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058 ヤケクソ計画

 


 冒険者ギルドを出て、アーシュレシカを迎えに大通りを折れて獣人達が倒れていた横道に行くと、なんだかスッと冷静になれた。


 そんな俺を見つけてクマの獣人が俺の前に掛け寄り、


「先ほどは大変失礼した。この子からあなたが俺達を治してくれた事を聞いた。ありがとう」


 と、改めて感謝された。


「それで……蓄えは少ないが、出来るだけ治療費を払う。いくらだろうか?」


 それからちょっとさびしそうに笑って費用を聞いてきた。


「払えない金額だったら肉体労働で払う。俺達に出来ることならなんだってする」


 そう言われると男子高校生のあまのじゃく思考からいくと……


「だったら、やってほしいことがある」


 そう言って、俺は彼らにヤケクソ計画を話す。





 ヤケクソ計画を獣人達に話し、行動に移してもらうために解散。

 それから俺が訪れたは商業ギルド。


 もちろん何故か当然のように俺の対応はギルマスのキンバリーさん。


「大通りで、回復術師教会と冒険者ギルドに近い、広い土地の購入、ですか」


「はい。建物がついていてもかまいません。壊して新しい建物を建てられるならなんだっていいです」


「ちなみに使用目的をお聞きしても?」


「その前にお聞きしたい事が」


「なんでしょう?」


「この町では獣人や亜人の治療を嫌がる回復術師は一般的なのですか?」


 そう切り出し、さっきの出来事を掻い摘んで話した。


「なるほど。本当に、不運が続いた感じですね」


「どういうことですか?」


「この帝都の回復術師が全員、獣人の治療を拒否するということはありません。本日はたまたまギルド職員の回復術師が不在で、そのかわり声をかけたのがたまたま人族至上主義思想を持つパーティーで、たまたま程度の低い教会の回復術師に当たってしまった、ということだったんだと思います」


 事実を坦々と言い淀むことなく、しかしどこか諦めた風に丁寧に説明してくれるキンバリーさんを見て、なんだかスッと冷静になれた気がした。


 この人もうんざりしてるのかな。

 どこかそう思えるような説明だった。


 その後もキンバリーさんは愚痴るように語った。


 この帝都でも中央大陸の聖王国の教会の治療師が幅を利かせている事、最近人族至上主義の人が増えている事、人族獣人亜人関係なく治療する回復術師がそういった主義者や教会関係者に嫌味を言われたり嫌がらせを受ける被害が増えている事、治療が間に合わなくて亡くなった獣人亜人の子供たちがいる事。


 しかも孤児院でも獣人亜人はなかなか引き取ってもらえないでいる事、国も対策を練るも、各方面から人族至上主義思想の人を中心に邪魔が入る事、この国が巨大になりすぎて細かいところに目が行き届きにくくなっている事、もっと聖水あればもっと人が分散して住め、住み分けが出来るんじゃないかなー、とか色々。


「そうですか。では使用目的は、変な思想の無い人を限定に受け入れる孤児院兼治療院にします」


 キンバリーさんにうまく転がされた感も否めない。

 けど俺は感情のまま動く。


 だって、ヤケクソだし。


「え? どういうことです?」


 そういうことってどういうこと?

 みたいな顔をするキンバリーさん。


 ん?

 俺を誘導するためにそういう話をしたわけではないの?


「セージ様? 話が飛躍しすぎでございますよ?」


 シェヘルレーゼに窘められた。


「……解説員のシロネが居ないのが痛いな」


「そうですわね。困りましたね」


 おっとりと、俺の言葉に合わせるように困った仕草をするシェヘルレーゼ。


 いやいや。

 ここはシロネの代わりにあなたが解説するところですよね!?


