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鑑定と幼馴染

「ハーヤトっ、な〜に、ガチガチになってんのさっ」


突然、後ろから何者かに抱きつかれて、思わず前のめりになる俺。


そのまま教会の床に倒れそうになったものの、何とか踏ん張って体勢を整え、後ろを振り返る。 


すると、そこには幼い頃から見慣れた少女の顔があった。


「なんだ、サユリか。……そりゃあ緊張するだろ。なんせ、ステータスとスキルの内容は、これから先の人生を左右すると言っても過言じゃないんだからな」


実際、教会の神父による【鑑定】が終わったクラスメイト達は、自分の能力を他と比べて、一喜一憂(いっきいちゆう)している。


とはいえ、()れ聞こえてくる会話から察するに、極端に弱いステータスやスキルというのは無さそうな感じだ。


まぁ、そりゃそうか。


勇者候補として、わざわざ異世界から呼び出したのが無能だったら意味ないもんな。


きっと、強いステータスやスキルの持ち主を引き寄せる仕組みが出来上がってるんだろう。


周りを見ると、クラスメイト達は自分の能力について自慢げに語っている。


そして、これからチート能力を使って、どんな事がしたいか、妄想(もうそう)(ふけ)っている様子だ。


そして、幼馴染のサユリは、俺の言葉を聞いて、ニヤニヤと意味ありげな笑みを浮かべている。


せっかく美少女なのに、笑顔が完全に悪女なんだよなぁ。


もっと(さわ)やかに笑えば、モデルやアイドルにだってなれそうなスペックなのに、もったいない話だ。


「そっかぁ。そうだよねぇ。もう学校の成績とか、スポーツの実績とか、資格とか、免許とか、親の職業とか、なーんにも関係ない世界に来ちゃったもんね〜。頼れるのは自分のステータスとスキル。後は、せいぜいクラスメイトとのコネくらい……かな?」


「ああ、そうかもな。それで? クラスメイトの大半と仲良くしてるリア充のサユリは、コネに加えて、どんなステータスとスキルを手に入れたんだ?」


「うふふっ。聞いちゃう? それ聞いちゃう? えへへっ、ハヤトには特別に教えてあげるね。私の固有スキルは【死霊(しりょう)使い】って言うんだって! 激レアだけど有名なスキルらしくて、なんと、死んだ生き物をゾンビとして復活させて、仲間に出来るらしいの! 自分で倒したモンスターじゃなくても、ゾンビに出来るって話だから、誰かが倒してくれたモンスターをゾンビ化して有効活用すれば、私自身は戦わなくて良いってワケ! とっても便利なスキルでしょ?」


嬉しそうに自分の能力を語るサユリ。


コイツは昔から人に頼るのが上手い奴だったからなぁ。


ある意味、ピッタリのスキルと言えるだろう。


それでいて利害に敏感で、頼りにならない相手とは、すぐに縁を切るんだけどな。


「例えば数の上限とか、強すぎる相手は仲間に出来ないとか、制限の有無について気になる事もあるけど、確かに便利なスキルだな。ちなみに、ステータスの方は、どうなんだ?」


「うーん、そっちは控えめかな。って言っても、こっちの住人よりは遥かに高い数値だけどね」


「ふーん。まっ、どうせ自分で戦う機会は無さそうだし気にしなくても良いんじゃね? むしろ、ステータスまで高すぎたら完全にチートだろ。もはや、お前だけで魔王を倒せるだろうし」


「あははっ。それもそだね。おっ、話しているうちに、そろそろハヤトの番だよ。私も教えてあげたんだから、ハヤトのスキルとかも教えてよねっ」


「はいはい。その代わり、お前より便利なスキルでも嫉妬(しっと)すんじゃねーぞ」


そんな軽口を叩いて、俺は教会の祭壇(さいだん)で待つ神父の元に向かう。


……この時の俺は、自分が強力なスキルを授かるに違いないと、無邪気に信じて疑っていなかったんだ。

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