4−36話:空 side
「さぁさぁ、たーんと召し上がれ」
あの後、ちょっとぎこちなく、気まずい雰囲気の中、三人で話をした。
チラチラ先輩のこと見てたけど、目があった瞬間恥ずかしくなってすぐに目をそらしてしまった。
あの時のことを思い出すとすごく恥ずかしくなるけど、別に変なこと、おかしたことをしようとしたわけじゃない。
恋人同士なら、あれは普通のことなんだ。
そんなことを考えながら話をしていると、あっという間に時間は経って、夕飯の時間になった。
先輩のお母さんに呼ばれて下に行くと、テーブルにはたくさんの料理が並べられてる。
「わー、すごいご馳走だぁ」
「お母さん気合い入れたね」
「おばあちゃんも手伝って、二人で頑張ったのよ」
私が伝えた料理はもちろんだけど、普段食べないようなものもある。
すっごく美味しそう。
「さぁ、空色ちゃんも座って。みんなで食べましょう」
「あ、はい」
座る場所はみんな決まってるようで、私はどこに座ったらいいのかわからず、テーブルの側にアワアワしていた。すると、先輩が隣にくるように手招きをしてくれた。
先輩と氷華ちゃんに挟まれての席。ちょっと緊張しながら手を合わせて、一番近くにあった料理に手を伸ばして、一口食べる。
「どう?」
「美味しいです。すごく」
私や、お母さんが作るのとはまた違う美味しさがあった。すごく優しくて深い感じ。なんだかとても落ち着く。
「嫌いなものがあったら言ってね。そこ聞きそびれちゃって、好きに作っちゃったから」
「特にはないです。ありがとうございます」
「いいのよ。とは言っても、空色ちゃんのお母さんには敵わないけどね。さすがにプロには負けちゃうかな」
あはは、と笑う先輩のお母さん。
まぁ私のお母さんのことを知っていても驚きはしなかった。
お昼の料理番組にも出てるし、本とかもあったりするから、主婦のほとんどの人が知ってる。
「そんなことないですよ。とても美味しいです」
「あはは、ありがとう」
「よければ、興味があるレシピがあれば母にコツを聞きますが」
「え、いいの?」
「はい。お力になれるのであれば」
少しずつ少しずつ、私は先輩と氷華ちゃんと話すように、家族の方達と話をする。
みなさん優しくて、その優しさは二人と同じものを感じる。それを感じるとやっぱり先輩たちの家族だなって伝わってくる。
「ごちそうさま。空色ちゃんのお菓子とっても美味しかったわ」
「あ、ありがとうございます」
「ぜひとも今度レシピ教えて。仕事先に作って持って行きたくて」
「は、はい!わかりました!」
食事の後は、私が持って来たお菓子を皆さんに食べてもらった。
簡単なものだったけど、喜んでもらえるかなってすごく不安だった。
ハラハラドキドキしながら感想を待っていると、目をキラキラして大絶賛してもらえた。
「くーちゃーん。一緒にお風呂入ろう」
「あ、うん。いいよ」




