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男の甲斐性

「そ、そういえば、リリィ。さっきは良く助けに来てくれたな。もし、あのタイミングでリリィが来てなかったら、俺は(がけ)から飛び降りて助からなかったと思う。だから、お礼がしたいんだ。俺に出来る事なら何でもするから、遠慮(えんりょ)なく言ってくれ!」


軽々しく女の子の身体に触れるという、紳士にあるまじき(あやま)ちを犯した俺は、とにかく誠意を示そうと、そんな提案を口にする。 


これで少しは機嫌が良くなるか? と思いきや、顔を上げたリリィは何故(なぜ)かキョトンとしていた。


俺の意気込みが不思議でならないという様子だ。


「え、えと……。あっ、なるほど、そういう事ですか。あははっ、別に気にしなくても良いんですよ、ハヤト様。固有スキルの効果を聞くなんて、私がマナー違反だったんです。私が露骨(ろこつ)に落ち込んじゃったから、埋め合わせしようと思ってくれたんですよね? 助けて貰った、お礼というのも、私が遠慮しなくて済むようにと、考えて下さった口実でしょう?」


「え? いや、そういう訳じゃないんだけど」


俺は、ただリリィを怒らせてしまったから、お()びがしたかっただけだ。


「またまた〜。そんな風に隠したって、ハヤト様の気遣いは、ちゃんと分かってるんですからねっ」


しかし、さっきまで怒っていた(はず)のリリィは、とても上機嫌に見える。


少なくとも、俺には、この笑顔が演技だなんて、とても思えない。


となると、俺の誠意が別の形で伝わって、その結果として機嫌が直った……という亊なのか?


なんだか良く分からないけど、ここで話を蒸し返しても、お互いに良い事は無さそうだ。


ここは話を合わせておくとしよう。


「……そっか、バレちゃあ仕方がない。どうやら、リリィの目は誤魔化せないみたいだな」


「えっへん。私って昔から人を見る目()()はあるって()められてましたから!」


……それって、()められてるのか?


ま、まぁ本人が喜んでるんだから、わざわざ水を差す必要はないよな。


「……コホン。それはそうと、リリィに感謝してるのは本当なんだ。だから、俺に出来る事があれば遠慮なく言って欲しい」


「うーん、そうですねぇ。……分かりました。あんまり断るのもハヤト様に失礼ですよね。ここはありがたく御言葉に甘えさせて頂きます」


「おう、甘えとけ甘えとけ。ただ、値段の張るプレゼントとかは、ちょっと待って貰わないといけないんだけどな。なんせ俺、無一文だし」


男の甲斐(かい)(しょう)が無さ過ぎて自分でもどうかと思うし、情けなくて涙が出そうだけど、無い(そで)は振れない。


ここは見栄(みえ)を張らずに、正直に言うべきだ。


それに、リリィは、そんな事で幻滅するタイプでもないしな。

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