4−37話:空 side
「ふいー……あったまるぅ」
氷華ちゃんに誘われて、一緒にお風呂に入る。
浴室は少し広めで、二人で入っても全然余裕がある。
楽しくお話をしよう。と、思ったけど……
「ん?どうしたのくーちゃん」
「……氷華ちゃん、意外と胸あるよね」
「そう?雪ねぇには負けるよ」
「っ!い、今先輩の話はしてないでしょ!」
「えー、どうしたのくーちゃん。顔真っ赤ぁ」
絶対からかってる……わかっててそんなこと言ってる。
私はまた肩まで浸かって、お湯をぶくぶくさせる。
そういえば、今までずっと先輩にばかり目を向けていたけど、こうやって改めて氷華ちゃんをみると、すごい美人さんだよね。のほほんとしてる感じが、ちょっと色っぽく見える。
「ん?なーに」
「氷華ちゃん、中学のときモテたりした?」
「告白されたって、こと?」
「うん。私は中学からずっと女子校だったから。男の子は小学生の時しか話したことないから。思春期で男の子接触ないから」
小学校の時、いいなって思う男の子はいたけど、結局は幼い頃のちょっとした勘違いのようなませた感情。思春期を迎えたときに、ちょっとだけ理性的なものとは違う。
先輩に恋をした時、その時の感情は恋ではなかったと、そう思った。
「んー、なんかいかされたけど、全部断ったよ」
「え、なんで!」
「だって、好きじゃないから。告白された相手には、話したことがない人もいたし」
「……好きな人とかいたの」
「ううん。いなかったよ。ただね……」
少しだけ考えた後、氷華ちゃんは浴室の方をみる。
私もそっちをみるけど、特に人の気配はないし、誰もいないのにどうしてそっちをみるんだろう……
「他の男の子より、雪ねぇの方がかっこいいから」
「……そっか」
妹ではあるが、氷華ちゃんには他の男の子よりも先輩がひどく魅力的に見えたのだろう。
きっと、氷華ちゃんが好きになる相手は先輩と同じぐらいか、それ以上にかっこいい相手なんだろう。
(居なさそうだけどなぁ……)
一応今まで出会った中で、そんな人がいただろうかと考えたけど、思い当たらない。ただそうだな……性別を男だけに絞らなければ……
「くーちゃん、洗い合いっこしよ」
「え、あ……いいよ」
「えへへ。雪ねぇ意外とするの初めて」
「痛くしないでよ」
「はーい」




