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037 シロネ4 冒険者への道、次なるダンジョン

 


 商人を目指すはずが、いつの間にかトップクラスの冒険者となってしまいました、シロネです。


 冒険書登録はしてませんけども。


 しかしレベルは推定フレアドラゴン級です。


 セージ様も子供らもかなりレベルが上がったのではないでしょうか。


 でもセージ様はレベルや海底ダンジョンの一つを踏破したことなんて気にしていません。


 既にセージ様は次の事をお考えの様子。

 ダンジョン攻略に楽しみを見出したご様子。


 子供たちとも打ち解け、賑やかな雰囲気で次のダンジョンについて話しています。


 ダンジョンって何なんだろう。

 なんて哲学的な事を考えてしまいます。


 階層をくまなく歩いて魔石を拾い集める以外、特に苦もないダンジョン攻略。


 スマホがあるので時間もわかります。


 セージ様のスキルで暗い海底、しかもダンジョン内でも明るいです。


 すごしやすい大きくて清潔な、貴族様の豪邸のような天幕での寝泊まり。

 暖炉もあるので寒くないです。


 そしてそんな天幕内で食べるあたたかな食事、あたたかで柔らかなベッド。


 時間になったら眠り、時間になったら起きてダンジョン探索。


 ティータイムもしっかりありました。


 激しい戦闘なんてありません。


 勝てそうにないなと思ったら、石ころを投げて少し待っていれば勝手に相手が魔石となるのです。


 そしてそんな石投げ程度でゴリゴリ上がる各種レベルと生えるスキル。


 こんな贅沢でチョロい最高難易度を誇る海底ダンジョン探索ってありますか?


 魔石もドロップアイテムも宝箱も充分に取りつくしました。


 既に何日も海底に潜ったままです。

 セージ様の魔力も心配です…。


 なのに当の本人は何の苦もなさそうに振舞っています。

 ものすごく余裕そうです。


 いったいどれほどの魔力量を秘めているのでしょう。


 セージ様が完全に寝入っても解除されない結界も凄いです。

 三日目くらいからは何の不安もなく受け入れられました。


 何の脅威もない、ダンジョン内での見張り無し就寝。


 ワタシもシュラマルも、そういうモノだと受け入れました。

 そうしたら、良く眠れるようになりました。




 ダンジョン探索に張り切るセージ様。


 そんなセージ様の不思議なスキルで次なるダンジョンが近場に示されました。


 最初に見つけ、踏破してしまったダンジョンから徒歩30分で着きました。


 とても荘厳なダンジョンです。

 ダンジョン門もそうですが、ダンジョンの外壁、ダンジョン内に入りそのすべての壁や天井、床までも精緻な彫刻が施され、その溝全てに視認できるほどの濃い魔力が満たされ、それがほのかに光を発していて、それは美しくも荘厳、かつ寒気がするほどの濃い魔素に恐ろしさを感じるダンジョン。


 最初のダンジョンが洞窟型だとしたら、こちらは神殿型と言えるようなダンジョンです。


 そんな中をセージ様はなんの気負いもなく入ってきます。


 ……子供たちでさえビクついているのですが…。


 いえ、きっとさすがセージ様、ということなのでしょう。

 この程度の魔素では驚くに値しない、そういうことなのですね。


 海底に来てから2つ目のダンジョン。


 この美しいダンジョンの魔物は全て、リヴァイアサンと呼ばれる海龍の頂点とも言われる魔物。


 シードラゴンと呼ばれることもある魔物です。


 こう聞けば絶望的ですが、セージ様の結界の前ではただのお魚です。


 結界の展開に慣れてしまったセージ様は、いくつかの階層にまとめて結界を張ることが出来るようになっていました。


 結界を張っているうちに、結界内部もなんとなくわかるようになったということも言ってました。


 そんな感じでセージ様が結界を掛けていくと、このダンジョンは8階層で構成されているとのことで、ダンジョン丸ごと空気入りの結界を掛けてしまわれました。


 そうすることで、奥に行けばいくほど、階層をおりれば下りるほど強くなる魔物は、セージ様のスピードで進む頃には虫の息です。


 最初の階層こそ、海の魔物の頂点と言われるリヴァイアサンの生命力でもって戦闘らしい戦闘にはなりましたが、水の無いところのリヴァイアサンはビチビチ跳ねるだけの大きなお魚状態でした。


