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007 これは無理そうだ

 


 マーニ達との話し合いを経て、行く先は決まった。

 北の大陸だ。

 そこへ行くまでどうするかってのもその後ざっくり話して決まった。


 護衛をするには冒険者として冒険者ギルドに登録しなければならないというので却下。


 乗合馬車というのがあるらしいが、乗り継ぎや待ち時間があるため、結構時間がかかるらしい。


 個人で旅をするのも目立つし危険すぎる。


 魔物が普通にいる世界、冒険者でもない一般人が単独で旅をするというのはまずない。


 なにより長旅では確実に盗賊の餌食になる、という殺伐とした世界にもう既に俺はうんざりしている。


 ハルトもマモルも異世界での旅路に意気込みを感じるが、俺はそこまで積極的になれないでいた。


 魔物や盗賊がいる世界がリアルになってるって、絶望が過ぎる。


 特に俺なんか攻撃手段がない。スキルの結界がどこまで信用できるかもわからないし、その結界に守られていたとして、魔物や盗賊に囲まれたら結界内で籠城する事になる。

 そんなこと考えただけで憂鬱だ。


 その為の攻撃手段がある奴隷だとマモルは言うけどさ。万が一の時は逃げても良いと言った手前、そんな万が一の時頼みづらいよね。


 まぁ、そんなだるんだるんな俺はさておき、移動手段は商人や商団が寄り集まって隊を作り、目的地へ向けて移動する隊商というものに同行したらどうか、というシロネの提案に乗ることにした。


 シュラマルもその案には賛成らしく、情報も入りつつ安全も確保できるからいいのでは、となった。


 隊商は規模によってたくさんの冒険者が護衛で付くし、大人数で移動するはずなので俺達が紛れたところで不自然なことはないだろうとのことだった。


 不自然ってのは俺達の格好だな。

 全員フード付きのローブ被ってマジ怪しい集団だし。


 でもこの町からしたら怪しいわけでもなさそうだ。

 町の中には神官というやつが結構いる。


 この宿に着くまでの雑談で、ハルトが「フード被った怪しいやつマジ多いよな」ってもらしていたら、奴隷の誰だったかが神官だと教えてくれた。


 麻のローブは下級神官、それよりしっかりした厚手の生地で作られた綿のローブが中級神官、同じく厚手の生地で作られたローブでも真っ白で袖に金の刺繍でラインが入っているのが上級神官であるらしい。もっと上の神官もいるようだが、そう言った人達は滅多に町を出歩かないらしい。


 主にまちなかを歩いているのは下級と中級。多いのもその人達だ。


 で、俺が何気なく使ってしまった【クリーン】の魔法。

 これにより粗悪な中古の麻ローブが若干傷んではいるものの、新品に近い小奇麗な麻のローブとなっていた。


 イメージはすご腕職人のいるクリーニング店仕立て。すっかり見違えていたね。


 おかげでマーニ達は下級神官に見えなくもない格好となっていた。


 奴隷商の方でもそれぞれの体にあった丈のローブを着せてくれたのが良かった。自称良心的な奴隷商なだけはあったかな。


 あと彼女等は靴を履いていなかった。

 てか、履ける感じではなかったために靴は貰えなかったんだけど、それは俺の100均の品揃えレベルとなった【異世界ショップ】からビーサンを購入して渡した。

 それを旅芸人一座で衣装や小道具を作る機会が多かったシロネが、俺が他に適当に出した100均あるあるなアイテムでリメイクし、サンダルに仕上げていた。

 すごいよね。


 ちなみに下着も【異世界ショップ】Lv.5の100均の品揃えから100均相当の物をあげた。

 みんなびっくりするほどのボロ布を1枚身につけているのみだったので。


 あとの着替えは俺の【異世界ショップ】レベルが上がったらその都度出す方向で。


 このこともあってとりあえず俺だけは【異世界ショップ】のレベル上げに励むことにしていた。


 ハルトとマモルは他にMPを費やして検証する事があるそうなので、MPに余裕がある俺がやるって事になっている。

 あと暇そうなのも俺だけだし。


 しゃべるわけでも考えるわけでもなく、たまに相槌打ってガヤる程度である。せめてこれくらいはお役に立とうと思う。


 てな訳で足りない服の部分は城から渡された残りの着替えを渡した。


 替えの服は無くなってしまったが、【異世界ショップ】のレベルが上がれば量販店の服も解放されるかもだし、その時買おうってことに。

 買えなくてもこの国以外で買う事にする。


 ハルトとマモルが、頑なにこの国で金を使うのを嫌がっているので。

 頭がいいと色々な方面から考えられるようですね。それに比べて俺のお荷物感ね。これは何が何でも聖女スキルを使って常に守護っておかねばな。


 で、色々話し合っているうちに夕暮れとなり、陽が沈んだ頃合いにアメリ少女が廊下から夕食の時間だと声を掛けてくれた。


 夕食は1階の食堂で。

 食事込みで部屋を取った時に、食券として木札が渡されていた。それを持って食堂に行き食事と引き換えに食券を渡す。


 8人席を6人で使わせてもらい、料理を待っていると、真中にドンと人数分のパンが盛られた器が1つ、それからそれぞれの前に、何種類かの具材が浮かんだ薄っすら白濁した、とろみがついてそうなスープが置かれた。


