4−28話:空 side
「私、空色のことが好きだよ」
歌詞を込めた言葉は私の素直な気持ち。
先輩に対しての”好き”という気持ち。それは、先輩後輩の行為ではなく、恋心。
初めて先輩のステージを見てから抱いていた気持ちを、歌詞という形ではあったが、やっと伝えることができた。
そして、先輩からの告白の言葉……ぎゅっと胸の奥が締め付けられるような感覚。
「う……ひぐっ……う、う……」
嬉しくて涙が溢れる。
だめだ、ちゃんと言わないと。泣いてるだけじゃ、先輩には伝わらない……
精一杯の笑みを浮かべた。
「私も、ずっと先輩のことが好きでした……」
やっと、やっと言うことができた。
片想い続けて半年以上……あの日の私は絶対にこうなるとは思ってもなかっただろう……ただ、歌詞を送るだけで十分だった。受け取ってもらえるだけで良かった。
だけどあの日……
———— みつけた
あの日、から私の世界は変わった。
先輩と話すようになって、お出かけするようになって、一緒に曲を作って……
いつの間にか一緒にいるのか当たり前すぎた。だから、すごく期待した。ダメだってわかっていても。自分が嫌になるぐらい期待して……苦しかったりもした。
だけど、先輩はずっとそばにいてくれた。嫌な顔なんてしなかった。優しかった。だからなおさら私は先輩に期待して、そしてどこかで「このままでもいい」とも思った。だけどやっぱり、私は先輩が好き。この気持ちをどうしても先輩に伝えたかった。
事細かに、詳細に伝えることができない。私自身の口から出てくるのはたったふた文字だけだ。じゃあ、どうすれば先輩に伝わるか……
伝え方はいつも通り。
「好きです……好きです……大好きです……」
私が先輩に伝えたかった言葉。そして先輩はその言葉に対しての返事を歌で伝えてくれた。
泣いちゃダメだってわかっていたのに、先輩が歌を歌うたびに伝わってくる感情に、私はただただ泣くことしかできなかった。
感動以上に、嬉しさが……
「もう、泣かないでよ」
優しく、先輩が私を抱きしめてくれる。
あぁ、なんて暖かくて、満たされるんだろう……
不意に聞こえるチャイムの音。少しだけ重たい鐘の音が、校舎に響き渡る。
それは、文化祭終了を伝えるものだった……