 レベルの上がったワタシとシュラマル、子供らで難なく倒せてしまいます。


 セージ様も小石を投げ付ける余裕もあったくらいです。


 宝箱もセージ様のスキルにかかれば隠されていないも同然です。


 隠し通路も丸わかり。


 隠し扉やギミックも、セージ様が「ここを押せばいいような気がする」とか「たぶんここ引っ張れば開く気がする」と言ってそのようにするとあっさり宝箱部屋が晒されてしまう始末です。


 どうしてわかるのかとたずねれば、「ただの勘?」というなんとも末恐ろしい言葉を返されました。


 ただの勘で正しくギミックが解除されるものでしょうか?


 マーニのスキル【罠解除】って何なのでしょう?と思えなくもなかったです。


 本来なら進むごとに強くなるはずのダンジョンの魔物はセージ様の結界のおかげもあって進むごとに弱り切っていて、中には魔石と化し、ドロップ品を落としている個体もチラホラ。


 こうなってくると単独行動でも余裕なので、ワタシとシュラマルで手分けして魔石とドロップ品回収に奔走します。


 既にその辺のAランク冒険者より強くなっている子供達にはセージ様の護衛兼、セージ様の行く先の露払いとドロップ品の回収を頼みます。


 セージ様は宝箱探し、我々はそのまま捨て置くのももったいないドロップ品の回収です。


 待ち合わせは階層主部屋前です。


 各階層は広いですが、レベルが上がったこともあって難なく走りまわれますし、虫の息状態のリヴァイアサンだってサクサク軽作業です。


 回収品がたまると一旦セージ様のもとへいって【アイテムボックス】に入れてもらうのは手間ですが、ドロップ品をそのままにしておくのはもったいないので取り逃したくないです。


 その頃にはせっかくセージ様に揃えてもらった装備品も、セージ様の【アイテムボックス】に入れてもらい、身軽に背負い袋ひとつ背負ってその中にドロップ品を詰め込むという荒業に出ています。


 もうセージ様の結界や魔力量を全面的に信頼しているので出来る手段です。


 それにスマホという連絡手段もあるので、多少離れても大丈夫です。


 追跡アプリというのを起動すれば、セージ様やシュラマル、果てはマーニがいる場所も丸わかりです。


 あ、マーニ、既に北大陸に着いてるっぽいですね。

 一応ワタシからも連絡を入れておきましょう。




 あらかた1階層のドロップ品の回収を終え、セージ様のもとへ向かうと、セージ様の表情が優れません。


「セージ様?どうかしたんスか?」


「…あぁ、シロネ。お疲れ様。いや、なんかこのダンジョン…いや、階層の特徴なのか分からないけど、宝箱に人形しか入ってなくて。しかもその人形、起動して使うか、宝箱のまま回収しないとダメみたいでさ」


 はじめ、宝箱を発見し、鑑定して中身を知ったセージ様。


 鑑定で宝箱の説明を読み、試しに起動を試みたところ、最初に起動する時いくつかの設定が必要なようで、ちょっと面倒に思ったため、現時点での起動は諦めたそうです。


 後で暇を見つけて起動する事にして、次の宝箱を回収しに行ったらまた同じような人形入りの宝箱。


 その後もいくつか宝箱を発見し、回収したが、中身の人形のタイプが違うだけで、この階層の全ての宝箱は人形だったそう。


「それは残念ッしたね…」


「でもスゲーんだぜ!その人形!騎士になるんだって!自分だけの騎士だって!なんかカッケーよな!」


「それに色々違うタイプの人形で面白かった!小鳥とか兎とか、普通の人形みたいなのも色々あったんだ」


 子供らは面白がっているみたいですね。


 次階層ではセージ様の望む変化ある宝箱が出るといいですね!


