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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
4章:夏は溶け、秋空に歌う彼女の恋
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4−16話:雪 side

「じゃあ次の方どうぞ。暗いので足下気をつけてください」


今日は文化祭当日。

うちの学校の生徒はもちろん、外部からのお客さんも沢山いる。


「ドキドキするね」

「怖いよぉ〜」


私のクラスは、他のクラスよりもお化け屋敷のクオリティが高くて怖いという評判が出ているらしく長蛇の列ができている。

受付は私を含めて二人だけど、もう一人の子は整列整理を行ってる。


「きゃあああああああああ!」

「わああああああああああ!」


中からは凄まじい悲鳴の声が聞こえる。

これだけ悲鳴あげられたら、お化け役の子たちも気持ちいいだろうな……やりすぎて問題にならないことを祈るばかりだ。

私は実際のお化けの役の子たちの姿をチラリとだけ見ただけだけど、あの特殊メイクなら仕方ないなぁと内心で思った。


ゆきねぇ、来たよぉ」


数名のお客さんが出たり入ったりした時、聞き覚えのある声に顔をあげた。


「すごい人気だねぇー。いっぱい待ったよぉ」

「ダイジョウブダイジョウブダイジョウブダイジョウブ……」


いつもののほほんとした表情だけど、どこかドキドキワクワクしてるような、楽しみにしている感じの氷華ひょうか

それとは対照的に顔面蒼白で、呪文の様に同じ言葉を繰り返す空色くしな

きっと氷華に無理やり連れてこられたんだろう……大丈夫かな……。


「すっごい怖いって聞いた」

「うん。まぁそうなんだけど……空色大丈夫?」

「ダ、ダイジョウブです……しょ、所詮……つ、作り物ですから」

「そうそう。作り物だから大丈夫だよくーちゃん」


この様子だと、お化けは苦手みたいだなぁ。ホント大丈夫かな……


「はい、これライト。暗いから足下気をつけてね」

「はーい」

「うぅ……」

「……あのさ空色、そんなに怖いならやっぱり……」

「さぁくーちゃん!!いざ、お化け屋敷へー!!」


引き止めようと声をかけたけど、そのままずるずると氷華に引きづられて中に入って行った。


「大丈夫かな……」


なんて思いながら、椅子に座り直して、出入り口の方に目を向けて、次のお客さんを案内する準備をする。

だけどやっぱり、空色のことが心配で、教室の中に聞き耳をたてる。だけど、中から聞こえるのは脅かしている同級生の声だけ。二人の声は全く聞こえなかった。


「はぁ、すっごく楽しかった!!」

「…………」


数分後、二人は無事に中から出て来たけど、入る前と同じ様に対照的な表情を浮かべていた。

いつも通りの表情の氷華は、僅かに目を光らせながらどこか満足げな表情を浮かべていた。

逆に空色は、完全に魂が抜けきっていた。

多分二人の声が聞こえなかった理由は、氷華はよく出来ていたから感心して声をあげなくて、空色は恐怖のあまり声をあげられなくなっていたんだと思う。


「雪ねぇ、楽しかったよ」

「そ、それは良かった……」


チラリと空色を見るが、まだ恐怖が抜けきってない様で、一言も喋らなかった。怖かったのはわかるけど、なんだかちょっと寂しい気がする。


「当番終わったら、ライブ前に二人のクラス行くね」

「ん、待ってるね」


氷華は大きく手を振り、そのまま空色の手を引いて他のところへと向かった。


「大丈夫かな……」


氷華はともかく、空色が心配だ。

これで私の顔を見るなりお化け屋敷のこと思い出して怯えられて、避けられたりなんかされたらどうしよう……

そんなことになったら、もうなんか色々立ち直れない気がする……


「ずいぶん人気みたいね」


不意に聞こえた声。その声に私は我に帰って顔をあげた。


「あ、春歌はるかさん」

「ヤッホー。お疲れさん」



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