4−32話:空 side
「ん、雪ねぇおかえり」
駅から歩いて十数分。先輩の家に着いたけど、玄関の前に氷華ちゃんがいた。
「あ、くーちゃんもいらっしゃい」
「うん。何してるの?」
「ワン!」
訪ね終わったタイミングでその鳴き声が聞こえた。よく見ると、座り込んでる氷華ちゃんの前に小さな犬がいる。あ、もしかして話に聞いたペットの。
「ヒエムス、お客さんだヨォ。ご挨拶はぁ?」
「ワン!」
小型犬。確かチワワとダックスのミックスだっけ。わぁ、可愛い。
猫派だけど、犬も嫌いじゃないし。触りたいなぁ」
「ひょ、氷華ちゃん。触ってもいい?」
「んー?いいよぉ。寧ろ触ってあげてぇヒエムスはね、人間大好きだから」
氷華ちゃんに抱きかかえあげられたヒエムスちゃん?かな。性別わかんない。
まぁどっちでもいいけど、舌を出しながら私の方を見て来る。すっごい目がキラキラしてる。
恐る恐るだけど、私は手を伸ばして頭を撫でてあげる。わ!すっごい尻尾降ってる。
「嬉しそうぉ」
「気に入ったみたいだね」
「もふもふだぁ」
触り心地いいなぁ……どうしよう……犬もいいなぁ……。
「っと、ここにずっといたら迷惑になるし、そろそろ中に入ろうか」
「は!す、すみません」
「いいって、気にしないで。氷華は散歩?それとも帰ってきたところ?」
「ううん、今から行くとこだよぉ」
のんびりとした口調の氷華ちゃん。抱えていたヒエムスを降ろして、首輪にリードをつけた。
「よし。一時間で戻って来るね」
「気をつけて行くんだよ」
「はーい。ヒエムス行くよー」
「ワン!」
るんるんでそのまま氷華ちゃんは散歩に向かった。なんだか楽しそうだな……
大の犬好きだと知ってはいるけど、実際に犬といるところ見ると確かにって感じがする。氷華ちゃんの知らない一面が知れたな。
でも、もっと触りたかったな。帰ってきたらもうちょっと触らせもらおうかな。
「さ、中に入ろう」
「わっ!」
不意に、先輩がそう言いながら私の頭を撫でてくれた。
突然のことでびっくりしてしまって、どうしたんだろうと思って顔をあげると先輩が笑っていた。もしかして、私が落ち込んでると思ったのかな?
「……はい」
やっぱり、先輩は優しいな。そういうところも、すごく好き。




