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153 生物型ダンジョン攻略5 キラキラの魔法

誤字報告ありがとうございました!


12月15日2巻発売します!

1巻読んでくださった方々ありがとうございます!

 


「こんなダンジョン無理ー! とかなんとか言ってたわりに相変わらず飯のチョイスがアレだな」


「もんくあるなら食うなよ」


 みんながウキウキワクワクガチめの野営の準備をしていたので、俺は今の気分で食べたいものを勝手に準備することにした。

 前にも同じようなことがあったようなそうでないような気もしなくもないが気にしている場合ではない。

 ハルト達に任せていたら固いパンと干し肉になりそうな感じがひしひしだったので。


 いつの間にかヤツらはこの世界の冒険者になっていた。冒険者はこうあるべき感を醸していた。文明の利器を削ぎまくっている。

 もっとここでのシュラマルを見習ってほしい。ついでにその彼の表情も見といた方がいいぞ。ちょっと絶望してるから。

 勇者さん達はこのダンジョンに来て魔物を倒しまくっているうちに変なスイッチが入ったらしい。ダンジョンハイ、もしくは冒険者ハイとかいうやつかも。こわいこわい。

 でも楽しそうに準備しているし、余計なことは言うまい。

 言わないが俺はそっちはちょっとアレなんでこっちで自由にさせてもらうよ。ほんと、ごめんよ。


 そうして俺は今の気分的に焼き肉をすることにした。焼き肉というかバーベキューというか。ホルモン食べよう。マルチョウ食べよう。焼いて食べてもいいけど半分は鍋にしちゃおう。


 焼き始めたらぞろぞろとみんなこっち来た。

 ハルトに至ってはじっとりとこちらを見ながら呆れ口調でなんとなくヒドイ言いようをした。なのに皿と箸を手に食う気満々。言動に相違がありますが。


「ねー、セージとダンジョン潜るといつもこんな感じなの?」


 マモルが残念そうに俺を見ながらハルトと話す。


「そうだぜ。俺もここに来て冒険者テンション爆上がりしてたけど、そういやセージといるとこんな感じだった。真面目な冒険者からしたら冒涜でしかないよな。けどこの誘惑にはあらがえねえ! くっそー!」


「……うん。そうだねえ……。うん。なんか、うん」


 まだ納得してないマモルだけど、さっき自分たちで用意した冒険者食をかたづけ始めている。寝るときになったら今度は冒険者風テントとか道具をかたづけるんだろうなあ。



 腹一杯に食べ、久遠の騎士によって安全も保証された、寝るまでの間のまったりした時間。

 駄弁るよね。


「ときにセージくん」


 マモルがエアー眼鏡をくいっとさせながら片方の口の端をきゅっと上げる。ニヨりたいのを我慢している顔だ。猫耳少女と旅するラノベの発売日だと嬉しそうに言っていた日、同じ顔してたな。


「なんだかとっても心が痛む口調と表情ですが、なんだね、マモルくん」


「ふふふ、えーっとね、ぼくぅ、セージくんにおねがいがあるんだー」


 頬を赤らめもじもじしながら言う、という変な攻撃を仕掛けてきたマモル氏。こんな賢者嫌だ。


「あ、オレもぉ、お願いしたいんだー」


 うん。日本にいたときのハルトって先輩とかに対してこんな感じだったね。通常。


「なんだね。キミたち。そんなに俺にコビたところで俺にはカネしかないぞ」


「さすがセージ。成金を豪語するだけある」


「ガチだからね。もはやゲスとも思わないねー」


「……」


 豪語とかしてねえし! ……してないよね?

 ガチとかゲスとかいうワード入ってるけど、なんか褒められてる感じがする。


「まあんなこた別として、お願いってか相談なんだけどよー」


 戻った。飽きんの早すぎない?


「ええっとね、ちょっとだけ、ほんの数日でいいからセージが僕たちにかけてくれている結界解いてほしいかなーって」


「……」


 ガチはどっちだよって話ですかね?


「ほら、なんつーの、レベル上がった実感? ってのがほしいかなーってやつだよ」


 二人してなにが「ほしいかなー」だよ。

 俺は信じがたい者を見る目で二人を見た。

 勇者と賢者、マジ異世界にガチじゃん。ここは友人としてどうすべきなんだ?

