4−11話:雪 side
「結構いい位置だね」
少しだけ急いで来たおかげで、かなり前の方に場所取りができた。
ただ、私たちの運が良かったみたいで、あっという間に後ろにはたくさんの人が。
「これは氷華無理そうだな……やぱり待ってれば良かったなぁ」
と、ちょうど噂をしていれば氷華からメッセージが。
《すごい人。お姉ちゃんたち前の方?》
《うん。これそう?》
《んー、無理かなぁ。結構身動き取れない》
《じゃあ氷華はそこで一人で見てな。そっちに行きたいけどこっちも身動き取れない》
《了解スタンプ》
《変な人に声かけられてもついて行っちゃダメだよ》
《大丈夫だもん!》
そのメッセージを受け取って、やりとりは中断した。
隣で、空色も氷華とやりとりをしてるみたいだけど、なんだかすごく楽しそうだ。というか、二人同時にやり取りとか、あの子すごいな……。
「空色、大丈夫?」
「え……あぁはい。大丈夫です。ちゃんと見えます」
「いや、まぁ……そっか」
「はい!前の方で良かったです」
ニコッと、可愛い笑みを浮かべる空色。
三人で一緒に見れないのは残念だけど、空色と二人っきりになれたのは純粋に嬉しかった。ごめん、氷華。
「楽しみですね、お姉ちゃんのライブ」
「そうだね。空色は見たことあるの?春歌さんのライブ」
「あ、はい。お母さんと何度か。先輩は?」
「私は初めてだよ」
私が春歌さんがバイトしてるライブハウスで演奏することはあっても、春歌さんが私がバイトしてるライブハウスでライブしたことはない。
だから、どんな演奏をするんだろうってすごく楽しみだった。
「すっごくかっこいいですよ。先輩に負けず劣らず」
「そうなんだ。って、自然と私のことも褒めないでよ、恥ずかしいなぁ」
「事実ですもん」
少しいたずらっぽく笑う空色。本当に、表情がコロコロ変わって可愛いな……どんな表情を見ても、胸がひどく締め付けられる……。
「おい、出て来たぞ!」
「春歌—!!」
歓声が上がって、私と空色もステージの方に目を向けた。
「「え」」
「みんなー!!盛り上がってるー!」
会場は大いに盛り上がっているけど、正直目の前の光景に驚いている。
ニコニコと笑みを浮かべている春歌さんはいつも通りなんだけど、服装は出し物で着ていた男装衣装。
他のメンバーも、自分のクラスの出し物だろうか……それはもう、仮装バンドって感じになっていた。
「すごいなぁ……」




