4−20話:空 side
「あ、テーブルの片付け私がやるね」
それからしばらくは忙しさが続いた。
先輩とのやりとりの効果なのか、最初に比べて私もテキパキと動けるようになった。
「桜和さん、氷華ー、ちょっと裏に来てー」
不意に、クラスメイトの子に呼ばれて、私と氷華ちゃんは裏の作業スペースに向かった。
「どうしたぉ?」
「な、何かトラブルでもあった?」
少し不安を抱きながらクラスメイを見ると、急にガバッと!と私たちのことを抱きしめて来た。
「ふぇ!?」
「おー、熱烈ー」
「ありがとう二人とも。もう大丈夫だから、行って来ていいよ」
体を離して、にっこりと笑うクラスメイトに、私と氷華ちゃんは首をかしげる。行くって、どこに行くんだろう。
「如月先輩のライブ、もうすぐでしょ?」
「あ、そうだ」
「もうそんな時間かぁ」
「いい場所なくなっちゃうし、着替えて行っておいで」
くるっと私たちを回転させて、そのままクラスメイトは背中を押した。
「楽しんでおいで。あ、手伝ってくれてありがとね」
「う、ううん。うまくできなくてごめんね」
「メイド服着れたからいいよぉ」
ルンルンでメイド服のスカートをひらひらさせる氷華ちゃん。もう脱いでいいというのなら、私は早く脱ぎたい。また、羞恥心が込み上がってくる。
「あ、ありがとう、ね」
羞恥心でうまくお礼が言えなかった。余計恥ずかしくなって、私は氷華ちゃんの手を掴んで、すぐに着替えに向かった。
(尊い)
(ぐぅかわっ!)
(神様ありがとう!)
そんなクラスメイトの心の声は、当然私の耳に届く事はなかった。




