シルバーピーチ
「ここがシルバーピーチじゃ!」
荘厳な城を中央に構えた立派な城下町だ。
小さな集落ばかり見てきた駆け出し行商オーガの私は、少し緊張していた。
早速、衛兵が検問した。
「止まれぃ!そこのデカブツ!何者だ!?顔を見せろっ!」
あぁ、やっぱりそうなりますか。
(タロス爺さん、頼みますよ?)
「やいやい!衛兵!ワシを覚えとるか!?」
「うっ!まさか!お前は物乞いのタロス!」
物乞いのタロスは、正しくは物乞いで有名になったというよりお喋りで有名だ。
そしてお喋りも追放の一助にはなっているが。
「何故貴様がいる!?そんなデカブツを連れて、何をする気だ!?」
「だぁまらっしゃあい!!」
「な!?なんだと!?」
衛兵に対する口振りとは思えない。
「お主ら!首領に黙ってワシを追い出したな!?この商人様がワシを救って下さった。そして、ワシを中に入れて下さるのに必要なモノを持っとるよ?」
私はおもむろに手紙を取り出して見せた。
「そ、、、それはドラグニールの、、、」
「悪い事は言わねぇから通しな!お前ら!首領を怒らせたくないじゃろ!?」
私達2人は無事にシルバーピーチの門をくぐった。
「しかし、ドラグニールってのは何なんですか?交通手形みたいなものですか?」
私はタロスに聞いた。
「んなわけあるか。ドラグニールは王の一族じゃよ。その手紙は王族であるか、もしくはその遣いを意味するんじゃ。お前さん、嫌でもこの国に追われるじゃろうな。ガーッハッハッハッ!!!」
「なんですか、それ?私捕まるんですか?」
「それはアンタ、これからの身の振り方じゃろ?」
死体漁りで罰が当たったのだろうか?
それとも、、、
「ワシも久々に酒が飲みたいんじゃ!カネくれっ!?」
「分かりました。私の品を盗もうとした件はチャラです。商売はこれからですし、貴方には助けてもらった、かはどうか分かりませんが、ご足労頂いたので、これでお別れです。」
銀貨5枚を物乞いのタロスに渡した。
「もっとカネ!カネをッ!?」
「これでさよならです。」
この爺さんは少し面白いが一緒に長居するべきでは無い。
周囲には薬屋や鍛冶屋、食品、雑貨、様々な物を扱う店がある。
私は物乞いのタロスと別れ、近くの雑貨店に入った。
「いらっしゃい!って!?デカっ!?」
忘れそうになるが私は人間ではなくオーガ。
人間の作った建物はいささか小さい。
「すいませんねぇ!ちょっと太ってまして!」
私はいつもこうやって魔物独特の体型を誤魔化している。
「サイクロプスの眼、買いませんか?」