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082 誰が乗る

 


 その日一日は我慢して馬車に乗り続けた。

 スキルでちょっと浮いておけば問題ないし。

 ゆるゆるとあまり代わり映えしない景色を眺めながら進むのは大変退屈だった。


 普段だったらゆるゆるとかまったりなどは大歓迎なのだが、今回の移動に限っては早くしたい。

 狭い空間で人と密集し、さらに周囲を行くのは何組もの貴族達。


 問題が起きないわけがない。

 そして起こった問題が大事にならないわけがない。


 隊商の時は穏やかで、のんびりしてて良かった。

 うるさく言う人もいなかったし、気楽だったから。


 でも今回は慣れない敬語のような丁寧語のような訳のわからない言葉遣いをしなきゃならない人が多いし、気楽に話せる仲間もいない。

 そして何かあった時、シェヘルレーゼの暴走を止められる気がしない。

 俺の為にやってくれているのはわかるし、それがきっと手っ取り早くて効果的なのはわかるけど、とにかく俺ファーストがすぎるんだよな。

 俺さえよければ周囲などどうでもいいと考えている節がある。

 行きすぎた信者みたいになっている。

 言えば大人しくはなるが、俺が人から絡まれたりすると、もう抑えが利かないで暴走。

 ギリギリで人に大けがさせたり、殺したりしてないだけまだ理性があるんだろうけど。


 そんな久遠の騎士の心配もありつつ、やっぱり気楽じゃない移動は長く続いてほしくないので、早くコンパクトに行く手段があるのならそちらの方がいい。


 現に騎馬で移動している人達からどんどん抜かされているし。




 そうしてあまり進むことも出来ないまま、夕方となり、それぞれが道の端に馬車を止めて野営する事になった。


 大きな天幕を張る貴族も多いし、ばーちゃんも同じように大きな天幕を作ってそこで野営するようだ。

 なので俺もいつもの大きくて真っ白なコットンテントを出した。


 中の家具類もそのままなので、【アイテムボックス】から出したらそのまますぐ使える。


「せーちゃんは大容量の【アイテムボックス】持ちだとは気付いていたけど…というか隠すつもりもなさそうだったけど、まさかここまで大きなものが入っていたなんて。じゃぁ、馬車がどうにかなるって言っていたのはこのこと?」


「そうだよ」


「あら?これって…お手洗いにシャワーまであるの?!せーちゃん、すごいわ!それに…電化製品もあるの??え?どーゆーこと??」


「それは魔道具だよ」


「そ、そうなの?せーちゃんがつくったの?すごいわねぇ!もともと多才な子だとは思っていたけど、まさかここまで本格的だなっておばぁちゃん知らなかったわ。やっぱり孫とは長く一緒にいるものねぇ」


 ばーちゃんは全部魔道具という言葉に変換するとうまく自己完結してくれる。


 俺はばーちゃんの言葉にとくに答えることなく、テントに入った。


 当然のように一緒にばーちゃんも入る。


 今も頑張ってばーちゃんの為に野営用の天幕作りをしている従者の人がいるのに、配慮なんてものは一切しないばーちゃん。


 あとで天幕作りしている誰かに作った天幕をそのまま入れられる魔法鞄をあげようと思う。


「わぁ、すごい!日本の電化製品や家具そのままなのね!せーちゃん頑張ったのねぇ!あぁ、この弾力のある長椅子!小さいけどベッドもあるのね!あら、これは暖房器具?おばぁちゃんこれ知ってるわ。薪ストーブというものなのよね?」


 ばーちゃんはキャッキャしながらテント内を見てまわる。

 それに追随するばーちゃんの侍女さんと護衛の女騎士さんが驚きながら見まわしている。


「光の魔道具もこんなにたくさん。せーちゃん知ってる?普通の貴族でもこんなに光の魔道具を一部屋にたくさんつける人はいないのよ?しかも野営の天幕にこんなに贅沢にたくさん使ってるなんて、いないのよ?おばぁちゃんでも3つがせいぜいだもの。普通の人なら1つか、無しよ?」


 何気にちょっと3つもってるとか自慢するばーちゃん。


 それにしても光の魔道具か。

 売ったら儲かるかな?


 ネイルサロンは世間的には大成功だけど、俺的には失敗だった。

 あんなに繁盛するとは思ってなくて、せいぜい1日20人くらい来てくれれば良いなと思っていたのに、平時でも毎日100人以上の客が来ているっぽい。

 施術を受けるだけでもその人数で、それに付随してついてくる人はもっといる。


 それにあの店は手に職系なので、どうしても客数に応じて人を雇わなきゃならなかったけど、魔道具を売るだけなら売り子を1人か2人やとったり、働き口云々が無いのなら久遠の騎士に任せてしまえばいいし。


 うん。

 次また店を作る機会があったら今度は雑貨店にしよう。



 俺のテントを見てまわったばーちゃんは、料理や食事はこっちのテントですることにして、寝るのは自分の従者が作ってくれた天幕で休む。


 食事はばーちゃんの侍女さんが作ろうとしたが、シェヘルレーゼがそれを止め、シェヘルレーゼとアーシュレシカがみんなの分をつくった。


「せーちゃん、旅をするのに生のお肉やお野菜を持ってきちゃったの?悪くなっちゃうからダメよ?2~3日なら魔法で何とかなるかもしれないけど、早く使っちゃいましょうね。パンもとっても柔らかくて出来たてみたいだけど、固パンじゃないと長持ちしないわよ?これからひと月以上の旅になるし、こまめに食材を買えないわ。…でも大丈夫よ!おばぁちゃんがせーちゃん達の分まできちんと用意しましたからね!今回はしばらくはせーちゃんが買っちゃった日持ちしない分を使いきりましょ」


【アイテムボックス】持ちの俺に何故そのような事を言うのだろう?


