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070 誕生祭3 村

 


 ひとつめの村では主にゴブリン狩りとなった。

 肉になるような魔物は数える程度。


 ゴブリン狩りでは討伐証明と言われるゴブリンの耳を、クマの人達は36匹、アーシュレシカが287匹分持ってきた。

 耳以外は魔石を取り出す程度で他は狩った数が少なければ埋めるか獣の餌に、多ければ燃やすということで、討伐証明の耳を切り取、魔石を取ってからアーシュレシカが全部まとめて跡形もなく燃やして戻ってきた。


「申し訳ございません。セージ様の昼食の時間に少し遅れてしまいました」


 とても悲しそうに言うアーシュレシカ。


 そのすぐ後に獣人パーティーも戻ってきた。


「嬢ちゃん走んの速ぇよ」


「ゴブリン相手でも見事な戦闘」


「魔法も上位魔法だった」


「いくらゴブリン相手と言っても素手の一撃で倒してしまうなんてすごいです」


 1人ポツンと待たされていた俺の事は触れないでくれる優しき獣人パーティー。

 とりあえずアーシュレシカを褒めてくれている。

 いい人達だ。


「へー。それはすごい」


 俺も便乗して褒める。


「恐れ入ります」


 普段無表情に近いアーシュレシカが、褒められてちょっと照れている。

 表情が豊かになってきているようで感慨深いな。


「このあたりの魔物はおおむね狩れたと思う。ゴブリンも集落が出来ていたが、お嬢ちゃんがほとんど一人で殲滅させたし。他も索敵したがあとは小動物くらいだな」


 クマの人が先ほどからアーシュレシカをお嬢ちゃんと言っているが、ここは訂正しなくていいのだろうか?

 アーシュレシカの顔を見てももういつもの無表情になってしまっているのでうかがいしれない。


 なるべく俺の護衛に就きたいから自らの性別を男にしただけで、気持ち的には女になりたかった、だからメイドの格好をしているから…いいのか?


 あ、ダメだこれ。

 深く考えてもしょうがないヤツだ。

 そっとしておこう。




 あとはクマの人がまた村長さんに話をつけ、証拠のゴブリンの耳やいくつか狩ることが出来た食肉に出来そうな魔物を見せ、確認は終わって依頼票に魔力を通してもらった。


 その際、


「あの、先ほどの話は本当、なのでしょうか?」


「?」


「いやな、俺らがこれだけのゴブリンの耳を持ってきて、ゴブリンの集落を潰したと言うと、ここに来た時に提案した怪我人の治療を本当に1人銅貨1枚で、荒らされた畑も【草木魔法】で銅貨50枚で回復させてくれたり、村に銀貨1枚で魔物除けの結界を張ってくれたりしてくれるのかって」


 えー。

 皆がゴブリン狩りに行って俺が呑気にお茶している時に確認してくれればよかったのに。

 そしたら待ち時間で出来たよね。


「本当だけど」


「わざわざ目立つように天幕を出したのですが、今更確認ですか。効率的ではありませんね。何のためにここにセージ様お一人が残ることになったのか」


 やれやれと大げさにため息をついてからキュっと眉をひそめるアーシュレシカ。

 ちょっとシェヘルレーゼに似てきてない?

 いろんな意味で心配になってきたんですけど。


「も、申し訳ございません。その…詐欺などもありますので、警戒してしまいました」


「そうだぜ嬢ちゃん、そんな風に言ってやるなって。こうして再確認するだけでもちょっとは打ちとけたってもんだぜ」


 アーシュレシカをなだめるクマの人。

 流石リーダーっぽいだけあってバランサーしてるぜ。


「怪我や病気の治療、腰痛や歯痛などでも銅貨1枚でやりますよ。畑の修復も1世帯当たり銅貨50枚で。村の魔物除けの結界も銀貨1枚で請け負いますが、俺が死んだりしたら効力は消えます。あと、無いとは思いますが、この村人に俺が攻撃されるようなことがあれば、任意で解きます。それでも良ければ今のうちにご依頼ください。無ければ次の村に移動します」


「明日死ぬかもしれない冒険者だが、セージ様はSランクの冒険者だ。少なくとも銀貨1枚分払う価値がある程度には長く効力が続くと思うぜ」


 クマの人がまたフォローしてくれた。

 いい人だな。


 クマの人の話を聞いて、村長さんは決意したようで、急いで遠くで見守っていた村人たちに報告。


 それからまたこちらに来て、回復や畑の修復、村の結界をお願いすると言った。


 それからはアーシュレシカが俺の補佐に就き、獣人パーティーが列をなす村人の整理をしてくれた。


 孤児院兼治癒院の開業日の事を覚えていてくれたみたいで、テキパキと列を捌いてくれた。


「怪我人、病人もまとめて回復を掛ける。銅貨1枚払った人は天幕の中へ。動かせない人がいるなら悪いがここまで連れてきてくれるか、担架を使って俺達が迎えに行く」


「畑の依頼は番号札を配るのでこちらにー」


 まともな冒険者ともなるとこういう作業はなれているのかな?