「お待たせしました!どうぞ召し上がれ」


 俺達のテーブルはアメリが担当してくれた。

 あとは好きな飲み物を1つずつ頼めるらしいので、俺たち学生組は果実水を。奴隷組は異世界っぽいなと感想を抱いてしまう、エールを頼んでいた。これで食券分は終わりで、あとは好きな物を別料金で注文するシステムらしい。


「じゃぁ、食べるかー。どんなのか楽しみだなー」


 ハルトが嬉しそうにしている。

 が、奴隷達の顔は浮かない。

 それに俺とマモルは気付いて黙って様子をうかがう。


 ハルトがスープを木匙で掬って口に含んだ瞬間固まる。


「これ…」


 口に含んだまま、なんとか吐き出さないようにしゃべろうとするハルト。

 器用だな。


「なんだ?どした?」


 あえて訊く俺。


「オレ、無理」


 涙目で何か吐き出すものを探しているがそんな物はない。

 意を決して飲み込むもそこで数秒悶えていた。


「知ってたんなら教えてくれよ!」


 勇者が声を抑えて叫ぶ。

 器用だな。


「すみません、この国ではこれがおいしいとされているので…」


「酒類はマシなんスけど…」


「……」


 好みは人それそれらしい。


 周囲を見てみても、この国の人らしい人は普通に食べている。

 なんなら「これこれ、この味だよ」みたいな顔で食べている。


 それを見てから俺は目の前に置かれた料理に改めて目を向け、添えられた木製のスプーンでスープをかきまぜてみる。


 俺には野菜と肉入りの塩味のとろみスープに見える。何の野菜と肉なのかわからないってのがそこはかとない不安を感じてしまうが。


「匂いは…普通だよねぇ。パンも一応は普通そうにみえるね?」


 賢者による検分。

 真剣だ。


「そうですね。パンは普通よりおいしいと思います」


 ハルトが食べたことで、一応ハルトの奴隷のマーニがパンを口にする。

 マモルと俺の空気を読んで毒見役を買って出てくれたようだ。


 本来であれば奴隷は同じテーブルに着くこともないし、主人と同じ食事を共にすることもないらしい。


 なにより主人格とされる俺とマモルより早く食事に手を付けることなんてもってのほからしいのだが、俺達は普通のパーティーとして行動しようと決めた。


 それでも本人達が「少しでも奴隷としての仕事を全うさせてほしい」とか、なりたくて奴隷になったわけでもないのに奴隷のプロみたいな事を言うので、だったら先輩後輩のようなあまりゆるくもない、しかし奴隷としてはかなりゆるい感じの上下感のゆるい従者ってことに落ち着けた。


「あ、エールもなかなかッスね」


 獣人の嗅覚と味覚的にはパンと飲み物は合格か。

 一応は俺の奴隷であるシロネの方は俺が食事を口にしようとしないので、率先して毒見に回ってくれたようだ。


 マーニとシロネの感想を聞いたハルトが早速パンを口にするも涙目だ。


 そして果実水で飲み込もうとして噴き出しそうになっている。


 しかし彼は勇者の運動神経と勇者の精神をもってしてなんとか耐えた。


「アレだね、アルコールはまずまずってことかな?」


 ハルトを見て、呑気に予想を立てるマモル。


「かといって未成年だし、試すのはなぁ」


 それに俺もまったり返事をする。


 俺もマモルも既に目の前の食事に手をつけようなどとは思っていない。


 俺に至っては人目が無い事を確認し【異世界ショップ】で大容量のフードコンテナを購入。


 アメリの手前、残すのは憚られる。かといって食べられそうにない。

 だったらせっかく【アイテムボックス】あるし、入れちゃえばいいよね、という考えに至った。


「あ、僕のもお願い。シュラマル達はどうする?質素にはなるけど、パンと飲料ぐらいならこっちで出すよ?」


「…では、よろしくお願いする」


 さすがの屈強なる鬼人族であるシュラマルでもダメなのか。

 だとするとこの国の人達の味覚はすごいな。


 シュラマルに同意するようにシロネもマーニも頷いているので、早速追加のフードコンテナとおにぎり・菓子パン・総菜パン各種、ペットボトル飲料各種と、武士の情けを以てしてハルトの為にエチケット袋を購入して出す。


