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134/160

134 ナンパ

誤字報告ありがとうございます!

いつも助かっております!

 


 うちの久遠の騎士がやってくれましたよ。


「たくさん作りましたのでどうぞお楽しみください」


 アーシュレシカさんが配下久遠の騎士を出してまで作ってくれましたよ。

 ナン。

 数も種類も豊富に作ってくれた。ナンに合うメニューも盛りだくさん。


「小さめに作りましたのでいろいろな種類、たくさんお召し上がりください」


「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」


 俺以上に喜びを表したダンジョン村の人々。

 ダンジョンでは肉や草……野草? 以外採れなかったみたいだし。

 あとは同じく落ちてきた人たちが持っていた食料くらいだから炭水化物はテンション上がるのかも。

 シロネがここにたどり着いてから放出した炭水化物以降、この村では炭水化物フィーバー状態で、炭水化物ならナンでも大盛り上がりになるんだって。


 異様な盛り上がりを見せるこのナンパーティーは、ケータリングスタイル。

 大興奮しながらもきちんと並んで取り分けてもらっているあたりどこかの男の娘系久遠の騎士の躾が垣間見える。仕事が早い。


 アーシュレシカの配下久遠の騎士は配膳補助に。シロネはお偉いさんとの会食張りにお上品スタイルでお食事あそばしている。ナンで?

 そしてアーシュレシカさんは甲斐甲斐しく俺の食事の世話をしている。

 別に俺は世話が必要なわけではなく、俺の周囲から離れないお子様達のお世話込みだな。

 王族系のお子様達はお上品にガツガツお食べあそばしている。


「このパン、ふわふわもちもちしてうまい。緑色のスパイススープにひたしてもうまいし、こまかい肉の赤いソースをのっけてもうまい」


 消し炭方面に突っ走ろうとしているお子様はチーズナンをグリーンカレーにつけて食べたり、ミートソースを乗っけて食べたり食レポしたりで忙しくしている。


 獣王さんとこのお子様は「はぐはぐ」と言う言葉が聞こえてきそうなくらいにはすごい勢いでいろいろたくさん食べている。シロネが来てからおなかいっぱい食べれるからうれしいってさっき食べる前に本当に嬉しそうに笑顔で言ってた。そして食べれるときに食べれるだけ食べるんだとか。

 うん。たーんとお食べ。


 で、亡国の転生幼王子はジト目でこちらを見ながら黙ってナンをバターチキンカレーに浸してもっちゃもっちゃと食べている。

 くちゃくちゃ食べはお行儀が悪いが、あえてしているのだろう。何かしらのアピールを感じる。


 それらを無視したいところをぐっとこらえ、【純真なる聖女】と【聖女の微笑み】で無言の対応でいなしつつ食事している俺。大人げないとか知らないよ。高校生は子供でいいのだ。




 シロネからもアーシュレシカからもまだ詳しい話は聞けてない。

 偉い大人達はまだまだシロネとオハナシ。他の大人達は遠巻きに様子窺いをし、子供たちはそんないつもと違う親に寄り添い不安と好奇心をにじませている。

 親のいない子はなぜか俺の周りから離れない。消し炭系魔王の子は俺に抱きついていて、獣王の子は俺の背にぴとりと自分の背中をくっつけている。転生幼児はボール一つ分空けて隣に黙って座っている。

 ……こちらから何らかの説明されるのを待っている感じ? 無理ですよ? 自分から率先して説明するなんて話術とか持ってない。俺、コミュニケーションスキルがなかなか生えないんだ。