 と思えるようなテキパキさだった。


「では村長、皆が集まる間にセージ様が結界を張りますので、村の範囲を教えて下さい」


 こちらはアーシュレシカが村長から銀貨1枚を受け取り、範囲を聞く。


 村と言っても自分たちで食べる分や税としての麦、帝都に売る分の野菜なども育てているので結構広い。


 歩くと時間がかかるので、アーシュレシカが【アイテムボックス】からドローンを出して、上からの映像を村長に確認してもらう。


 それから俺は村長が指定する範囲に、効果を従魔以外の魔物に絞った【堅牢なる聖女の聖域】を掛けた。


「効果は俺が生きている間。従魔の魔物は入ってこられるようにはなっています。盗賊などの対人には効果はほとんどないので気を付けて下さい」


 再度説明すると、それだけでも充分だと喜んでくれた。



 次は怪我人や病人が集まっている天幕へ。

 村人全員が回復を受けるようで、村長も銅貨1枚を払って天幕へ入っていった。


 結構広かった天幕も、村人全員入ったためにギュウギュウだ。

 50人くらい?


「村人84名、全員だ。セージ様、よろしく頼む」


 仕切ってくれていたクマの人が人数を教えてくれた。

 結構いた。

 そしてこの天幕、結構人が入るんだね。


「わかった。では…」


 と、なるべく効果がわかるように、【聖女の輝き】をまたセットにして【聖女の癒し】と【聖女の慈愛】を天幕内に行きわたらせる。


 効果はてきめんで、村人みんな喜んだ。


 歩けるようになった人、歯が生えた老人、生まれつき目が見えなかった少女などなど。


 皆の状態が改善されたようで何よりです。


 後は畑。

 畑は4件だけが依頼という形になった。

 銅貨50枚の壁は高かったようで。


 しかもその4件も一番被害が大きいところで、それでも銅貨50枚は個人ですぐには用意できないので村人皆でお金を出し合ったと言っていた。


 もっと低価格に設定すればよかっただろうか…?


 今更引けない。

 それに普通銅貨50枚で畑は元に戻せないだろうし、税の事を考えれば安いはずだ。

 税が払えなければ奴隷になるっぽいし。



 また村長の案内を元に、修復する畑に向かう。

 結構距離があったので、村長の許可を貰って馬車で移動した。



 向かった畑は村の外に面した畑。

 思った以上の被害状況。

 作物は全滅近い状態だった。


 売ったり税には出来そうもないけど、自分たちで食べられそうな物はかき集めたが、それでも冬を越せるまでは見込めない。

 税などとてもじゃないけど払えない。


 食べられそうな物は回収済みと言うなら後は魔法でどうにでもなるか。


 アーシュレシカが土魔法で土を耕し、土の状況を確認。


 大丈夫そうだ。


 種は村長さんからもらって、後は俺が頑張る。


【無属性魔法】で種を均等に蒔いたらアーシュレシカの水魔法で水を適度にまいてもらう。


 それから【草木魔法】を畑全体に掛けて成長促進。

 他の大丈夫な畑を参考に、同じくらいまで成長させれば完成。


 それをここ以外の3か所巡り、同じように畑を整え、種をまいて成長させる。


 全部終わって戻ったら14時ちょっと前。


「終わった。次行こう」


「え?もう終わったんですか?畑の復旧ですよね?」


「柵なんかは村で何とかしてもらうとして、畑だけなら元通りだ」


「【草木魔法】の成長促進ってかなり時間がかかるって聞いたが…」


「セージ様の【草木魔法】はレベルカンストしています。土の状態さえよければ時間などかかりません」


 アーシュレシカが俺の個人情報を自慢げに暴露。

 俺のスキルをコピーしているアーシュレシカも同じカンスト状態なんだけどね。


 じゃなくてなぜわざわざカンスト情報言った?!


「鬼畜仕様と名高い【草木魔法】カンスト、だと?!」


「セージ様、ドMなの?」


「もしやセージ様は森系の種族とのミックスなのでしょうか?」


 兎の人が酷い事聞いてくるー。

 むしろ何と答えても冷ややかな目で見られる未来しか見えないので、犬の人やツチブタの人の答えもまとめてノーコメントを決め込むことにした。

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