「シェリー、ここは我々がシロネの代わりにセージ様の思いを代弁する場面だと思います」


 ……どうやらアーシュレシカもシェヘルレーゼをシェリーと呼んでいるようだ。


 小さくため息をついて、キンバリーに説明をするアーシュレシカ。


 めっちゃ人間ぽい仕草に成長がみられる。

 夫人と過ごした加速世界での2年半は伊達じゃないな。


 てか、しっかりして見えるシェヘルレーゼよりアーシュレシカの方がしっかりしている件に驚くんですけど。


「セージ様は教会が嫌いです。さらに言えば中央大陸のローザング聖王国の中枢が嫌いなのです。あの国やあの国から派生している教会は、平等を謳っていますが実情は人族至上主義国家と何ら変わりません。今回の件に対してセージ様は思うところがあるのでしょう。大変お怒りです。なのでたぶん嫌がらせの意味で先ほどの言葉になったのだと思われます」


 ドストレートですね。

 嫌いじゃないよ、その精神。


「ええっと、なんだかサラッととんでもない事を聞いた気がするのですが……皇帝案件ということでよろしいでしょうか?」


「話が通るのなら国王でも皇帝でも誰でもいいです。今回の件で嫌がらせを敢行出来るようになればいいんです。嫌がらせに対して嫌がらせをしたいんです」


 シィナが人族だから今回は牢に入れられるだけで済んだけど、獣人だったら……と考えると怖いし、怒りが再燃してしまう。


 なんとか落ち着くには嫌がらせをするしかない。


 母さん、低レベル思考の俺をどうか許して下さい。

 いや、むしろ応援してくれるともっとやる気が起きます。





 せっかくなのでキンバリーさんと一緒に城に行くことにした。

 物件探しはキンバリーさんが「どうなるかわからないけどとりあえず土地さがしといて」と部下に指示を出していた。


 で、かなり信用されているのか、現在、この国で一番偉い人の執務室の隣の会議室っぽいところに通された。


 会議室と言う割には豪華絢爛なんだけど、国の威信とかそれ系なんだろうと思い、気にしない事にしている。


 ちなみにきちんと隣の席にはキンバリーさんもいるよ。

 もちろんシェリーさんもアーシュくんもテンちゃんもいますとも。


 とくに待つこともなく、コニーが頭をかきむしりながらやってきた。


「おつかれ」


「お前のせいで益々な!」


 ドカリと向かいの席に着くコニーおじさん。


 この会議室には俺達と、コニーといつもの文官さんしかいない。

 しっかりと人払いをしてくれたようで。


「そんなに忙しい?」


「国のアレこれで忙しくて雁字搦め真っ最中なとこにまたバカげた案件持ってきたって?」


 めっちゃイライラしながら、目の前に出された紅茶を一気飲みして、それが熱くて微妙に涙目になっているコニーおじさん。


「そうなんだ。人少ないの?」


 あえて突っ込まず、会話を続ける俺は成長したと思う。


「人なら居るが、信用できる者がいない、それだけだ」


「久遠の騎士いるだろ?」


 キンバリーさんの前でその名前を出したことに、一瞬睨まれたけど、すぐに諦めて話をすすめる。


 きっと後でキンバリーさんにいい含めるんだろうな。


「情報収集をさせている」


「へー。情報収集って結構人数必要なんだな」


「……なぜこの国の諜報員の数を知っている?」


「知らないけど、少なくとも1000人くらいか?」


「んな数いるわけあるか! どっからその数出したんだよ!」


「久遠の騎士の数だろ?」


「あ゛ぁ?」


 うっわ、おっさんガラ悪っ! 王様ガラ悪っ! ヤな皇帝陛下!


「セージ様、陛下は我々の特性を御存じないのではないでしょうか?」


「特性だと?」


 俺の後ろで大人しくしていたシェヘルレーゼが口を出すも、何を言うわけでもなく普通に受け入れ聞き返すコニー。


「はい。防御型であれば配下を1000体は出せるはずですが」


「なっ!? 何ィィ!?」


 知らなかったらしい。

 びっくりしているコニーと文官さん。


 そうなんですよ。

 全て《任意》や《許可》に設定したシェヘルレーゼ達は【久遠の騎士オリジン=マスタードール】というやつで、ハーちゃんやコニーに渡した防御型に設定した久遠の騎士や、ハルトやマモルみたいに詳細設定をした久遠の騎士は【久遠の騎士カスタム=マスタードール】というくくりになる。


