売れない眼
セット売りをしようとしても、サイクロプスの頭部と心臓を丸々買う程、村人は私に気前が良く無い。
必ずサイクロプスの眼だけ売れ残る。
サイクロプスの角と頭蓋に関しては、オーガの村で骨細工や武具として拵える需要があるが、眼には何も魅力が無いようだ。
心臓は滋養強壮に良いとされる。
私の在庫には、いつもサイクロプスの眼がストックされている。
村には私専用の倉庫が置かれていて、そこに眼ばかりが置かれている。
サイクロプスの眼球は頭部から引き抜くと何故か腐らない。
当の私自身、サイクロプスの眼球に何か売り出すポイントがあるかどうか、考えてみても分からなかった。
「どうにかならないかね。。。」
私は村で一泊すると、サイクロプスの眼を30、頭蓋5つ、角3つ、心臓1つを売るために、袋に入れて村を出た。
今度こそ売り捌いてみせる!
近くのオーガの村に行った時は誰も買ってはくれなんだ。
誰かいないだろうか?この眼を欲しがる者が。
その頃、彼をメイジと呼んでいた村人が何か騒いでいた。
「村長?よろしいんですかえ?メイジのやつ、『眼』を全部持ち出してましたよ?」
村長と呼ばれたオーガは老獪な戦士だが、彼自身100以上のサイクロプスを闘って倒してきた。
彼の持つオーガメイスには、加工された眼球が4つ嵌め込まれていた。
「どうせ売れやしない。メイジもいつ気付くのだろうな。オーガがサイクロプスの眼球を買ったりしないワケを。」
深い溜め息が漏れた。
「だったら説明してやればよろしいのでは?」
「普通は気付くから言わんのだ。ワシに眼を売り付けた時は、此奴戯けておるのか?とも思ったが、奴は気にせず他のオーガにも売りに行った。誰も買わんのに。」
村人も同意した。
「あれは戦士の強さを表している。故に買ってはならないのだ。強さは買えないからな。。。」
オーガは皆戦士だ。
サイクロプスの眼球は、里長になるために必要な材料であり、勇敢さの証だからだ。
「メイジのくせに魔法を使わず、かといって正々堂々戦って手に入れた眼ではないのだ。買わんよ。」
「眼を潰さず殺す奴の手腕を見てみたいものだ。」