4−33話:雪 side
「ただいまー」
「お、お邪魔します……」
氷華を見送った後、私たちは家の中に入る。
今日は日曜日だからお母さんもお父さんも家にいる。家族が揃うのは久々で嬉しいけど、まさかそんな日に突然、空色を誘うことになるとは……なんか、結婚前の挨拶みたいだな……
「あ、これ……」
不意に、後ろから空色のそんな声が聞こえて振り返ると、彼女の視線は玄関先においている水槽に注がれた。あぁ、気づいてくれたんだ。
「夏祭りの時の金魚。ちょっと大きくなってるでしょ」
「確かに。二匹ともすっかり別人ですね。でも、仲良くしてるみたいですね」
「うん。よく共食いするって聞くけど」
「え!」
「プッ!冗談だよ」
まぁ知り合いの家の金魚はそうだったらしいけど、言わないでおこう。怖がらせたくないし。
「仲良しね」
不意に聞こえた声に、私も空色も肩をあげた。
視線の先、リビングから顔を覗かせるお母さん。きっと、声は聞こえるのに全然こないから様子を伺っていたのだろう。
ニヤニヤするお母さんにムッとしながら、私は先に中に入る。空色も少し慌てながら私の後に続いて中に入って行く。
「初めまして。空色ちゃん、よね」
「あ、はい。は、初めまして!桜和空色と言います。きょ、今日はお邪魔します」
「まぁまぁ。雪凪、この子すごい可愛い。何、この小動物」
「お母さん落ち着いて……あと、興奮して私の体バシバシ叩かないで」
お母さんの気持ちもわからなくもないけど、なんていうか恥ずかしい……もう、はしゃいでるのが丸わかりで、本当にもう恥ずかしい。
「さぁさぁ入って。あ、今日は家族全員集合なのよ」
本当に嬉しそうにあ笑うな、お母さんは。まぁうちにはいないタイプだからね。そりゃあ嬉しいでしょうよ。
お母さんの後に続いて私たちはリビングに入って行く。
部屋の中には、少しソワソワしながら新聞を読む父と、霜汰を抱きかかえるおばあちゃんがいる。
「おや、来たのかい」
「えぇ。空色ちゃん、私の母よ。で、あっちにいるのが私の主人。母が抱きかかえてるのが息子の霜汰」
「あ、は、初めまして。桜和空色です。よろしくお願いします!」
さっきと同じように少しあたふたしながら挨拶をする空色。
お父さんは軽く会釈をして、おばあちゃんは優しく「よろしくのう」といって、霜汰は手にしてるおもちゃに夢中になっていた。
「ねぇ、空色ちゃんは何が好き?」
「え?」
「何か食べたいものがあったら遠慮せずにいうんじゃよ」
「え、えっと……」
最近はすっかり忘れていたけど、空色は元々人見知りだから、うちの家族になれるのに少し時間がかかるだろう。
ワタワタと焦りながらも、好きなもの、食べたものを答える空色。それを聞いたお母さんは目を輝かせて「任せ!」と声をあげる。
そして、さっきからこっちをチラチラ見ている父の腕を引っ張って、二人で買い物に向かった。
お父さん、若干居心地悪かったというか、声かけられる感じじゃなかったから、それに気づいたお母さんなりの気遣いみたいなものなんだろう。
「おばあちゃん、私たち部屋にいるから霜汰のことお願いしていい?」
「はいはい。ゆっくりして行くんじゃよ」
「空色、行こうか」
「あ、はい」
私は部屋を出る。空色はおばあちゃんに軽く会釈をして




