136 シロネ9 商談はダンジョンの中で 中編
誤字報告ありがとうございます!
微妙な雰囲気になったので、気を取り直して自己紹介をしました。
さらっと自己紹介されましたが、この方達、とんでもないお方々でした。この国のみならず、他国や他大陸の王族や高位貴族様にSランク冒険者様でした。
ここまで案内してくれた獣人も貴族に連なるお方達で、村人のほとんどが高貴なる血族か高ランク冒険者らしいです。
王族や貴族は獣人族や魔人族それにエルフもいますね。あとは人族の高ランク冒険者数名、という感じですね。
やはりあの高さから落とされて、且つこの環境でも生きていけるのは種族かレベルが関わってくるのでしょう。
一応この集落では種族関係なく助け合って暮らしているようです。
「それで……先ほどは失礼した。商人で生きてここにいる者はいないからな、その……」
「いえ、こちらこそ高貴なる方々に対して大変失礼な態度をとりました。平民ゆえ不敬な言動をお許しください」
「かまわない。ここではそのようなものを気にすることはない」
外に出たらその限りではないということでしょうか?
怖いですねー。
「ありがとうございます。お言葉に甘えまして普段使いの話し方で失礼いたします」
一応許可を取ると、皆様苦笑して頷いてくれましたのでこれで安心して話を進められます。
許可を取ることと言質を取ることは大事だとシェリちゃんも言ってましたもんね。
「それにしてもシロネ殿の先ほどまでのゴーレム掃討はたいしたものだった。よほど名のある冒険者か英雄かと思ったぞ」
ここまで案内してくれた獣人たちもなかなかの血筋のお方らしいです。
「いえ。我が主に付き添い、たまたまダンジョンに入る機会があり、そこでレベルを上げる機会があっただけです。それに身を守る魔道具を主より賜わっておりまして」
クソダサ……じゃなくて成金……いや、もういいや。クソダサくて成金趣味なくらいゴテゴテした腕輪をチラ見せすると、皆様そのダサさにドン引きです。
「主、であるか? シロネ殿はどなたかに仕える者であったか。しかもそれは国宝級以上の魔道具とお見受けする。そのようなものを従者に下賜するとは。シロネ殿はその方からよほど信頼を得ているのであろう」
ダサさにドン引きではなく、その価値に引いていたみたいです。
しかし嬉しい評価ですね。そうであってほしいですが、セージ様はお菓子のお裾分け感覚でゴッズ級のアイテムを「自分には装備できないから」と知り合いに無造作に配るようなお人なんですよ。
ハルト様とマモル様に注意されなかったら誰彼かまわず配っちゃうんです。だからたまたま近くにいたワタシだったのです。ええ。わかってますとも。わかってるんですから。
「はい、はじめは身の回りのお世話や秘書のような役割であったのですが、他の商人が主の持つ品に興味を持ち、その間を取り持つようになったのが始まりでして、今ではすっかり商人のお役をいただいております。それでもまだ秘書のお役目も任せていただけているのですよ」
セージ様からではなく、マモル様からではありますが、セージ様がそれを容認、というか受け入れちゃってますからね。商人兼秘書です。セージ様にとても頼られている感じがしてお気に入りの肩書きです。
サササと皆様に名刺を配ります。「こんなもんもらっても……」な顔をされますが、こちらもその対応、慣れたものなのでニコリと笑ってやりきった感を出しておきます。
「な、なるほど。文武商いに長け、主に重宝されておると。……その、商人ということはシロネ殿は商品を持っているのだろうか。その鞄は魔法鞄と見受けるが」
「はい。こちらも主より賜わりました魔法鞄でございます」
「おお! では食料などはもっていないだろうか。このようなところで金銭のやりとりは難しいのだが、魔物からのドロップアイテムで食料以外の物で交換ということにはなってしまうのだが」
「皆様がご期待するような食料を持っている自信はありませんが、一応食料になる物は持っております。金銭に関してはドロップアイテムがあるのでしたら確認させてもらってもいいですか? 換金のご用意があります」
「それはありがたい! 他の商人が興味を持つような変わった食料ということであろうか? いや、それでもありがたい。是非取引したいと思う」
「承知しました。ではまず、ご挨拶としてこの集落の一人あたり五つ、こちらをお配りします」
そう言ってワタシはおにぎりを出します。
セージ様が馬鹿みたいに……ではなく、布教用にたくさん持たせてくれたおにぎりです。
小腹が減ったときなどに毎回三つ四つ食べていたのですが、それでも全然減る気配がない程度には持たせてくれましたね。
「これは……ずいぶん黒いようだが」