 シェヘルレーゼ達は配下を3000置くことが出来るが、何か一つでも設定した久遠の騎士は配下を1000しか出せない。

 そのかわり、主の好みの性格や魔法やスキルを決まったSPの範囲で設定する事が出来るし、ステータスも決まった合計値内なら自由にカスタム出来る。


 俺みたいに久遠の騎士の設定を放棄すればどんな性格とか姿になるか分からない上に、ステータスが定型のものとなるかわりに配下が3000になる。


 配下1000でもかなり使い勝手がいいと思うので時間があるのなら詳細設定をやりこんでみるのも良いと思う。


 ちなみに詳細設定した久遠の騎士のステータスは


 ―――――

 カスタム=マスタードール    Lv.2000

 HP     4000000

 MP     4000000

 スキル    従順 変形 心縁 統率 配下0/1000 自爆

 SP      2000(スキルポイント。このポイントの範囲内でスキルを増やしたり強化する事が出来る)

 ―――――


 みたいな感じになるらしい。

 と、マモルが言ってた。

 詳細設定楽しすぎるって。


 ちなみに配下もカスタム出来るらしくてやり込み要素マジ神らしい。


 と、そんなことをコニーに教えてあげた。


「は、ははは……」


 コニーが壊れた。


「……ほはー……」


 文官さんも壊れた。


「何も聞こえない何も聞こえない何も聞いてない私生きてる私はまだ生きている」


 キンバリーさんも壊れた。

 何故に。


「だから配下使って身近な存在や大事な従者に護衛付けるとか、事務系の能力伸ばして公務教えて仕事できるようにするとか、諜報活動はもとより、遠くにいるあの人やこの人と連絡とるとかすればいいと思うんだ」


 そしたら文官さんの苦労も多少は和らぐと思うよ?


「ということで、俺、一定の条件を満たした人だけ出入りできて、治療を受けることが出来る治療院を開設するからよろしく」


「っ! まて」


 現実に戻ってきたコニー。

 お帰りなさい。


「一定の条件? 先ほど簡単に聞いた説明によると、獣人亜人の為の孤児院兼治療院という話じゃないのか?」


「いや。条件を満たせば誰でも治療は受けられるようにするし、どんな人種の孤児でも受け入れるようにする」


「なぜこの国の為にそこまでしてくれる気になったんだ?」


「え? この国の為……? いやいや、違う。ただの癇癪。嫌がらせの為に成り行きだ」


 事の次第をシェヘルレーゼとアーシュレシカにお願いする。


 それを聞いたコニーは


「はあ!?」


 と声を上げる。

 お前バカなの? みたいな顔で。


 そうだよね。

 今更冷静になった。

 バカですね、俺。


 でもまた同じことが繰り返されたら嫌な気分になるし、仕方ないよね。


 今度はティムトが牢に入れられるかもだし。


 やられたらやり返すなんて、少なくとも表面上は人の命が尊重される元の世界では「そんなことするだけ損する」とか「相手と同レベルになるから放っておけ」とか「お前が我慢すればそれで終わるんだから」とか言われて大人しくするしかないし、事実、そうしていればそれ以上被害は少なくなる。


 けどここは弱肉強食の世界で、黙っていればただ死ぬだけ、殺されるだけだ。

 周りの親切な人が救急車を呼んでくれるわけでもないし、人種差別は普通にあるし、パワハラやモラハラやセクハラなんかも当然のように横行している。


 だったら、俺がこんな子供じみたバカげたことしたっていいだろ?


「そういうわけだから。じゃぁ……」


「いやいやいや、まてよ。エストラに常識学んだんじゃないのか?」


 そう言われてチラリと自分の久遠の騎士達を見る。


「学びました。が、セージ様の感情を優先させていただきました」


 やったね。

 さすが【忖度】スキル保持の久遠の騎士。


「かはぁ~っ」


 ダメだこりゃ、みたいに頭を抱えて項垂れるコニー。


「詳細は書面に書いて後で二人のどちらかに届けさせるよ」


「……わかった」


「ちなみに治療費は一律銅貨1枚にする予定だ」


 この発言で急に元気を取り戻したコニー、文官さん、キンバリーさんにこの後めちゃめちゃくちゃ怒られた。






 それから2日後。


「あっという間に開業ッスねー……」


 遠い目をするシロネ。


 シロネも冒険者ギルドで色々聞いてきた。


 シィナのギルド証を取り上げない、というか取り上げたくない理由としては俺の事もあるけど、一番の理由は現在、この王都冒険者ギルドにおいての稼ぎ頭はハルトに次いで二番目にティムトとシィナらしく、シィナが抜けるとなるとその影響はかなり大きくなる。


