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026 旅路15 王都ナチュピケ

 


 おっさん騎士たちに翻弄されつつも、商隊は無事、シャローロ・ラ・スヴィケ王国北端の、港町な王都、シャローロ・ラ・ナチュピケに到着した。


 そして到着と同時に、町門でハーちゃんは貴重で特殊な鑑定の魔道具で簡易鑑定された結果、北大陸帝国の侯爵家令嬢、ハーモニアお嬢様ということがわかった。


 周囲はざわめいたが、おっさん騎士達はとくに驚くこともなく、「よかったな」とハーちゃんの頭を撫でようとして泣かれていた。


 しかしお嬢様と判明しても俺達に任せるスタンスには変わりないらしい。


 なにより俺からハーちゃんが離れようとしないし、誰かが無理に離そうとするとギャン泣きするのでこれまで通りにするらしい。


 …ある意味お嬢様の権力というやつだろうか?

 と頭をよぎるが、気のせいだと思いこむようにした。




 商隊はここを区切りとして解散となる。


 この旅の間に見知った商人やその護衛人たちが口々に別れを告げ、相手の旅路とまたの再会を祈り合う。


 俺達も旅の間に見知った商人や護衛人たちに挨拶し、それから知り合いが多いため、挨拶が長くなっているゾーロさんを待つ。


「うわ…うんま!」


 しかしただ待っているわけではない。


 飲食屋台では海鮮屋台が多く、その中でも貝類や魚を焼いて売っている屋台を回り、食べ歩いている。


 旅を始めてからこの町に来るまで、だんだんと料理の味が普通においしくなってきていたため、この町での食事を楽しみにしていたらしいハルトはとても喜んでいて、せわしなく屋台めぐりをしている。


 それに付いて回っているマーニも嬉しそうにハルトに付き合って食べ歩きをしている。


 ハーちゃんはもう騎士を除いた俺達とは普通に接せるようになっているので、俺の一応な護衛となっているシロネが面倒を見ている。


 そんなハーちゃん連れの俺達もゾーロさんが見える位置でほどほどに海鮮串焼きを食べ歩きしたり、興味を引く物を買ってみたりしてゾーロさんを待っているところだ。


 おっさん騎士達は用があるとかで、ハーちゃんの護衛をハルトやマモルに任せ、どこかへ行った。


「ハーちゃん、おいしい?」


「うん!」


 マモルもハーちゃんの面倒を見られるようになり、俺は比較的自由を得た。


 ハーちゃんはホタテっぽい何かの貝柱の塩バターっぽい串焼きをマモルに買ってもらい、おいしそうに食べている。


 マモルは魚の串焼き、シュラマルは海芋と呼ばれる海底で採れる芋と魚の切り身を交互に串にさして塩焼きにした物を食べている。


「セージ様、次は何食べるッスか?」


 ワクワクした様子でシロネが俺にたずねてくる。


 この町に来たことはあるようだが、こうして食べ歩くのは初めてとのことで、実に楽しそうにしている。

 さっきは焼き魚に焼きガキ、焼き蛤やアクアパッツァみたいな汁物まで食べていた。


「そうだな…俺も…」


 魚の塩焼き食べたいな、と言おうとしたら、近くを通りかかった子供が悔しそうな声で話しているのが聞こえた。


「クッソぉ、今日も虫しか獲れなかった」


「しょうがないよ、大人たちの船じゃないと、魚や貝なんて獲れないよ。僕たち子供じゃあんな遠くまで船出せないし…」


 声の方に目を向ければ、ボロボロでなんだか汚い感じの格好の子供たちが、自分たちの成果を見せあっているみたいだった。


「こんなんじゃ今日も…」


「残飯だね」


「今日も売れ残って捨てられた腐りかけの魚かー」


「他国の商人たちからまた何か盗む?」


「久々にパンが食べたい…」


 心も食生活もボロボロのようだ。


「セージ様?どーかしましたッスか?」


「いや、虫って何かなって」


 子供らを見ながら、なんとなく気になってそう呟くように言うと、シロネが子供たちの所へたたっと行って何やら話しかけている。


 なんとフットワークの軽い獣人さんだろう。

 マジ尊敬する。


 話を聞き終わったのか、また軽快にたたたっとこちらに戻ってきて教えてくれた。


 少年達もこちらを見ている。

 なんか恥ずかしい。


「えぇっと、彼らが持っているもの全部、海虫とよばれる物らしいッス。魚を釣る時の餌として使えはするみたいっスけど、海虫は貝を食べてしまうんで、漁師たちからは嫌われているって。子供たちが船で出られる範囲に仕掛けた網ではああいうのしか獲れなくて、たまに魚や貝が獲れると、それを売って日銭や食料を得ているみたいッス。いくつか分けてもらえたっスよ」


 あんな短時間で物凄い情報量なんですけど。

 シロネさんの職業である歌劇役者って実はすごいのかもしれない。


 シロネが子供達から貰った海虫。


「…うん」


 どう見ても海老だよね?!


