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127 噂の麗人とポンコツの理由、それは

誤字報告ありがとうございました!!

 

「アイラは何してたんだ?」


 俺の質問に、アーシュレシカが部屋付きメイドさん達に聞こえないようにコソっと教えてくれる。


「領主城に潜入中だったようです」


 絶妙なタイミングだったなあ?!


 アーシュレシカから詳しく話を聞くと、ティムトとシィナが現在ダンジョンに潜っていることもこの件に関係している。


 4日前、シロネはアリストリアさんとアリストリオ商会にて商談中、領主の騎士達に踏み込まれ、そのまま領主城に連れていかれた。

 タイミング悪く、同じく4日前、シロネがアリストリアさんと商談中にアイラは販路を広げようと、領主の好みなどを調べるべく、まずは領主城に潜入したそうな。


 アホか。

 まずは潜入とかアホか。

 どこの隠密だ!

 商人のやり方じゃねえだろ!

 シロネから何も学んでねえじゃねえか!


 そのアホからの情報によれば、領主は最近巷で話題になっている二人の商人に会ってみたいと思っていたところ、ちょうど二人一緒にいたので城に連れてきた、みたいなことを言っていた。

 連行とか強制という言葉が付くような連れてき方だったようだが。


 アリストリアさんの方は、もともと細々と食品や日用品を売っているこの町では古株の商会が、急に北大陸の装飾品を扱うようになったことに興味を示したようだ。北の装飾品も欲しかったっぽい。


 シロネの方は俺にくっついてきた商人として認識されていたっぽい。

 俺のことはここにきてじわじわと噂になっているらしい。

 ここに来る道すがら奇跡のように人を癒し、蘇生させる聖なる麗人がいる、と。


 麗人……。

 報告する側のアイラの主観が入ったのか、報告を受ける側のアーシュレシカの謎のリップサービスか、この大陸人における謎の美醜センスのなせる噂なのかもしくはそのすべてか。

 この大陸の人たちの美的センスは諦めるとして、久遠の騎士の忠誠度が変な方向にも伸びているのが憎らしい。

 恥ずかしいのを通り越して諦観できる。


 話を戻そう。

 領主は俺にも興味を持ったし、利用したかったが生憎探してもいなかった。

 領主側の情報では獣人の冒険者と子供二人が俺に付いてきていたのを知っていたので、手っ取り早く脅して従わせた。

 その時既にシロネとアリストリアさんは拉致された後だったのでチョロかったようだ。


 子供たちはともかく、北の冒険者たちはシロネの強さをわからないので純粋に心配してくれたんだろう。

 その気持ちに子供たちが引っ張られたのかな?


 冷静に考えたらシロネには結界付いてるし、そもそもレベル2000超えてるし、抵抗しようと思えば、たとえアリストリア商会の人たちを守りながらという縛りがあっても余裕でできただろう。


 それをシロネがしなかったのは何故か。

 ずばり様子見だろう。

 堂々と、まではいかないにしても領主城に入れる。

 それにずっとこの町に住むアリストリアさんたちアリストリオ商会の人たちが不利にならないように、かな?


 で、北の冒険者達と子供達を脅してまで領主は何をさせているかといえば、鉱石ダンジョンでの採掘。

 鉱石ばかりが出るダンジョンだから通称鉱石ダンジョン。何を倒しても魔石プラス鉱石が出る。

 階層により出る鉱石や鉱石の大きさが違うし、ダンジョン内の山や壁を掘っても鉱石が出る。

 そこで魔鉄やミスリルを採掘させている。


 ちなみに鉱石ダンジョンではゴーレム系の魔物しか出ないんだって。


 倒すことは無理でも宝箱くらいはいけるか?