 ワタシに遅れること十数分でシュラマルも合流となったところで1階層の階層主とご対面となります。



 階層主は流石と言うか、弱っていても死んでませんでした。

 でも弱っているので簡単に倒せてしまいます。


 リヴァイアサンには変わりませんがレベルが違いました。

 2000とかでしたね。


 1階層でレベル2000の階層主とか普通攻略無理ですよね。


 というか、この1階層内にわらわらと蔓延っていたリヴァイアサン、普通に平均レベル1000超えていたんですけど…。



 で、2階層です。

 黄色のリヴァイアサンです。

 レベルは1000程度なので安心しました。


 ……レベル1000なのに「程度」とか「安心」とか思った自分に戦慄します。


 商人シロネは銅貨に「程度」なんて使っていましたが、冒険者シロネはレベル1000超えの魔物に「程度」を使ってますよ。


 慣れって恐ろしいですね…。


 その点、セージ様は安定してセージ様ですね。

 堂々となされています。


 見習いましょう。


 2階層は生きているリヴァイアサンが少ないです。

 時間が経っているために魔石化している物が多いです。


 回収しましょう。

 しまくりましょう。


 セージ様と子供たちは宝箱班として行動します。

 ワタシとシュラマルが魔石その他回収班ですね。


 完全作業化です。


 ふふふ。


 地上に居たらレベル1000超えの魔物なんて考えられなかったのに、分担して作業化出来てしまえるなんて…。


 ワタシ、地上に戻っても大丈夫でしょうか。

 不安で胸がいっぱいで笑えて来ます。


 情緒不安定です。


 この不安を干上がって瀕死のリヴァイアサンにぶつけようと思います。




 このダンジョン、階層下りてもリヴァイアサンのレベルは変わりありませんでした。


 普通にフロアを徘徊しているリヴァイアサンはどの階層でもレベル1000、特殊個体が1500。階層主は2000でした。

 それが8階層までずっと変わらず。


 宝箱の中身も種類は違えど人形しか出てこなかったそうです。


 セージ様はガッカリしていましたが、詳しく人形の性能を聞く限りは驚愕という言葉しか思い浮かばなかったです。


 この人形、1体で1国潰せる程度の戦力らしいです。


「程度」ですって。


 そんな「人形」がこのダンジョンだけで130体。


 それでガッカリしているセージ様。

 これ如何に。




 2つ目の、リヴァイアサンダンジョン、もしくは人形ダンジョンとも言えるダンジョンを攻略し終え、ダンジョンの外に出た我々。


 ダンジョンの外に出ても深海というだけでホッと出来ない状況なのはわかりますが、何故かホッとしてしまいます。


 濃い魔力の圧が無くなるだけでこんなに清々しい気持ちになるとは。


「よし、次行こ」


 衝撃的な言葉を聞きます。


 ダンジョン出てすぐセージ様が発した言葉がそれでした。


 それに喜びはしゃぐ子供達。


 もうすっかり仲良しです。


 そう言えばいまさらですが、普通、人に懐く事はあまりない孤児や、あの人見知りが激しかったハー様もセージ様だけには物凄く懐いていましたね。

 最初から。


 セージ様の人徳の為せる御業でしょうか?


