4−18話:雪 side
「………」
春歌さんがうちのクラスに来てしばらくして、休憩をもらえたから連れられて空色と氷華のクラスに来た。
クラスの手伝いは当日できないと聞いていたのに、なぜか二人は出し物の衣装であるメイド服を着ていた。
不意打ちすぎて、全然話ができなかった。ちゃんと感想を言ってあげたかった……可愛いなぁ
「うちの子可愛いでしょ」
「え、あ……はい」
心の中でそう呟いた瞬間に春歌さんにそう言われたせいで、びっくりして声が少し上ずってしまった。
「そうでしょう」と少しだけ胸を張っていて、どうして春歌さんが自慢げなのだろうかと、思わず笑ってしまった。
「そうですね」
「お待たせしましたー」
メイドさん。空色たちの同級生が注文した品を運んで来てくれた。
お店に出すケーキなどは空色が監督して作ったものらしい。文化祭らしい素朴なものだが、なぜか空色のお菓子と思うだけで胸が踊る。
一口、ケーキを口に運ぶ。口の中に広がる甘さに、思わず口元が緩んでしまう。
「そういえば、普通に連れ出しちゃったけど、ライブの時間は大丈夫なの?」
「あ、はい。集合時間は決めてますし、まだ余裕はあります」
「そっか。新曲は、どう?」
新曲。私が作曲して、空色が作詞した新作。
空色の気持ちが詰まった、曲だ。
頭の中に浮かぶのは、曲の歌詞。空色の心の言葉が綴られた文字の一つ一つが、鮮明に頭から私の胸の中に溶けていく。
「はい。すごくいいものになってます」
「……そっか」
春歌さんはふっと笑って、手にしていたフォークの先を私に向ける。
「ちゃんと気持ち込めるんだよ」
「はい、そのつもりです。ちゃんと、伝わってますから」
「……そっか」
小さくそう呟き、春歌さんは注文したアイスコーヒをストローで飲む。
私も同じように、注文したオレンジジュースをストローで一口だけ飲んだ。




