オーガの村で
サイクロプスの頭部、心臓。
これが私の商品だ。
ここ『サイクロプスの森』には、名前の通りサイクロプスが沢山住んでいる。
この森の生態系においてオーガは天敵であり、我々オーガにとってもまたサイクロプスは天敵である。
私達の住む『オーガの村』はきっと奴らからすれば『オーガの森』と言ったところの何処かだ。
オーガの村も沢山あるので、全ては知らない。
オーガの村には縄張りがあるが、行商人の私には関係ない。
とはいえ、私の生まれた村に戻り、そこで得た物を取引するのが常ではある。
サイクロプスの森とオーガの村は境界が近く、常に生命を奪い合っている。
「また、メイジが戻ったか。」
私が村に戻ると、私の事をメイジと呼ぶ。
私には魔法を使う才があったからだ。
しかしながら、オーガには生まれ持った戦士としての力があり、またそれを尊ぶ。
そして伝統と風習により、オーガメイジは成人すると村を追い出される。
何故そうなのかはオーガ族は知らず、ただ何となくやっている緩い伝統と風習であるので、私は追放された身でありながら、村に帰って一泊してまた行商をするので、あまり意味は無いと思われていた。
そんな事で村人は私をメイジと呼んでいる。
「サイクロプスの目玉、角、頭蓋、要らんかね〜?今なら頭ごと心臓もセット売り〜。安いよ安いよ〜。」
早速、商品を売り出す。
「おい、メイジ、またサイクロプスか。1匹減らしたって事だな。」
「冷やかしはやめて、商品を買ってくれ。」
村でサイクロプスを一人で倒せる者は少ない。
しかも大抵のオーガはサイクロプスの眼を狙って殺す。
故に無事な眼が少なく、こうして売りに出される。
「すまねぇなメイジ。じゃあ角を買ってくよ。」
「山芋5つと、緑紅葉30枚ね、毎度あり。」
サイクロプスの角が売れ、当面の食い物は手に入った。
オーガの村に現金収入は無い。