 そんなセージ様と子供達を眺め、ふとシュラマルに目を向ければ、悲しそうな顔の彼と目が合います。


 ワタシは静かに頷くのみです。


 楽しそうにしているセージ様に水をさすことなど出来るはずがありません。


 早速次のダンジョンまで光る道を出して進むセージ様達の背中を見ながら、ワタシはマーニにこれからの予定のメッセージを送ります。


 スマホ、便利です。

 積極的に使い方覚えておいてよかったです。



 リヴァイアサンダンジョンを出てから北大陸方面へ。


 まっすぐ北大陸に向かうのではなく、違うダンジョン方面へ行くために、少し東方向へそれて進みます。


 セージ様もレベルが上がったため、起伏のある道でもスピードが落ちることなく進むことが出来たので結構北大陸に近付けたのはよかったと言えば良かったことでしょうか。


 深海のど真ん中で一泊、いつも通りの優雅で快適な野営。

 最近ではシャワーだけではなく、お風呂まで付いています。

 ぽかぽかして眠れるので快眠です。



 海底で一泊し、また進む事半日。

 誰も通る事の無い海底の光る道のど真ん中でテーブルと椅子を出してランチです。


 海底で焼き魚定食なる物を食します。


 大型の海底魚型魔物が結界の上や横を泳ぎゆくのを眺めながら、後ろめたさを感じつつ食べる焼き魚定食。


 でも悲しい事にとても美味しいです。

 大根おろしとおしょうゆ、とても合います。

 ご飯が進みます。


 港町で生まれ育った子供たちでさえおいしいおいしいと食べています。


 塩加減とか絶妙ですものね。

 ぷはぁぁ、あら汁もおいしいです。


 視線の先にちらちら見えるダンジョンの入り口が見えなければもっと美味しく感じたのでしょうか?


 なんでしょう、あの禍々しい雰囲気を発しているダンジョンの入り口。


 蔓型に生えている海藻に幾重にも巻きつかれて、とてもおどろおどろしい感じになっているのですが……。


 周囲に滲んでいるのは毒ですよね?