 召喚されたことから始まり、ここにいたる経緯とか正直自分でもよくわかってない。

 よくわからないものを自分発信の見切り発車で説明なんてハイレベルコミュニケーション技術過ぎてできないのです。はい。

 なのでどうかそんなうさんくさそうな目で見つめないでください。


 とまあ、こんな感じで子供が離れないのでシロネのうさんくさい雰囲気を確かめることができない。

 アーシュレシカは知っているようだが、子供の前だから言えないのか言わないのか、そもそもこちらが聞くまで言う気がないのか。

 ……考えてもしかたないかー。


 とりあえず俺はここでばーちゃんのお迎えが来るまで待っていなくちゃならない。

 暇だなー。

 転生幼児のジト目がアレだけどしょうがない。暇だもの。

 懐から携帯ゲーム機を取り出し、往年のRPGをプレイ。ダンジョンでダンジョンゲームをする醍醐味ったらないよね。


「おい。そこまでいくといいわけがたたないぞ! ちょっとは隠そうとしたり自重とかあるだろ?!」


 ここで転生幼児の声を初聞き。幼児ボイスで大人びた言い回しをしやがる。もしかして転生前はある程度の大人だったのかもしれない。


「言い訳?」


「おまえ、転生者だろ」


「いや。異世界より召喚されし者だ」


 中二っぽく答える。直後、なんだか甘酸っぱい気持ちになった。

 ゲームに集中しよう。レベル上げレベル上げ。


「そ、そうか」


 こちらの堂々とした中二的返事に臆する転生幼児。

 なんかちょっとごめんて気持ちになった。


「そういうおまえは転生者か?」


 鑑定で知ってるけど、鑑定した後ろめたさがあるのですっとぼけて聞いてみる。

 後ろめたさがあるといつもより饒舌になるってほんとかも。


「それは……その」


 それは言いたくないわけね。


「いいけどな。おまえのことは俺の知り合いに預けようと思っている」


「は? なんだよ、急に」


「転生も召喚も俺はうまく説明できない。説明下手というやつだな」


 めんどくさがりとか横着とかなんとか違うよ? ほんとだよ?

 変な国に召喚された、追い出されたから旅に出ることにした、ばーちゃんに会った、ってところでまた自分でも消化し切れていないややこしい説明が必要になる。なぜ祖母がここにいるのかの補足をしつつ……うん。これだけでも気分が滅入って途中で説明することに挫折する。そんな未来が見える。今ここにいたるまでの説明までたどり着くことはなさそうだな。うん。しょうがない。

 代わりの説明を現地人のシロネでは微妙だし、久遠の騎士たるアーシュレシカだと装飾過多で変で壮大な物語ができあがりそうだし、まともに説明を求めるならハルトが適任だろうなー、と思っている次第。今のハルトのパーティーメンバーなら転移者や転生者が何人かいるし、その人達からも補足が貰えるのを期待する。

 マモル? 情報量が多すぎて説明が入ってこないと思うよ。途中で興奮しすぎて異世界の、魔法の、種族のなんたるかとか語りに入るよね。知ってる。


「い、いやだ! 俺はっ、ぼ、僕はおまえに育てられたい!」


 友のありがたみをかみしめていたら思いも寄らないプロポーズを受けてしまった。


「え、無理」


 普通にな。


「なっ!?」


「おれたちをすてるのか?」


 転生幼児のユニークな告白に魔王の子が参戦。

 急にどうした。涙目だぞ。


「うわっ」


 背中では獣王の子が背中合わせ状態からおんぶに切り替え、すごい力でしがみつかれた。

 子供でも獣人。絞め殺す勢いかな? いくら俺が高レベルといっても、そんじょそこらのお人ら並のHPしかないんだからその辺り気にしてくれないかなあ? まあ、某聖女スキルの影響でじわじわ回復されるからダーメージ相殺されるんだけどね。


「やだ、いっしょいたい」


「そういわれてもなあ。俺は子育てなんて……」


 あ。あるわ。

 このくらいの年齢なら妹と変わらないし、こちらでは経済的余裕も人手もこの世界で頼れる妖精系魔王もいる。なんなら子育て専門に新たに久遠の騎士を起動させてもいい。


 なんてこった……子育てに前向きになれる要素がたくさんある。


「まあとにかく君たちを親御さんのところへ送り届けるくらいはしなければならないわけ」


「おれにはもうかぞくはいない」


 さっき家族の敵取りに消し炭に行くって言ってたもんね。

 ……家族の仇討ちでいいんだよね?  


「僕もにたようなものだ。国も家族ももう……」


 え、あ、うん。亡国ってやっぱそういうことですよね。


 そして獣王の子は背中でぐしぐし泣いてるのがわかる。涙も鼻水も気にせず垂れ流しで泣いているのがな。

 泣き終わる頃にまとめて【クリーン】しよう。いまはこのままだな。


「じゃあまとめてうち来なさいな」


 子供らの相手をしていたから気づけなかった。

 意外とお迎えが早かった。


「ばーちゃん、いつのまに」


 ばーちゃんの後ろとなりには澄まし顔のシェヘルレーゼ。


「つい今し方よ? シェリーちゃんがとーっても頑張ってくれたのよ?」


 そうですか。

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