 しかもオマールとか伊勢って頭に付きそうなヤツ!


 それにブラックタイガーとかそれ系もある!


 カニやウニなんかもあるんですがどういう事?!


「見たことないものばかりッスけど、このあたりでは海に普通に居る虫みたいっすね。貝だけじゃなく、海芋なんかも掘って食べてしまうらしく、さしずめ海の害虫ってとこっスかね」


「そうなんだ。じゃぁこれ全部捨てるのかな?」


「みたいッスねー」


「そっか…じゃぁ俺が買うよ」


 だってとても美味しそうなんですもの!

 こんな大きなエビとか食べてみたいじゃん?!


 元の世界でも大きいからと言って大味ではなかったし、きっとウマいはずだ。


「うえぇぇ??」


 シロネは驚きつつも子供たちと交渉してきてくれた。


 子供たちはもちろん大喜びで本日の成果を俺に見せてくれた。


 どれもこのあたりではゴミだということで、まだ生きているもの限定で買い取ることにした。


 死んでたら鮮度が分からなかったのでそのようにさせてもらう。


「いいですか。この虫についてはこれを基準に鉄貨10枚。これから大きい物になるにつれて鉄貨を5枚ずつプラスして買い取ります」


 シロネが示す基準がジャンボエビフライに出来そうな海老なんですけどー……。


 まぁ、いっか。

 捨てられるってものだし。


 子供たちとの交渉はシロネに任せ、俺は大型のコンテナ容器を数個出し、そこに少し海水を入れてもらい、買い取った物を種類別に入れていく。


 中にはタコなんかもあった。

 もちろんそれは買ったが、ヒトデやウミウシみたいなのは個人的に食べ方が分からなかったので、買い取りはしなかった。


 買い取ったのは俺が食べ方を知っている物だけ。


 普通にスーパーの鮮魚コーナーにレギュラー入りしているような物だけに絞った。


 ナマコは高級って聞くけど、今回はパス。


 思い出して一応鑑定で寄生虫の有無を確認しながら、黙々と仕分けをしていく。


 ちなみに寄生虫はほとんど付いていなかったのでよかった。


 いても焼けば問題ないらしいんだけど、なんとなく。


 脚を伸ばした状態で、ハーちゃんサイズのカニを持ってきた子がいたので、銀貨1枚で買い取らせてもらった。


 さすがに他のカニが入っているコンテナ容器には入れられなかったので、別な容器にいれた。


 結構な人数の子供たちから買いまくった。


 ノープランである。


「買ってもらえて嬉しいけどよー、にーちゃん達こんなもん買ってどーすんだ?」


「バカ、黙っとけよ!貴族には海虫を飼うような訳わかんねー奴もいるんだから、そっとしとけって!」


 そっとしとくもなにも、丸聞えなんですがー?


 そしてその言い方からして変態っぽい貴族と一緒にしないでほしい。


 貴族じゃねーし!


 確かに大量買いしてしまい、個人で消費するにも多い。


 とりあえずまだ生きてるし、3日くらいなら【ワンルーム】にぶっ込んでおいても大丈夫だろう。


 砂抜き的な意味でも。

 たぶん。


「…食べるんだよ」


「うえぇぇぇぇっ、きもちわりぃ!」


「だからそっとしとけって。俺、貴族ってヤバいヤツが多いって聞いたことあるんだ。そういうのには関わっちゃいけないってのも聞いた。でもそのおかげで金もらえたんだから余計なこと言うなよ」


 俺も昆虫とかなら食べようとは思わない。

 彼らもそんな感じなんだろうな。


 それにいろいろ子供らにひどい事言われた気もしなくもないが、俺は黙ってさっさと特殊魔法の【ワンルーム】を開いて、適当に買ったものを入れ、


「じゃぁな」


 と俺は去ることにした。


 さっそくあっちの空いているスペースでコンロ出して焼いて食べようかな。


 そっちの方には、焚火をしている人もいるので、なんか焼いて食べてもたぶんいいよな?


 一応マモルの所まで戻って、事情を説明し、食べるか聞いてみたら


「食べる」


 との事だったので、連れだって焚火をしている人達から少し離れた空いた場所に行き、簡易的な海鮮バーベキューをすることにした。


 まず、キャンプテーブルを置き、その上に魔石式卓上コンロを出してフライパンを乗せる。


「いやいやいや、ここでそれ出して焼くとか情緒無視かよ?!」


 いつの間にかハルト達も来ていてダメ出しされた。


 マモルがスマホでハルトに連絡したらしい。


「おかしいと思ったんだよ、魚や貝はあるのに海老はないってさー。物足りなかったのはこれだったんだなー」


「自分は知らなかったッスけど、このあたりでは海虫とよばれる害虫らしく、食用ではないみたいっすよ?」


「ど、どう見ても虫ですが、食べるんですか?」


「私も食べたことはありませんが…食べるとも聞いたことはありません」


「まー、実験ってことで。こっちでは食べられないから食べないのかもしれないし、僕らの地元の食材とは違うのかもしれないしねー?」


「確かにそうか」


 喜び勇んで買っちゃったけど、早まったことしたか??


