141 誘導
誤字報告たくさんありがとうございます! 申し訳ないと思いつついつも助かっております。
レビューありがとうございました!
女子サイドは出すタイミングを逃したっきり今に至っております。
「なるほど」
相変わらずそんな感想しか出てこない。
諦めの境地ってこんな感じなんだろうなと漠然と思う。
「……え、それだけ?」
どことなく拍子抜けした感想を漏らすハルト。
俺が取り乱すなり怒るなりするとでも思ったのか?
残念。
この世界に来て以降、いつの間にか何かが増えたり減ったりすることに慣れちゃってさ。些細な増減なんてどうでもよくなってきてすらある。
「一人いたら三人いると思え、というやつだろ?」
「G系扱いやめようぜ」
俺のコメントにハルトは素早く否定してあげている。
「G系?」
「あ、ゴブリンとかゴキとかじゃないっすか?」
カジュの疑問にシロネがしっかり答えてあげている。
わざわざGと濁したところでちょっと無駄だったみたいだぞ、ハルト。
シロネの説明を聞いて思いっきり嫌そうな顔をするカジュ。
「嫌な系統のGだな。異世界ジョークか。ははは、あーおもしろい、勇者ジョークうけるー」
シロネとカジュのやりとりを聞きつつハルトとテキトーなやりとりをする。ちょっとしたイヤミも込めてみる。
「真顔で棒読みやめようぜ。オレだって少しは悪いかなって思ってんだ」
「おー、少し。なるほど」
一人と見せかけて三人。三倍が少し?
さすが勇者。少しの概念ってなんだっけ?
「いや、ほら、だって、お願いされたら断れないだろ? 一応オレだってお前のばーちゃんに断り入れたんだぜ? そしたら『本人たちがいいならいいんじゃないかしら?』とかいうし、親が判明している獣人の子だって自分は弱くてバカで騙された。そんな者に帰る場所はないとかドライなこと言うしさー。獣人の子はそゆことだけど、魔族の子と人族の幼児はお前のこと慕ってるみたいだし? 取りなしてくれーってさ、こーんなちっちゃい子からいわれたらなんてーか、なあ? アレだろ?」
おーおー、すげー早口でまくしたてんじゃん。
一応本当に悪いとは思っているのか? それともやましいことがあるからか?
少なくとも俺はやましいことがあれば早口で饒舌になる自信はあるよ。
ハルトがやましさに早口になる少し前のこと。
大型クルーザーに乗ってはしゃぐ海エルフ達。文官系のエルフ達はおとなしく、見慣れない船の船内を見回った。
そのときにあの子供たちを見つけたのさ。
ハルトのやつ、転生幼児一人を堂々と連れてくるフリをしてあのダンジョンにいたはぐれちびっ子たち3人ともを連れてきていた。
船に乗って案内がてら船内見回っているときたまたま開けた部屋で見つけたんだよね。
異世界転生児の他に魔族の子と獣人の子が。
今から港に戻っておいてきたとしても何かしらの方法でもってここまで来るに違いない。だったらもうこのままでいいや、と諦めの境地の「なるほど」が出たわけです。
同時にどの子か一人でもハルトに面倒みさそうと心に決める。自分の弱さを気にしている獣人の子あたりとかいいんじゃなかろうか。勇者って強いみたいだし、きっと師事してくれるんではないだろうか。うん、きっとそうだ。きっと。
あとハルト、ちょっと賢さを発揮してあらかじめばーちゃんから許可もらっとくとか勇者が過ぎるぜ。見た目のかわいさを売りにするのならちょっとおバカなくらいなほうがいいんでないかい? なんとなく。
「うん。まあ、もういいよ。けど全部俺に丸投げはやめろよな。前いたあの子……ハーちゃん? と違ってそこそこ受け答えできる年齢の子供たちなんだから大丈夫だろ?」
前回もこういう似たようなことありましたよね? と具体的な名前を出す。
前とはいささか状況は違うかもだけど、ハルトが連れてきたことには変わりないのです。
「えぁ、うん、まあ、わかってるって……」
やっぱそーだよなー、と項垂れるハルト。
そうですよ? 当然じゃないですか。
俺は……そうだな、ここはやはり育児・教育専門の久遠の騎士でも新たに起動しよう。北大陸の孤児院兼治癒院の職員数も心許ないし。あそこの職員は治癒院と地域とのつながりや商業ギルドでやりとりもまかせているからなー。そう考えると夫人とネイルサロンを任せているアテナのところもかなり人手が足りない気がする。人手というか、久遠の騎士のアイドル性というか。あそこますます繁盛してるっぽいし。あ、いや、俺が考えるより奴らに任せれば……、そんなことしたらあの帝国、久遠の騎士たちに支配されそうな気がするし、前にシェヘルレーゼがそれでもいいようなことをほのめかしていたような……。
ま、まあほどほどの中規模な商売をしてほしいってことを言っときゃいいのか? いつでも手を引けるように、くれぐれもほどほど、むしろほどほどがとても理想だと念押ししておけば変な支配とかはない、よな?