 いや、でもボスを倒すことが前提の隠し部屋とかだったら無理か。コインダンジョンにもそーゆーのあったし。


「あの、セージ様?」


 宝箱について考えていたら部屋付きメイドさんが不安そうに声をかけてきた。


 シロネ達の心配より宝箱に意識がいくのは仕方ないんだ。

 レベル2000が領主勢力にどうにかなるとは思えない。それに北の冒険者はともかく、今頃子供達は楽しそうにゴーレム倒したり穴掘りしてるに違いない。

 なんかのゲームとか思ってそうだよな。

 子供達はシロネが普通に強いこと知ってるし。

 俺も海底ダンジョンで何度かシロネが戦ってるの見てたし。

 うん。シロネなら大丈夫だな。

 問題があるとすればアイラか。

 どうか余計なことをしませんように。


「ああ、はい。なんでしょう」


「その、不穏な事が聞こえてしまったのですが、大丈夫なのでございましょうか?」


「あ、そう……ですね、領主案件のようですし、この宿にご迷惑ですね。すぐにチェックアウトします」


「いえ! そうではございません。犯罪者ならともかく、セージ様方はただ珍しいものを扱う商人なのでございましょう? それとセージ様は上級治癒師であるとの噂を聞きました。先々の村や町で沢山の人々を助けたと。そのような方に対してこちらから追い出すようなまねは致しません」


「しかし、領主から圧力がかかればどうにもならないのでは?」


「当宿は商業ギルドの直営でございます。身分や金額によりできるサービスに区別はしておりますが、権力による圧力は受け付けておりません。そしてこの部屋は上客に対する部屋でございます。他の宿よりはセージ様方をお守りすることができるはずでございます」


 へー。

 そーなんだ。


 俺がバカっぽく納得していたら、アーシュレシカが賢い質問をする。


「領主がカネを積んで我々を出せと言ってきたらどうするのです?」


 あ、うん、それがあったね。


「犯罪者ならまだしも、当宿のお客様であるかぎりそのようなことはいたしません」


「わかりました。ではもうしばらく滞在させてください」


 とアーシュレシカが返事をする。


「承知しました。アイラ様からは既にひと月分の支払いを受けておりますのでまだまだ余裕がございますよ」


 部屋付きメイドさんは最後に茶目っ気たっぷりな笑顔でそう答えてくれた。





「さて、どうするか」


 ダイニングからリビングに移り、だらしなくソファーに横になりながらつぶやく。


 ちなみに部屋付きメイドさんは控えの間に待機。

 リビングには俺とアーシュレシカだけだ。

 鳥と犬(シエナとテンちゃん)?

 どっか行ってるなあ……。


「どう、とは?」


 俺のつぶやきにすかさず相づちをくれるアーシュレシカ。


「シロネと連絡は取れる状態なのか?」


「スマホによる文字でのやり取りなら可能です」


「なるほど。俺が行った方がいいのか、シロネに何か目的があってあえて監禁を受け入れているのか聞いてくれ。あと子供達に北の冒険者達と一緒に一旦帰ってこいと」


「承知しました」


 貴族だから平民を好き勝手していいのかも知れないけどさー、一応こっちは他国出身なわけよ。

 俺に限っては異世界だしな。


 シロネに対しても、シロネにかこつけて北の冒険者達やティムトとシィナに対して命令している感じも、なーんかモヤっとイラっとするよね。


 そもそも商人を拐うように連れ去るのは良くないんじゃない?

 商人ギルドに報告するか?


 ……そうなるとアイラの領主城への不法侵入がネックになるか?


「てかそもそもアーシュレシカはリアルタイムでアイラと情報共有できるはずだよな? ダンジョンの影響で共有できなかったのか?」


「………………いえ、その。久々にセージ様と居れるのが嬉しくて舞い上がって、それを一人でしばらくかみしめたくて共有を怠っておりました……」


 恥ずかしそうに口元を手でやんわりおさえ、もじもじと体を揺らしながらそうカミングアウトしやがった。


 そうか、お前のそのちょっとしたポンコツ具合がアイラに大いに遺伝したわけか。

 そしてアーシュレシカのもともとの性格は俺に起因する、と。


 なるほど。

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