「ま、とりあえず焼いて食おーぜ!一応オレなら食っても大丈夫だし」


 確かハルトは状態異常無効のスキルがあったんだよな。

 チート持ち勇者め。


「それじゃわかんなくない?無効よりも耐性持ちの僕の方がこういうのは向いてると思うけど、それでも実験台にはなりたくないなー」


 なんだかんだハルトもマモルも楽しそうである。


 俺達でこんな感じで野外で何かするとかなかったからちょっとテンションあがってるのかもな。


 俺もそうだし。

 めずらしく。


 てことで、ハルトに言われるままに片づけ、それからきちんとしたバーベキューセットを出す。


 こういうのはハルトは得意だよなー。


 仕切りだしたし。

 ありがたい。


 子供らから買った海老やウニの他、近くの鮮魚屋台で貝類や魚なんかも買って本格的な海鮮バーベキューへと移行してしまった。


 食材は俺の【クリーン】で綺麗にしてからハルトが下処理をし、エビや魚は粗塩を振って焼いていく。


「醤油とレモンとバター、ガーリックパウダーと、あればパセリも用意しといて。あ、軍手も」


 テキパキしてる。


 マモルとハーちゃんは皿を持って待機。


 シロネ達は困った顔をして眺めている。


 ハーちゃんはよくわかってないけど、俺達の様子を見る限り食べ物なんだろうなという待機なんだろう。


 まだ幼女なのでそこまで見た目で嫌がるようなことはないようだ。


「へい、お待ち」


 日本では普通の男子高校生が滅多にお目にかかることが出来ない特大のイセエビっぽいのをドンとみんなの皿に乗せられていく。


 縦半分に真っ二つにされた大きなイセエビっぽいやつだ。

 バターで焼いて粗塩をふり、風味付けに醤油をたらしてある。


 それをそのままフォークで身を殻からくりぬいてガブっと行く。


 熱いっ!けど…


「うまっ!」


 味も濃厚なオマールっぽい!

 地中海で食べたやつよりうまいかも!


 そして半身でも充分デカい、てか、でかすぎるから食いでがある。


 簡単な味付けだけでも充分うますぎる!


「……毒とかは無いようだね。あとで腹痛とか無いよね?」


「オレ毒でもいいや。うまいんだったら食う!」


 なんと…。

 お前ら俺に毒見役をさせたのか!


 と声を大にして言いたかったが、口いっぱいにエビを入れてしまったために言葉にならなかった。


「うま!マジオマール!」


「ハーちゃん、おいしい?」


「うん!」


 焼きウニや焼き巨大ブラックタイガーも超巨大カニもとてもうまかった。

 この世界に来て一番うまいと思ったかもしれない。


 俺達を見ているうちに、恐る恐るシロネ達も食べ、そのうまさにあっさり陥落。


「見た目はアレですけど、激うまッスね、なんスかこれ、マジうまーー!」


「初めての食感です、おいしいです。これ、なんか味が、じわってして、ぷりっとして、手が止まりません!おいしいです!」


「これは…とまりません。塩だけでこんなに美味とは…このショウユを掛けるとまたさらに…止まりません」


 物凄い勢いで食べていた。


 そこへ


「おい、にーちゃんたち、マジで食べてんのか、それ…う、うまいのか?」


「うまそうな匂いだけど…」


「おいしそうなにおい…」


「なぁ、このにーちゃんたち食べてるんならもしかして…」


「食べれる、のかな?」


 子供たちが俺達の様子を見て、声を掛けてきた。


「…食べてみるか?」


 いつもなら声を掛けるなんてことはしないだろうが、調子に乗って、食事のお誘いをしてみた。


「え…」


「でもー」


「た、食べる!」


「だね、食べてみたい!」


「うん!」


 ビビってる子供にも全種類くらいまんべんなく皿に乗せ、フォークを添えて全員にハルトが配る。


 子供たちは喉を鳴らし、子供たち同士で視線を合わせ、意を決し、エビにかぶりついた。


「!」


「んん?!」


「はふ、ふわぁぁ」


「おいしい!」


「んまーー!」


 あとはもう、シロネ達同様、物凄い勢いで食べ始めた。

 早々に腹がいっぱいになったマモルが今度は焼き係になり、ハルトは食べることに集中できるようになり、そして思う存分魚介を堪能している。


 そこへ俺達を見つけたゾーロさん達が来て、俺達が食べているものに驚きつつも、匂いに負けて食べ、すぐに虜となったようだ。


「これは…うーむ、しかし見た目で…いやいやそれよりこれをどうやって運ぶか…いっそここで屋台からはじめゆくゆくは店でもだせば…」


 なんて食べながら色々考えているようだった。


 全員が食べ終わっても、俺が子供たちから買った物はまだたくさんあったので、マモルに全て魔法で凍らせてもらい、アイテムボックスに入れることができたので安心。


 ワンルームの中でタコが自由に移動していたのを見た時はマジで焦った。



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