 巻きついている蔓型の海藻が毒を放出しているっぽいです。


 あのダンジョンの入り口周辺が紫がかっています。

 たぶんここもセージ様の結界がなければ毒海水で既にやられていたことでしょう。


 てか、こんな深海まで誰が来るんだって話なのですが。



 昼食を食べた後に、お番茶で一服しましてダンジョンです。


 3度目となるともう小慣れたものでして、セージ様はサクッとダンジョン全体に結界を掛けてしまいます。


 それはもう、水気とかないくらいに、もともと乾いているダンジョンみたいな感じになります。


 今回のダンジョンは環境型ダンジョンでしょうか。


 あのおどろおどろしい入り口を抜けると青い空に草原が広がっています。


 いえ、草原に見えていたのは、海藻型の魔物が密集していたからでしょう。


 セージ様の結界で一瞬にして干からびてしまったようで、その身をドロップ品に変えてしまっています。


 よく見れば草の元に小さな魔石が転がっています。そしてこの草も全てドロップ品なのでしょう。


 セージ様が


「あ、この草HP回復薬になるって」


 と。


 このフィールド全ての草と魔石を回収ですか…。

 シュラマルに視線を向けると、諦めた表情をしています。


 わかります。

 先が見えないくらい広い草原に見えますものね。


「あっ、これもう魔石化してねぇか?」


「だね、この草がドロップアイテムなのかな?」


 子供達も気付いたようで。


「だったらさ、これ風の魔法で集めようぜ!風魔法のスキルレベル上げるのに良さそうだし!」


 子供ってすごいですね。

 発想が柔軟です。


 ワタシなどは考えもつきませんでした。


 言うが早いか子供たちは早速風魔法で集めていきます。


 簡単でした。


 風魔法でまとめられたドロップ品をセージ様の【アイテムボックス】に入れれば終わりです。


 それを何度か繰り返せば、もう階層主部屋前です。


 こんな広いフィールドを走り回るのは絶望的でしたが今回、ワタシとシュラマルはとても楽ちんでした。


 子供たちが楽しそうに風魔法でドロップ品をごっそり集めている間に、我々はセージ様と共に宝箱を回収していきます。


 今回は色々な種類の中身でセージ様も宝探しを楽しそうにしています。


 全部がアーティファクト級のお宝だったのですが、それがなければとても微笑ましい光景でした。


 このダンジョンも宝箱ごと回収です。

 中身だけでも良かったのですが、宝箱全てに宝石の装飾があったので、「これも売れそう?」とか言いながらセージ様は回収していました。


 大容量【アイテムボックス】保持者のなせる技です。


 魔法鞄があったとしてもこれだけ大きな宝箱はもったいないけど諦めるでしょうね。


 宝箱の宝石よりも、中身のアーティファクト級アイテムの方の価値が断然高いですから。


 1階層の階層主は既に魔石化していました。

 エンシェントディープシーエントという魔物だったっぽいです。


 セージ様が魔石を鑑定してそう呟いていました。


 ティープシーはわかりませんが、エンシェントエントは知識と言葉を持つエントだったと記憶します。


 たくさんの枝や根が動き、狡猾な罠なども仕掛けてくるので普通の冒険者では太刀打ちできない。


 高威力の火魔法で倒すことが出来るかもしれない、という話を聞いたこともありますが、未だ倒せたひとはいないというオチをよく聞きましたね……。


 そうですか、それが姿を見ることなく、魔石と化していますか。


 傍らにはやけに大きな宝箱と…


「ん?『ソーマ』だって。どんな飲み物や料理に入れても合うんだって。寿命もちょっと延びるらしいよ」


「マジか!美味いのか?!」


「味見味見~!」


 とんでもない事言ってますが…?


 シュラマルに確認をとるために視線を向ければ、力なく首を横に振っています。


 セージ様と子供たちは早速コップに入れて飲み始めます。


 こちらの子供らはもうアレなので比較には適しませんが、普通の子供が抱えられる程度の樽に入った、セージ様が説明されたところの「ソーマ」。


 無色透明無臭です。


 ワタシの記憶では「延命の水」の異名を持つ、不老霊薬だった気が…。


「ん?水だな」


「味しない」


「つまんねー」


 ひどいです。


 不老長寿の霊薬ですよ?!

 味とかじゃないんですよ?!


 知られれば大陸間戦争になりかねない代物ですよ?!


「シロネとシュラマルも飲みなよ。ほんとただの水だし、水分補給も出来てちょっと寿命も延びるみたいだからさ、一石二鳥じゃない?」


 セージ様手ずからソーマをコップに入れて我々に差し出して下さいました。


 恐れ多いからとかいう理由で断れそうにありません。


 だってもうコップに入っちゃってんですから。

 それに差し出して下さってるんですから。


 ワタシもシュラマルも震える手で受け取り、意を決して飲み干します。


 ……普通の水でした。


 普通っていうか、セージ様達が【アイテムボックス】から出して我々に配っているあの透明な容器に入ってる新鮮な湧き水のような水というか。


 そしてワタシとシュラマルが精神を削る思いでソーマを飲んでいるあいだに、セージ様と子供たちは宝箱に取りかかります。


「なんだ。こっちも樽か」


「でもでけー!」


「同じのかな?」


「んー…あ、違う。『アムリタ』だって」


 ぶふっ、っと口にまだ含んでいた残りのソーマを吹き出してしまいました。

 鼻からもちょっと出てしまいました。


 シュラマルは飲み込んだ拍子に聞いてしまったために、気管に入ってしまったのか咽ています。


 セージ様が「大丈夫?」と心配してくれましたが、ワタシもシュラマルも「大丈夫です」と、なんとか平静を保った表情を作り、答えました。


「『アムリタ』…多少クセはあるが甘い。一口飲めば5年は寿命が延び、不治の病も治る、だって」


「えっ、甘いの?!飲みたい飲みたい!」


「飲みたーい!」


 そしてまたコップに入れて飲むセージ様と子供達。


「んぐっ、これは…」


 ちょっと嫌そうな顔をするセージ様。


「うげー」


「甘すぎー」


 ……らしいです。


「クセはそこまでじゃないけど、甘すぎるから何かで割った方がいいかも」


「じゃ俺タンサン!」


「紅茶じゃない?」


 と言ってそれぞれ好みの飲み物で割り始めます。


「じゃぁ、シロネとシュラマルにはこれ」


 といってセージ様はワタシとシュラマルに、アムリタのレモン水割でした。


 その味は、甘くて酸っぱい、そして少しせつなさを感じる、レモネードという飲み物に近いものでした。




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