4−14話:雪 side
「いやー、ホント雪凪の画力よ」
「写真撮っていい」
「やめれい」
休みが明けて、今日からまた学校。ただ、今週からは授業内容が変わっている。
文化祭が近いということで、授業はなくなって、文化祭の準備が忙しく行われる。
うちの学校は、イベントごとには全力でという風習がある。結構この風習が気に入って入学する生徒も多く、その結果が文化部が有名になってる理由だと思っている。
「なんだろうね、雪凪のイラストって、何度もみると愛着わくね」
「わかる。よくお店にある、可愛くないのになぜか人気のキャラみたいな」
「褒めてないよね……むしろバカにしてるよね」
「してないしてない」
「味があるってことだよ」
「遠回しにバカにしてるよね」
ムッとした表情をクラスメイトたちに向けながら、私は黙々と色ぬり作業をする。
「雪凪ー、ちょっとこっち来てー」
その時、他のクラスメイトに呼ばれ、返事を返してそっちに向かう。
その子たちはメイク担当で、お化け役の人の体に色々描いたりする。
数名は美術部で、我が妹、氷華の先輩だ。後は、美術部員じゃないけど、絵が得意な子たち。
「何?」
「ちょっと特殊メイクの練習台になってほしいの」
「えー……」
「片腕だけでいいからさ」
まぁ、現状私役立たずだし、手伝えるならなんでもいいかな。
「わかった」
「ありがとう雪凪」
椅子に座り、机に片腕を出す。
メイク担当の子は、真剣に、だけどどこか楽しそうに筆を走らせる。
最初は筆がすごくくすぐったかったけど、徐々に慣れてきて、スマホをいじる余裕も出てきた。
「よし、できた!」
作業を見ていなかった私は、クラスメイトのその言葉で視線を自分の腕に向けた。
「ヒィ!」
わずかに悲鳴をあげて、思わず立ち上がってしまった。
だって、自分の腕の肉がえぐれてるんだよ?そりゃぁびっくりするよ。
「雪凪大げさだよー」
「いや、大げさじゃないって。すっごいびっくりした」
「おぉー、すごいリアル」
「グロ……」
騒ぎを聞きつけ、他のクラスメイトが集まってきて私の腕をみる。
本当に怖い……これは、お客さんもきっとびっくりするだろうな……
「洗えば消えるから。ありがとね雪凪」
「……ねぇ、これ写真撮っていい?」
「ん?いいよ。何、氷華に送るの?」
「ちょっとびっくりさせようかと思って」
お互いに小さな子供の、いたずらを楽しみにするような顔をしながらクスクス笑う。
それに多分、近くに空色もいるだろうから、そのまま氷華が見せるかもしれない。
「あ、来た」
数分後、空色からメッセージが届いた。内容は、苦情だった。
《くーちゃんが泣いたので、苦情メールを送ります》
《氷華は?》
《アリス先輩が描いたんでしょ?すぐわかったから、あんまり怖くなかった》
ありゃりゃ、氷華には効かなかったか……その分空色が怖がったみたいだけど。
とりあえず、謝罪メールを送っておくかな。




