠の騎士さん達に負けず劣らずなレベルもあるし、セージ様の結界もあるので、問題なく過ごせます。
そうです、船旅の途中で遭難。そのついでにダンジョンをさっくり攻略出来るくらいには余裕なのです。
考えてみると、船にはあまり良いことがありませんね。
少し前も船から投げ出されましたし、今回も難破に遭い、貴族や腐れ商人の嫌な部分を見る羽目になりましたし、権力を盾に、か弱き集団の心理を働かせた人間のキタナイ部分に触れました。
船とワタシ…いえ、船とワタシたちはあまり相性が良くないのかもしれません。
セージ様とワタシとティムトとシィナ。船は鬼門かもしれません。
小島サイズに例えられるようなすんごい船に乗ることになったとしても、その中で贅を尽くしたすごくいい思いをさせてもらったにせよ、きっとこの巨大な船をめぐって後にとんでもない騒動になりそうだとしても、その予感をそっと心の奥にしまって今を楽しもうと思ったとしても、ワタシは悪くないですよね。
船に乗っている間は、どうしようもないんですから。
至れり尽くせりの贅を尽くされた巨船、サイコーです。
ブックマーク登録が300件こえててあわてて更新。
こんなに読んでくれてる人がいるとは思わず、しばらく更新してませんでした。
感謝と喜びをあとがきに書きたくて久々の更新でした。
読んでくれてありがとうございます!とても嬉しいです!