 俺が不思議がっていると、ハッとした感じでアーシュレシカが何かに気づき、それからそっと俺に言った。


「もしかすると、一般的な【アイテムボックス】でも物が劣化していくのかもしれません。セージ様方の【アイテムボックス】は普通の【アイテムボックス】ではない可能性がありますね」


 ということらしい。

 アーシュレシカも詳しい事はわからないようだ。


 だよね、【アイテムボックス】に個人差があるなんてわかるわけないし。


 食事が終わった後、ばーちゃんには俺の【アイテムボックス】の仕様をお伝えした。

 同時に、時間停止機能付きの大容量の魔法鞄もあげた。

 これに天幕を解体しなくてもそのまま入れることをおすすめして置いた。


 ばーちゃんはとても驚いていたが、同時に納得。

 日持ちする食料は全部俺のあげた魔法鞄に入れて保管し、これで旅でも生鮮食品を食べることが出来ると喜んでいた。


 それに旅でもトイレと風呂を使えることも大喜び。

 ばーちゃんの従者の人達も喜び、ホッとしていた。


 用を足しに茂みに入る時が一番、盗賊や魔物に襲われる可能性が高まるらしいので。




 翌朝、テントも天幕も馬車も全てさっぱり片付け終わってからのこと。


 俺達は港町まで騎馬で行くことに決め、準備をしていた。


 馬の数に対しに人が多いので、必然的に、二人で1頭の馬竜に乗ることになる。


 ばーちゃんは


「せーちゃんはおばぁちゃんと一緒に乗りましょ」


 と言ったが


「陛下、安全のため、お孫さまとは別でお願いします。陛下はわたくしとです」


 と、護衛の女性騎士に言われ、仕方なくその人とばーちゃんが一緒に。


 シェヘルレーゼとシロネ、俺とテンちゃんとアーシュレシカ、ティムトとシィナが一緒だ。


 シェヘルレーゼとシロネはばーちゃんから一頭の馬竜を借りて乗り、俺とテンちゃんとアーシュレシカは馬型に変形したヒューイに乗り、ティムトとシィナは巨鳥に変身…というより、あの姿のまま大きくなったシエナに乗ることに。


「ねぇ、せーちゃん、コレなぁに?なんでこんな事になってるの?どういうこと?ねぇねぇ、おばぁちゃんも乗せてくれるのよねぇ?」


 同行する周囲がドン引きするなか、ばーちゃんだけは興味津々で自分も乗せろと言ってくる。


 ヒューイはロボ馬化し、馬具に該当する部分もヒューイの体の一部で出来ているので、馬具の体に全く継ぎ目が無いので初心者でも安定して乗れる。

 さらに乗るところもきちんとした背もたれつきの座席になっており、馬体にくぼみがあってそこの中に足を伸ばして座れるようになっている。

 操作方法もコントローラーで操作する事も出来るし、ヒューイに任せて走行してもらうことも出来る。


 そしてその走行も、魔法メカ的走行なので、振動はほとんど感じられない。

 四足それぞれの足首あたりに、「それ何のためにあるの?」と思えるほど小さな鳥の羽根みたいなのがつけてあり、それのおかげでヒューイは地に足を付けることなく浮く。

 そして足を動かせば進むので、踏ん張る必要がない。

 よって振動が起こる事の無い走行をすることが出来る。


 というような説明を、魔法術式がどうのとか、有機生命体がどうたらと説明されたがよく分からなかった。

 要訳は当然のようにアーシュレシカが背後からそっと俺にもわかるように説明してくれたのは言うまでもない。


 大型シエナに乗る方法は、【異世界ショップ】の専門店でオーダーメイドで作ってもらった2人乗り用の背負子を作ってそれに子供達を乗せる。

 大きくなったシエナの背は、子供の二人なら横並びで座れてしまう。

 走りも問題なさそうだし、最悪そのまま飛ぶこともできそうだった。

 子供たちはメカ馬を羨ましそうに眺めていたが、大きくなったシエナにも喜んでいた。

 そしてたぶん飛べる事も伝えたら益々喜んでいた。

 なぜかばーちゃんも。


 結局は周囲の人達に止められてばーちゃんはロボにも鳥にも乗ることが出来ず、普通に馬竜に乗っていた。


 こうして俺達はすいすいと平時と変わらぬ早さで港町まで行くことが出来た。


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