 もう少し【異世界ショップ】のレベルが上がればこれにサラダが付けられたんだけどね。残念ながらまだレベルが上がってないので今回はこれでおしまいだ。


 アメリに持ってきてもらったものは申し訳ないが速やかにフードコンテナに詰めて【アイテムボックス】に大事にしまわせていただいた。


 マモルはその間しっかり【隠蔽魔法】を使ってくれたので、アメリはもちろん、店の人にも周囲の客にも見られる事はなかっただろう。

 ついでにハルトがエチケット袋をしっかりと使用した場面も。


 別に【アイテムボックス】のことが知られてもおかしなことにはならないそうなのだが、やはりニコニコと自信満々でおいしい料理を提供してくれたアメリに対して、食べずに【アイテムボックス】にしまうとか、ましてや残して席を立つというのは出来ないのですよ…。

 きっと俺達のテーブルの後片付けも彼女がするだろうしさ。


 で、店で出された料理やパン、果実水を大切に【アイテムボックス】にしまった後は【異世界ショップ】で買ったおにぎりやパンを食べる。


 奴隷三人におにぎりのフィルムの剥がし方やパンの袋の開け方、ペットボトルの開け方なんかを教えつつ腹を満たし、【隠蔽魔法】を解除してその日の夕食を終えた。




 部屋に戻ってからも寝るまで少し時間があるので今用意できるだけで使えそうな物は共有しておくことに。


 俺のマジックバッグは全てシロネに預けた。

 俺は中に入っている武器防具使えないし、【アイテムボックス】もあるし。

 鞄を持ってないシロネに預けておくのがいいかなと。


 それを見てハルトもマモルも自分たちが契約したマーニとシュラマルに、マジックバッグから自分の必要な武器防具を取り置いてから渡していた。


 ハルトは武器防具類は全部装備出来るので自分で持っておくとして、マモルは自分が使えるもの以外、俺は全部をシロネ達に提供。

 自分たちのスキルに合った物を使って下さいってことで。


「ところで、いまさらですが我々のスキルは開示しなくていいんですか?」


「それもそうッスね。奴隷ですし、主にはスキル開示するッスよね」


「え?あ、うん…」


 マモルがどうでもよさげ且つ気の無い返事をする。

 正直最低限自分の身は自分で守れるようにという意味で戦闘スキルを持っている奴隷を引き換えたけど、俺達が知る必要はないと思っていた。


 本格的な護衛として奴隷を手に入れたわけじゃないしな。

 異世界生活のガイド役として奴隷が必要だっただけだもの。


 守りの方では俺がいればたぶん大丈夫っぽいし、火力は勇者と賢者が揃ってるんだから申し分ない。俺がいなくても賢者マモルが手持ちのスキルの【結界魔法】で防衛も出来るしな。


 そう、薄々も隠しきれてないようだが、このメンバーにおいて俺はマモルの劣化版なのである。


 俺が出来る事はほぼマモルも出来てしまう。


 マモルはもちろんハルトも優しいので指摘はしないでくれているけどね。


 と、心を削る脱線をしたところでスキル開示の話である。


「ま、まさかそこまで興味持ってもらえないとは思ってませんでした」


 ハルトと俺の顔も見てマーニはそうコメントした。


「まぁ、ほら、武器や防具を装備出来ればそれで良いじゃん?」


 一応ハルトのフォローが入る。


「それにこれ、魔法鞄ッスよね?こんなの奴隷に持たせて大丈夫っスか?」


「それは僕たち【アイテムボックス】持ってるからねー」


「それでもこれは結構な容量じゃないですか?」


「オレ達の【アイテムボックス】の方が容量も機能も良いからな」


「この鞄より容量が大きいってなかなかじゃないッスか?!なるほど。だったらこれくらい奴隷に持たせるのもわかる気もしなくもないッス」


「……それでも、こういった貴重な物は奴隷に持たせるべきではないという事は覚えておいてもらいたい」


 シュラマルに諭された。


 かといって俺の【異世界ショップ】ではまだしっかりしたバッグ類は出せそうにない。しばらくはその鞄で我慢してもらうしかないのだ。


 あと少ししたら、もしかしたらしっかりした量販店仕様のバッグ類もだせるのでそのダサいマジックバッグで勘弁してほしい。

 ってことで鞄や装備品についてはこんな感じで落ち着いた。


 他にはハルトがマジックバッグの方にも食料を入れておいた方がいいのでは?と言うので俺が【異世界ショップ】で出しておいた。


 無難に水2リットルを10本と、日持ちも考えてショートブレッドタイプの栄養補助食品10箱をそれぞれのマジックバッグに入れた。

「おやつに食べても良いしな!」とも言っていた。


 マーニ達は恐縮しつつも受け入れていた。


 それをおやつにするのもなんだな、となったので普通に日持ちするお菓子やジュースも入れた。


 もはや高校生組は遠足気分である。


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