サイクロプスの森
「アグァァァァァッッ!!!」
ドン!!!
森が揺れ、驚いた小鳥達が鳴きながら飛び去る。
暴れる魔物は『巨人』と呼ばれたり、『サイクロプス』と呼ばれたり、はたまた『頭でっかち』やら、人間から様々な呼び方をされているやつだ。
一つ眼で、粗末な棍棒を振り回し、生きている物なら何でも追い回す。
その一撃を喰らった生き物は骨を砕かれて吹き飛び、怪力でバラバラに引きちぎられ食われる。
そして、なぜこの魔物は暴れているのか?
その原因は私だ。
「まったく、相変わらずバカみたいに単純で助かりますよ。」
私は名も無き魔物。
種族の呼び名はあるが、そこまで特筆すべき点のある魔物ではない。
私自身も人間から『巨人』と呼ばれたり、『サイクロプス?』と呼ばれたり、『とにかくデカいやつ』と呼ばれたり、心外なものだ。
一つ眼ではないし、大きさもヤツより無いが、人間からすれば大した違いは無いのかもしれない。
ただし、口は利けるし頭もそれなりに回る。
ちょうど今しがたヤツが私の策に陥るところだ。
『アグァッ!?』
私が撚り編んだ、頑丈な蔓のロープ。
それで作られた罠ですっ転ぶ巨人。
予め地面に埋設した、鋭利な杭に突き刺される巨体。
『アグァッ!?アグァッ!?』
サイクロプスは悶える。
私は素早く近付き、その生命を終わらせる。
「さようなら」
斬り落とされた頭部を掴んで粗末な袋に入れた。
「仕事も終わりましたし、行きますかね。」
これが、私のいつもの生活だ。