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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
4章:夏は溶け、秋空に歌う彼女の恋
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4−22話:空 side

「おぉー」

「もうこんなに人が……」


氷華ひょうかちゃんと着替えを済ませてメインステージに来たけど……もうすごい人が集めっていて、前の方にはいけない状態だった。

ステージから今私たちがいるところはだいぶ離れているし……これじゃ先輩の歌声は聴けても、先輩の姿を見る事は出来ない。


「どうしよっか、くーちゃん」

「これ以上前に行けないんじゃ、ここで聞くしかないよ」


私が着替えをモタモタしてたせいで、こんなに後方に……こんな事なら、恥ずかしくてもあの服装で来るべきだった……


「こういう時、身長低いの嫌だよね」

「そうだね」


私も氷華ちゃんも背伸びをしながらステージの方をみる。

だけど、当然長時間も爪先立ちなんてできる筈もなく、ずっと唸りながら背伸びをする。


「はぁ……疲れた……」


ピロンッ!


「ん?……あ、お姉ちゃんからだ」

春歌はるかさん?」

「うん。えっと……ステージ横までおいで。だって」


なんでお姉ちゃんがこんなメールを送って来たかわからないけど、とりあえずステージ横まで氷華ちゃんと少しだけ小走りで向かう。


「あ、空色!こっちこっち!」


ステージ近くに行くと、お姉ちゃんが私たちに少し激しめに手招きをしてる。

お姉ちゃんだけだと思ってたけど、側にはうちの学校の生徒さんがいる。

ループタイの石の色が青色……三年生だ。なんでそんな人とお姉ちゃんが一緒にいるんだろう……


「えっと……」

「春歌さん。そちらの、先輩さんは?」


私がチラチラ先輩の方を見てるのに気づいたのか、代わりに氷華ちゃんが聞いてくれた。


「あぁ、この子は夏川なつかわ流々(るる)。この学校の副会長で、うちのバンドメンバーのなずなの妹」

「薺、さん?」

「ほら、ベースの」

「初めまして、如月きさらぎさん、桜和おうかさん」


なぜか副会長……夏川先輩が私たちのことを知っていた。

どうも、副会長という立場上、生徒の間や先生の間で有名な生徒のことは覚えているらしい。ただ、私の場合は夏川先輩の姉である薺さんからお姉ちゃん経由で知っていたらしい。


「それで、えっと……なんで私たちは……」

「一年生の貴方達は知らないと思うけど、メインステージの前の方は予約席と言って、事前に一部の生徒が予約をして特別にみることができるスペースなの」

「は、はぁ……そんなのが、あったんですね」

「言い換えれば、関係者スペースね。優先されるのは、その時間にパフォーマンスする生徒の関係者」

「それで、えっと……なんで氷華達が呼ばれたの」

「喜べ妹組。薺経由で、その予約席に私たち三人が入ることができるのですよ」


にっこりと笑みを浮かべるお姉ちゃんの手には、三枚のチケットがある。

そのうちの二枚を、私と氷華ちゃんに渡してくれた。


「え、い、いいの?」

「十分私たちは関係者でしょ。氷華は妹。空色くしなは曲の作詞をしたし」

「春歌さんは?」

「ん?労働費」


少し悪戯っぽい笑みを浮かべるお姉ちゃん。

私は苦笑いを浮かべるけど、内心すごく嬉しい。

だって、先輩の演奏が目の前で見れるんだから。


「さぁ行こう。今日は特別の日なんだから」


お姉ちゃんの言葉に胸がどきりとなる。

そう。ついに先輩があの歌を歌うんだ……どうしよう……すごく緊張する……


「チケット拝見します」


係りの人にチケットを渡して、私たちは予約スペースに入る。

私たちの他にも、結構な人が予約スペースにはいた。

同級生の子はおらず、周りの人たちは二、三年生ばかりだ。


「一年生?」

「へ、あ……あの……」

「後ろじゃ見えないでしょ」

「一番前に行こう」


見ず知らずの先輩達が、私と氷華ちゃんの背中を押して、一番前まで案内してくれた。

私も氷華ちゃんも少しだけあたふたしながら先輩達にお礼を言って、ステージに目を向ける。

いよいよ、先輩の演奏が始まる……


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