4−30話:空 side
「あー、楽しかった」
「ねー」
文化祭も終わり、グラウンドのキャンプファイヤーが消えるのを合図に、生徒たちはみんな帰っていった。
「はぁ……文化祭終わっちゃったね……」
「そう、ですね……」
私と先輩も一緒に帰っていて、でもちょっとドキドキしている。
氷華ちゃんは気を利かせてくれたのか、別の子と帰っている。
先輩と帰るのなんていつも通りのはずなのに、お互いの気持ちが伝わって、ちゃんと付き合う。って形になった瞬間に少し気恥ずかしい感覚に襲われる。
だからだろうか……私はもちろんだけど、先輩も口を開くことができなかった。
だけど、しっかりと手は繋いでいる。ちょっと気恥ずかしいけど。
「じゃあ、私はここで」
そしていつも通り駅で別れる。あしたは日曜日でお休み。月曜日は平日だけど文化祭の振替休日でお休み。
会おうと思えば会えるのだが……私は「会いたい」と先輩に言えなかった。
いつもの、迷惑かな。嫌じゃないかな。そんな理由だ。
「じゃあ」
「え、あ……はい」
やっと付き合うことができたのに、二日も会えないなんて寂しい……先輩ともっとたくさんお話ししたい。もっと先輩と一緒にいたい。もっと……
“会いたい”その四文字が口にできない。素直にならなきゃ、ちゃんと先輩に言わないと……
「先、輩?」
そんな風に悶々と考えていたのに、なぜか先輩はそこから動こうとしなかった。
不思議に思いながら顔を上げれば、何かを考えているようなそぶりを見せた。
なんでもいい。まだ一緒に居られるなら。
一歩、先輩に近づいた瞬間に、彼女が私の方に振り返った。
「明日、うちに泊まりに来ない?」
「……え?」
あまりにも突然のお誘いに、私は素っ頓狂な声をあげてしまった。