そしてなんやかんやあり、沖に出たところで大きな船に移動。
「船。え、船? 船でいいのか?」
「シェヘルレーゼが船って言ってたから船なんじゃないか?」
「オレ、前にテレビで見たことあるけど、その時見た空母ってヤツに似てる気がする」
「外観を白を基調とし、上品かつ豪華な装飾を施し客船風にカスタマイズ。内装も同様に、さらに優雅な雰囲気が出るように通路を広々ととりましたし、客船にふさわしい各種施設も揃えました。一応空母としてもそれなりに機能するように最低限の設備は残しましたが、基本的には超大型ではありますが客船と言っても差し支えありません」
差し支えそうですが? とは誰も突っ込まない。
なんか「なんとか砲」とか撃てそうな装備とかがっつりついているけど、エレガントな装飾がついているのでみな何も言えない。見なかったことにしている、もしくは何のためにあるのかわからない感じだ。
大きな船に乗り換えたら海エルフたちはますます歓喜。
涙流しながら雄叫びとかあげちゃってるけど大丈夫?
外交を任されている文官エルフたちはあんぐりと口を開けかたまり、驚いている。
そこへシェヘルレーゼが騒ぐエルフを「うるさい。そこへ直れ」と黙らせ(彼女含め、久遠の騎士達は海エルフの扱いを既にマスターしている)、ある提案する。
「この船にはプロテインドリンクバー完備のジムや日サロもあるのでご興味のあるエルフ方は是非利用してみてはいかがでしょう?」
「女官殿、その、ぷろん……ばー? じむ? さろ? とはなんだろうか」
海エルフがシェヘルレーゼを女官殿と呼んで質問する。
なるほど。ばーちゃんにやんわり押しつけられたというか、厄介払いされた海エルフ達をおとなしくさせるための施設を用意したわけか。
ジムと日サロがあればしばらくおとなしくそこに通うだろうな。
プロテインの有用性も教えればいい。ボディービルの動画とか見せとけば万事OKっぽいな。
シェヘルレーゼが施設の使い方を簡単に説明。
「プロテインバー。プロテインを提供するバーカウンターです。プロテインとは筋肉の肥料、のようなものでしょうか。筋肉とはただがむしゃらに鍛えるだけでは育ちません。食事から取り入れる栄養も考えて摂ることが大事になります。森をつくるのと同じです。必要な時に必要な養分を与えることが大事なのですよね? そしてジムとは、計画的に筋肉を鍛えるための施設です。エルフであれば森をむやみやたらに伐採や植樹などしませんよね? 適切な場所へのアプローチが大事なのではないですか?」
え、なにいってるかわかんない。
シェヘルレーゼのやつ、テキトーなこと言ってない?
「っ! そ、そうか! 筋肉にもそういう考え方が……!」
あ、通じてる……。
そして何やら海エルフ達がシェヘルレーゼのスピーチに感銘でも受けたのか、おのおのが感動に打ち震えている。
どこかに感動ポイントってあった?
こうして船員として船に乗り込んだ海エルフはシェヘルレーゼのアシスト? でジム施設に押しやることに成功。静かな船旅を約束された、と思う。