 穀物や野菜が育ちにくい土地であるにもかかわらず、人口が多い帝都。

 その食生活を支えているのは冒険者たちが持ってくる魔物の肉。

 そして穀物や野菜を輸入するための外貨として魔物の魔石。


 その両方を、大量に卸してくれるのが魔法鞄を持っているシィナ達らしい。


 意外な事にティムトもシィナもここ数日で既に帝都にかなり貢献していたようだ。


 そんなこともあって冒険者ギルドとしてはシィナの冒険者ギルド証の取り消しに渋っていたらしいし、ギルマスもシィナの心情は痛いほどわかってはいるものの、一応中立な立場で言えばあの場ではシィナが完全に悪かったと言える。


 ギルド職員も人族至上主義思想を持つ者には困ってはいるが、ギルドの成り立ちから考えれば、規約を守りさえしていれば誰でも受け入れざるを得ない状況なんだとか。


 この話を聞く限りでは一応この町のギルマスも別に腐っているわけではないことがわかって良かった良かった。


「だがしかし、それとこれとは別だ!」


 獣人達がベッドに寝かされないで外で死にそうになっていた事は根に持つさ。


 俺はああいうのすごく嫌だ。

 差別されたり、平等とか言ってて全然平等じゃないのとか、すごく嫌なんだ。


 人種的な差別とか正直よく分からない。

 元の世界でもあったと思うけど、旅行程度ではわからなかった。


 でも「片親だから」という差別や、母さんの「夜の仕事」という偏見や差別はよくされて悔しかった。

 それを母さんにつきつけて、子供の俺達に「セージくんもお母さんがあんな仕事じゃ嫌よねー」とか笑いながら言ってくる大人たちとかマジで心の底から呪った覚えがある。


「え? どっからその発言になったッスか!?」


 おっと、そんな嫌な事考えている場合じゃなかったな。


「あ、いや、こっちのことだ。さぁやるぞ。何人入ってこられるかな?」


 ワクワク、と。



 一昨日、城で話をして商業ギルドに戻って来た頃にはすでに条件に合う土地を見つくろわれていたので、その中でもいちばん広い土地を購入。


 建物もあったがいらないので解体……とも思ったけど、ダメもとで【アイテムボックス】に入れてみたら入ったのでラッキーだった。


 それから【異世界ショップ】のコンシェルジュに相談して建物を買う。


 そうです。

 俺、海底にいる間に【異世界ショップ】のレベルをカンストしました。

 やったね。


 おかげで大物買いしまくれてます。

 特殊な買い物や発注も出来て重宝してます。


【異世界ショップ】最強説が出てきたね。


 そしてレベルカンストの【異世界ショップ】で買ったのが変則的な地上4階、地下2階建ての建物をオーダーメイドで買った。


 コンシェルジュはもちろん、シロネやシェヘルレーゼ、アーシュレシカとも相談して建物の構成や構造、目的に応じた設備も備品も決めて、買って、配置した。


 使う予定はないけど4階を全て俺の私室兼客間。

 3階は職員室兼孤児達の部屋、それから入浴施設。

 2階は目的に合わせた学習室。

 1階の東側を治癒施設、西側を食堂。

 地下1階は訓練設備、地下2階は倉庫にした。

 地下2階から地上4階までの中央大階段の後ろにはエレベーターも4機つけたし、一応建物の東西に非常階段もつけた。


 そしてもちろん庭も綺麗に整えた。

 通り沿いから見える庭はシンプルに芝生だけで、あとは出入りの為の白い煉瓦で道路を作った。

 でもちょっとシンプルすぎたので建物沿いに花壇を作って花を植えた。


 あとは裏庭に畑を作って野菜の苗を植えた。

 今後の孤児院の健やかなる食生活を願って。

 頑張って世話をしておいしく食べてくれれば幸いだ。


 それからシェヘルレーゼとアーシュレシカから10体ずつ配下を出してもらい、職員とした。