 最悪の場合、ほんと、本当に最悪の場合よ? 俺のスキルがあれば、二人に「万が一」があっても「あのヤベースキルで蘇生できちゃうよね問題」があるんだよね。問題というか、どう言えばいいかわかんないけど。

 たぶんふたりも今まで俺を気遣って我慢していたと思うんだ。ヒリヒリした冒険とかしたかったと思うけど、日本に帰れたときのことを考えて、俺の精神衛生とか考えてくれて黙っていたんだよな。たぶん。

 でもぬるゲーに我慢できなくなってきたのと、俺のスキルのイカレ具合を改めて感じてはっちゃけようっていうのか。

 まあいいけど。と思える程度には俺も成長したのかもしれない。いや、耐性の魔道具のおかげだけど。俺も調子乗ってきてるんだろうか。【聖女】スキル保持者として。


「ねえセージ、聞いてる? なに雰囲気イケメンみたいなキリッとした顔してるの? 無理しないで」


 なにが無理か。

 いろいろ無理だけれども。

 でもいいぞ。雰囲気だけでもイケメンであれ、だな。

 それよりここで結界を解けとか正気かよ。勇者と賢者は無効スキルとか耐性スキルもってるから平気なのか?


「おん? なに不思議そうな顔してこっち見てんだよ。いいだろ。こんだけメンツいんだからちょっとくらいやんちゃしたって」


 すごい。やんちゃを自覚している。


「まあ、いいけど。本気でここで結界解いていいのか? 本当に大丈夫か?」


 心の底から心配になり、改めて確認をとる。


「いいのかよ! やったぜ!」


「言ってみるもんだねー」


 うわ。ウキウキしてめっちゃ喜んでる。マジか。勇者と賢者すげえ。


「念のため聞くけど、他に結界外してほしいやついるー?」


 ……いないようだ。

 勇者と賢者以外はみな不安そうにしている。シロネにいたってはものすごい勢いで首を横に振っている、ようにみえる。早すぎて残像みたいになってる。なにそれすごい。


「今からいいかな?」


 え、今から魔物倒しに行くの? 


「結界なしに慣れときてえし!」


 違うのか。でも食後でおすすめしないけど。


「わ、わかった」


 ちょっと引いてる自分がいる。二人のテンションについていけない。この状況ではついていきたくないが正解か。


 俺は二人からちょっと離れる。

 シュラマルは心得ているように俺と同じくらい二人から離れた。マーニとシロネも察して離れ、そんな俺たちを見て全員が二人から離れた。……ドーナツ化現象ってこんな感じのことをいうのかな。


「じゃあ、いきまーす」


「え、なんでみんな離れるんだよ!?」


「え、なになにー?」


 この場所にたどり着いたとき、シュラマル以外の人たちは皆が具合が悪そうだった。レベルの問題や恐怖、絶望の度合いもあっただろうけど、たぶん身体的に参っていたんだ。

 ここは生物型ダンジョンと呼ばれるダンジョンの中。ダンジョンだけど生物。その中なんだ。環境なんかいいわけない。

 暗いのはもちろん、じめっとしてそうだし、生物だから体温とかあるんだろ? 場所によっては臭気もあると思うんだ。

 シュラマルは俺の結界が利いていた。結界は体を守るようにかけてある。暑さ寒さなんかの体調不良に関することも防いでくれているはず。だから少しは快適に過ごせていたはずなんだ。

 そんなのを今から外したいとはしゃぐ二人。心配にもなる。どんな環境なのかわからない。一応シュラマルと遭難した人たちは生きていたから結界を解く=即死とかにはならないと思うけど。


「んじゃ」


 解いた。


「うわっ、なんか暑っ、え、湿度たか……おばぼぼぼごほぉぉ」


「っ! がぼぼごっぐごぉぶぐっ」


 ……めっちゃ吐いてんじゃん。

 臭気の方だったか。それは耐性もってなかったっぽい二人。

 今まで結界で清浄な空気吸ってたもんなー。ハルトの言葉から察するに、暑さと湿度もあるらしい。

 あー、俺便利な結界もっててよかったー。常にかけといてよかったー。


「あ、あのー、ハルト様たち、大丈夫なのでしょうか?」


 とてもちゃんと心配そうにマーニが遠慮がちに指さしながら言う。

 俺なら指さして笑うけど、マーニは偉いな。

 カジュたち文官エルフは顔を青ざめさせている。結界を外されたときの恐怖でも感じているかのよう。言われない限り外さないから心配しないでくれ。

 海エルフとハルトのパーティーメンバー、子供たちは文官エルフたちほどじゃないけど困惑している様子。なんなら調子に乗って結界外したいとか言わなくてよかったと思ってそうな感じだな。

 シュラマルは「やっぱりな」みたいな顔をして、シロネは痛ましそうに二人を見ている。

 久遠の騎士はそれぞれ違った。マモルの久遠の騎士はここでは見てないけど、ハルトの久遠の騎士はマーニ同様心配気にしている。だけど俺の久遠の騎士達よ、なぜ笑っている。楽しい余興でも見るかのように、ゲラゲラ笑ってるやつもいれば上品っぽく笑みを浮かべている者、シェヘルレーゼに至っては嘲るように嗤っている。アーシュレシカはにっこりしている。

 俺んとこの久遠の騎士、よくいえば感情豊かだよね。……いいほうで言えばね。

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