「それは海苔という乾燥させた海藻で、中は米を炊いたものを食べやすくまとめたものです。おにぎりという食べ物です。この魔法鞄から出してしまうと日持ちしないので今日明日中には食べてほしいのですが。まず皆様お一ついかがですか?」
それとなく魔法鞄の価値を知らしめておきます。大容量で時間停止機能のある魔法鞄はそれこそ国宝級以上でしょうから。ドン引き系アクセサリーに魔法鞄の価値、それにゴーレムを簡単に倒せてしまうワタシ自身の価値。それはらはきっとワタシの主であるセージ様がどのような人物なのか、想像しやすくなるでしょう。
味見用に人数分のおにぎりを魔法鞄から出します。
獣人と人族が多めなので無難に鮭でいいですかね。
おにぎりのフィルムの開け方も一緒に教えてしまいます。なれないと難しいんですよねー。
力加減を誤っておにぎりがちょっと割れたり、海苔がボロボロになってしまったりしたけどなんとか皆様おにぎりを取り出し、恐る恐る食べ始めます。
「む、これは……」
「ああ、少し癖はあるがそこまで気にならない。皆に好まれる味だろう」
「これ以外にもいくつか具材が違うものがあります。今のは私を含め、獣人に受け入れやすい味のものを出しました」
「なんと、他にもあるというのか」
そこからおにぎりの味の説明をしました。
もちろん他のお話もしましたよ。集落における現状や、これまでチャレンジしてきた脱出のこと。集落を作ることになった経緯とか、食料事情。
こちらからもワタシの現状とお迎えが来ることもお話ししました。セージ様がここまで来るかもしれないこと、そのセージ様がダンジョンから出る算段を持ち合わせていることも軽く説明します。
「シロネ殿の主はよほど魔力に自信があるのだろうか。出入り口まで飛行魔法で行く以外は考えられないのだが」
「確かに魔力でお困りの場面は見たことがありませんね。しかし我が主、セージ様は多分飛行魔法ではない、別の方法をとると思うのです」
アーシュ君あたりが飛ぶ乗り物を持ってそうです。
「商人から声がかかるほど珍しいものを持っているとのこと、脱出に役立つ魔道具でもお持ちなのであろうか」
確かにセージ様、怪しい魔道具を結構な数死蔵していますし、マモル様からも怪しげな魔道具を渡されていました。まあ、それも死蔵しているご様子ではありましたが。
「私ではその辺りの判断はできかねますが、我が主にお任せすれば万事大丈夫ですよ」
すみません、セージ様。ここだけの話だけでも丸投げさせてください。
心の中で謝罪しつつその後、商売の話をさせてもらいました。
食えないドロップアイテムを換金しますよと言ったところ、代表達は喜んでドロップアイテムを換金しました。こちらも喜んで換金させてもらいましたよ!
大量のドロップアイテムはそれだけ長い間ここにいたということなんでしょうね。それを思うと悲しいですけど。
「今更私からこんなことをいうのもあれですが、一応ダンジョン都市の冒険者ギルドや探索者協会と変わりない換金金額とは思うのですが、この場で全て換金してしまって良いのですか? 外に出たら自分たちでしっかり外の金額を確認した上で換金できると思うのですが」
「シロネ殿を信頼している、といえば聞こえはいいが、実際はここでシロネ殿に換金してもらえなければ、この量を持って外に出ることはかなわないだろうな」
ですよね。セージ様仕様の魔法鞄でなければこの場の人数分のドロップアイテムすら引き取れなかったと思います。
ここの状況を考えるともっと換金したいと言ってくれる人は多いかもしれません。
「いつか外に出ることがかなったらと思い、貯めにためた鉱石などのドロップアイテムだからな。自力ですべて持ち出すのは無理だろう」
「そもそもダンジョン都市で我らが活動を再開したらどうなるか。我らだけならまだいいが、人族の心ない発言に傷つくものもいる。また捕らえられてここに放り込まれると考えるものもいるだろうな。ダンジョン都市は獣人でも比較的活動しやすいといっても『比較的』だからな」
まあ、そうですよね。
ワタシも獣人なので、ここでの人族の対応は知ってますし、感じています。
表面上は気にしていない、もしくは友好的な感じを出していますが、値踏みして利用して出し抜いて足下見て陥れてだまして食い物にしてやろうという下心がにじみ出ていますからね。
実際一部の高級店や一般の宿屋や食堂なんかは足下見まくって獣人は割高になってますし。
多分獣人は人族より体力がある分、一日あたりの稼ぎは多いはずですし、金勘定が苦手な獣人が多いのでだましやすいんだと思います。
あとは隣国の獣人国からの出稼ぎってのが丸わかりなので内心で馬鹿にしているんでしょうね。
っとと、愚痴が出てしまいましたね。表情に出ていなければよいのですが。
「それも踏まえて換金していただければと。こちらはすべての換金に応じられるだけの金貨は持ち合わせているつもりです」




