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133 行き場

誤字報告ありがとうございます!



 シロネとアーシュレシカが集落の代表たちと話し合いを始めた。

 代表たちはシロネから助けが来ると話は聞いていたものの、自分たちが思っていたような救出方法ではなかったため、改めて話し合いがもたれた。


 本当に一瞬で外に出ることができるのか、出た先は安全なのか、住む場所、食料、自分たちの扱われ方などが主な話し合いとなっているようだ。


 俺はそこから少し距離をとり、テーブルセットを出してお茶をする。

 周囲から奇妙なものを見る目で遠目でうかがわれている。

 そのまま遠目でうかがったままでいてくれ。決して話しかけたりしないでくれ。

 いつもながら初対面と何話していいかわかんないからな。

 俺はうまく出せているかは謎だが、気分は話しかけるなオーラを発している。


「なーなー」


 くっ、オーラは出ていなかったか。

 もしくは微弱すぎて効きが悪かったか。きっとそうに違いない。


 集落の子供がローブの袖を引っ張りながら話しかけてきた。


「……なんだ」


「おれたちダンジョンからでれるのか?」


「どうだろうな。大人たち次第じゃないのか?」


 保護者がどうするかで子供の行く末は決まるのではないだろうか?

 保護者からしてこのダンジョンで生まれ育った者は多いようだし。

 デリケートな問題を純真なまなざしで問われても成り行きでここにいちゃってる俺にはテキトーなことはいえませんってば。俺は学習する生き物なのだ。やけくそダメ、ゼッタイ。


「おれはここ出たい」


 お、おう。


「そうか」


 すごい。この年齢でしっかりした意思がある……!

 見た目8から10才くらいだろうか。

 でもこの世界では見た目ってあまり当てにならないって誰かが言ってた。

 長寿種とかいう人種が結構いる。

 身近ではばーちゃんがめっちゃご長寿らしいからな。

 ばーちゃんの年齢とか気にしたことなかった。ばーちゃんはばーちゃんだしな。なんなら名前すらあんまり気にしたことなかったかも。

 妹が母さんからばーちゃんの名前を聞いているのを聞いてそのとき目からウロコ的にばーちゃんにも名前があることに気づいた。小六の夏の気づきだった。同時にうちの妹は天才だと確信した。


「ここ出て、おれをここにとじこめたやつらをけしずみにしてやるんだ」


 そう言って自分の拳を気合いのこもった目で見つめるお子様。

 わぁお。めっちゃアグレッシブ。「けしずみ」って消し炭で合ってる?


「閉じ込めた……やつら?」


「うん。貴族におれを売ったやつ。あとその貴族」


 え、やだ陰謀くさい。

 とっても事件臭がする!

 けど気づかないふりしとこ。関わりたくない。そういうのは勇者と賢者と聖女でどうぞ。


「売られたのか? 奴隷?」


 あっ……。暇してたのと急に話しかけられてあせってしまって余計なこと聞いてしまった!

 会話をつなげてしまった! 会話のキャッチボールをしてしまった!

 俺ってやつぁ……! 学習さんどこいったよ?!


「ううん。ほりょってやつだって。でもやっぱり手にあまるっていわれてここにおとされたんだ」


 マジすっごい波瀾に満ちた人生すぎない?

 そしてすっごい悪運。

 他人事ながら涙でそう。よく生きててくれたよ。まっすぐに育ってくれたよ。……消し炭方面に直通してるけど。


 しかし「ほりょ」って捕虜だよな?

 戦争か? 戦争って言えばばーちゃんが今アレしてソレだけど。

 俺もついこないだアレした黒歴史。


 ちょっとしたパニックに何を思ってかふと、出来心。

 黒歴史がよぎったことで現実逃避したかったのかもしれない。


 ――――――――――

 魔王の子   キララル・ドラクイラ

【精神耐性】【身体強化】【黒火魔法】

 ――――――――――


 なるほど。

 勇者ハルトが何かやっちゃったかな?

 子供に消し炭にされるようなこと。


 …………。

 え、違うよね?! マジで。

 まさか本当にそんなことないよね?!

 って、俺ぇぇぇっ! 現実逃避できてないじゃないか!

 なんか違う方面で現実逃避できない心配事があああっ!


 これは……見なかったことにするしかない。

 鑑定はよくないよな。

 とくに人物鑑定はよくない。

 こういうことになるから。出来心ってほんっとろくなことにならないな。


「ということはおまえはここで生まれた子供じゃないんだな」


 なんとかひねり出した会話。

 べつに聞きたいわけではないのに何を聞いてんだ俺は!

 パニックが過ぎるだろう?!