 20体にきちんと名前を付け、職員とわかるように制服を着せてオシャレな感じのネームプレートも付けてもらった。


 子供の面倒を見たり、俺がいない間も治療院として機能できるように、聖属性の回復魔法が使えるようにした配下達。


 もちろんカスタムなんて面倒なのでしない。

 海底ダンジョンでたくさん手に入ったスキルブックを使った。


 久遠の騎士にも使えたのでラッキーだった。

 これが使えなかったら時間を掛けてカスタムする羽目になったとこだ。


 もともとカスタム無しの久遠の騎士は、基本属性魔法の水魔法と風魔法の回復魔法は使えるが、治療を目的とするなら回復や補助、邪気払い特化の聖属性魔法が重宝するので。


 そして俺は名前だけでもこの治療院の院長となり、国や商業ギルドへ登録した。


 それが一昨日から昨日一日掛けてやり遂げたこと。



 門には看板も取り付けた。


 ――――――――――

 この敷地に入れる者なら身分関係なく怪我や病気の治療をいたします(※恋患い、恋の病などは病気として認めません)。


 この敷地に入れる孤児も要相談の上受け入れる準備もあります。

 お気軽にご相談ください。

 ――――――――――


 読める人が少ないってのは難点だけど。


 でも大丈夫。

 そのかわり一昨日助けた獣人パーティーの人に頼んだから。


 この施設の噂をスラムで流してほしい事と、この孤児院に入れそうな子を連れてきてほしいと。

 それを治療費代わりにしてもらうことを要求した。


 ちなみに「看板って普通、建物の名前をアピールする物じゃなかったッスか?」とシロネに疑問を持たれたが、看板作った後だったので目をそらしてスルーさせてもらった。


「一般人も受け入れるんスよね?」


「うん。入れるならね」


 入れる条件はこの敷地を全体を覆う【堅牢なる聖女の聖域】に条件を組み込んだ。


 ・これから先ずっと俺や俺の親しい者に害をなさない者

 ・特定の種族至上主義者ではない者

 ・権力を振りかざさない者


 あとはいつも張っている【堅牢なる聖女の聖域】と同じ効果だ。


 条件は随時変更可能なので、緩和するなりさらに条件を増やすなり、実際にここで過ごす人達の意見を聞いて【堅牢なる聖女の聖域】を張り直していこうと思う。





 で、めっちゃ大盛況となった。

 意外に入れる人が多かった。


 なので急遽、地下1階にある体育館に入れるだけ入ってもらい、まとめて【聖女の癒し】と【聖女の慈愛】を【聖女の輝き】込みで掛けた。


 はじめは治療室じゃないところへ移動する事に不安がった人達も、綺麗な体育館に驚き、マジで怪我や病気を銅貨1枚で治してくれる事にめちゃくちゃ驚いて、驚きすぎて心ここにあらず、半信半疑状態でそれでも治っているので何の文句も言わずに案内に従って帰っていった。


 最初こそ混雑したが、大人数を体育館で一回にまとめて魔法を掛けたことで、なんとかなった。


 あとはじわじわとまた増えてくる来院者には聖属性スキルを得たシェヘルレーゼとアーシュレシカの配下達に任せる。


 孤児院の方も結構子供たちが集まった。


 なのであらかじめ決めていた通り、やっぱシェヘルレーゼとアーシュレシカの配下に任せた。


 人数が足りない感じだったので、もう5人ずつ配下を出してもらい、それで少し様子を見て大丈夫そうだったので俺達は帰る事にした。


 すると門の前に、一般人を装った格好の偉そうな人がいた。


「おい。ここまで大規模な物とは報告書には書かれていなかったぞ?」


 この国の皇帝様でした。


 めっちゃ権力を振りかざす人だから入れていないのか、それとも将来的に俺達に害なす人だから入れないのかは分からないが、少なくともいつもの文官さんは入れている様子なのはとても興味深かった。

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