4−31話:雪 side
「えっと……」
「空色」
「あ、先輩」
文化祭の翌日、私の家の最寄り駅。
昨日の去り際、私は空色を家に誘った。別に下心があると言うわけではない。いや、ないわけでもないけど……他意はない。
だって、付き合うことができたけど休みを二日も挟んでしまう。会おうと思えば会えるけど、なんと言うかちょっと気まづいと言うか……
いや、よくよく考えればお泊まりの方がデートに誘うよりハードル高いような……
「先輩?」
「え、あ……ごめん。気にしないで」
何はともあれ、空色がお泊まりをOKしてくれてよかった。
夜に春歌さんに聞いたら「すっごい楽しみにしてるよ」なんて連絡がきて、私もより一層楽しみになった。
「荷物持つよ」
「あ、ありがとうございます」
「ん……甘い匂い……ケーキ屋さんでも寄った?」
「いえ。ちょっと早起きしてしまったので、お菓子を作ったんです。お口に合えばいいんですが……」
「わぁ、ありがとう。嬉しいよ」
空色のお菓子はどれも美味しいし、嬉しいな……
早起きしたって言ってたけど、もしかして楽しみだったからって……これはちょっと期待しすぎかな。
「それじゃあ行こうか。ここから少し歩くから」
「あ、はい」
家までの道のり、たわいない話をした。内心は結構ドキドキしていて、声が上ずったりとか表情に出てないかなって不安になってしまう。
「急に誘ってごめんね。迷惑じゃなかった?」
「いえ、そんなことないです。そ、その……」
「ん?」
「むしろ、嬉しかったです……本当は、私も先輩と休みに会いたかったので……」
「そ、そっか……」
モジモジと、顔真っ赤にしながら空色がそんなこと言われて、私の心臓が激しく動く。
かおに熱が集まるのがわかる。きっと私も今の空色みたいに顔が赤いだろう。
いつも通り、笑顔で「そっか」とか「嬉しい」って言えればよかったけど、私はすっかり空色を好きすぎているため、そんな余裕は当然ない。
「寧ろ、先輩の方こそ大丈夫ですか?ご両親にその……急に泊まりに来るって」
「あー……それに関しては大丈夫。寧ろ私の方が謝らないといけない……」
「え、どうしてですか……」
「実は……」
出来事は昨夜のことだ。
家族全員が揃ってる場で氷華が私と空色が付き合ってることを口にした。
普通なら女性同士であることに対して抵抗があるはずだろうに、なぜかうちの家族はハイテンションだった。
「めでたい」なんて言われて、その日は赤飯になった。
帰ってきた私は両親にどう話そうか迷っていたから、寧ろこんなハイテンションで喜ばれたら、悩んでいた私が馬鹿みたいだ。
ついでと言わんばかりに明日泊まりに来ることも言えば、おばあちゃんが「じゃああしたも赤飯じゃのう」なんて言った。おばあちゃんまで……なんて、頭をまた抱えてしまった。
「歓迎してもらえてるみたいでよかったです」
実際そのことで頭が痛かったけど、空色のそんな反応を見たら色々とどうでも良くなった。
それに、悩む必要なんてない。両親が私たちの関係を認めてくれている。それだけ私はすごく嬉しい。
自然と、私は空色の手を握る。
手を繋ぐことなんて珍しいことでもないのに、ひどくドキドキする。
緊張とかそういうのではなく、心が満たされるような少しだけ痺れるような苦しさ。