「うん。おれがもっと小さいときにひとじちにされて、そのせいで父上がころされて、城に知らないやつらがたくさんきて、それで、それで……」


 涙ぐむ子供。

 当時のことを思い出したのかも。

 謀反か戦争か知らんけど、それに利用されたのか。


 しかし「もっと小さいとき」ってことは少なくとも一年以上は前のこと。

 ……この子の不運の原因が身近な勇者さんじゃなくてよかったぁぁぁ! この子の状況としてはよくないことかもしれないけども。

 切なさと安堵感がごちゃ混ぜな感じが俺の情緒を不安定にさせてくれる。

 今なら大船感を出してしまいそうになる。

 こっから出してやんよ! とか、いくとこないなら俺んとこ住むか? とか余計なこと言いそうになるけど、ぐっと黙っておく。


 黙った俺に何を思ったのか、子供が俺の腰に抱きついてじわりと泣きはじめた。


 えー……。


 それを周囲で見ていた他の子供が一人、また一人と寄ってきて、さらに抱きついてきて、俺を中心にしてみんな泣き始めた。ざっと十人は超えている。


 えぇええ……。





「子供たちがご面倒をおかけして申し訳ございません。妖精族の方がいらして安心したのでしょう。我々大人たちの張り詰めた雰囲気が日常化していて、子供たちもずっと不安だったのだと思います」


 いいえ。何らかの聖女スキルが影響を及ぼしているだけですよ。

 とは言わず、アルカイックにスマイルしておく。


 泣き疲れた子供はそれぞれの親が引き取った。

 親の迎えが来なかった子供数人はまだ俺のそばにいて、うとうとしている。


 ちなみにまたうっかり学習を忘れて出来心で鑑定してしまった結果、親の迎えがなかった子供は魔王の子の他、獣王の子と異世界転生者(元日本人・現亡国の王子で幼児)だった。


 ……突っ込みどころと訳ありが過ぎるだろうっ!

 なんなんだよあの貴族!

 ナンでナンなんだよ! ……訂正。マジでなんなんだよ!


 とりあえず、他の子にはナンでここにいるかは聞かず、そっとしている。藪蛇ってのはこわいものだと記憶しているからな。

 けどまあアレだよな。転生幼児には普通にじっと見つめられてるけどな。

 普通に疑われている。さっきまで周囲の子供たちに混じってめそめそと泣いていたくせに、途中ではたと気づいて俺を観察している。

 やはり幼児転生すると感情に流されやすいとかあるんだろうか。

 早めにハルトに連絡してハルトのパーティーメンバーの転生者に預けた方がよさそうだよな。


 魔王の子と獣王の子はばーちゃんにパスだな。

 ばーちゃん魔王とか陰口たたかれてるけど、まさかばーちゃんの子とかではないよね?

 いやいや、俺は何も見てないことになってるんだからそんなの気にしないでパパッと丸投げでいいんだよ。きっと大人たちがなんとかするって!


「セージ様、ここの皆、ここダンジョンから出て新天地で暮らしたいそうです」


 さっきまで大人たちと話し合っていたシロネがよそ行きの話し方で結果を報告してくれる。


「新天地? それぞれの国ではなく?」


「はい。ほとんどが獣人国出身者ですが、獣人国は食糧不足でダンジョン都市には出稼ぎにきていたそうです。なので特に思い入れがある場所というわけではないと」


 俺たちがいたダンジョン都市の山を隔てた向こう側が獣人の国で、船でこの国に来てダンジョン都市で稼いでいたらしい。

 人族優位の国とわかっていて、扱いがひどかろうが仕方ないと思えるくらいには食料が不足しているそうだ。


 西大陸は比較的食料は安定していると言っても地域差はあったみたいだ。

 それが獣人国だったか。

 ダンジョン都市でも冒険者として稼いでくれる獣人をしれっと受け入れていたようだけど、それでも人族より扱いはひどかったか。


 出稼ぎで来て、そのうち人族より稼ぎがよくなると領主館に呼ばれてこのダンジョンに落とされてさよならまでが流れになっていたようだ。

 他にも都合の悪い人材をこのダンジョンに落としていたようだけど。


「ララリエーラ様に連絡をしました。『もうちょっと待っててねー』だそうです」


 アーシュレシカが俺の隣に来て堂々とドヤ顔で報告してくる。意味がわからない。でもばーちゃんのモノマネはすごく上手い。

 まさかそれを褒めろってことなのか? まさかな?


「え、ここで?」


「はい。ここで」


 気が進まないけど、ちょっと待ってるだけでこの事態が収まるなら待つのも吝かではない……か?

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