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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
1章:春、送られてくる彼女の心
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1−7話:空side

「わぁー、結構人がいるね」

「うん。なんか今日のイベントに人気のバンドが参加するらしいよ」

「そうなんだ」


 ライブハウスはかなりの人で溢れていた。

 氷華ひょうかちゃんと早めにきたけど、もう結構な人が会場に来ていた。


「氷華ー」


 誰かが氷華ちゃんの名前を呼んでおり、二人一緒に辺りをキョロキョロした。すると、人混みをかき分けて、二人の女性がこちらへと近づいてきた。


「お母さん、まいちゃん」

「氷華ー久しぶりー」

「いやー、すごい人だね」


 親しげに話す氷華ちゃん。来る途中で聞いた、お母さんと叔母さんのようだ。すっごく若い……それに美人。


「あら、こちらがお友達?」

「うん、くーちゃんだよ」

「は、はじめまして」


 あわあわしながらペコペコ頭を下げる。氷華ちゃんのお母さんとはいえ、やっぱり知らない人だと緊張しちゃう。それに、先輩のお母さんでもあるんだし……


「いつも氷華と仲良くしてくれてありがとね」

「いえ、こちらこそ。氷華ちゃんにはお世話になりっぱなしです」

「いやそんなそんな。氷華にいつもお菓子作ってあげてるんでしょ?ホントごめんね」

「す、好きで作ってるので大丈夫です。むしろ喜んでもらえて嬉しいです」


 にっこりと笑って「そう」と言われて、ちょっと熱が入りすぎちゃったかな。変な子だって思われてないかなと、不安と恥ずかしさが入り混じってしまう。


 氷華ちゃんはそのままお母さんたちと会話を始め、私は後ろでその話を聞いていたが……


(あ、お姉ちゃんだ……)


 視線の端。ライブ会場からスタッフTシャツを着ているお姉ちゃんの姿があった。

 声をかけようかと思ったけど、忙しそうにしてるからやめた。ちょっと不安だったけど、お姉ちゃんの顔を見れて少し気持ちが落ち着いた。氷華ちゃんもだけど、たくさんの知らない人の中に一人でも知り合いがいるだけで気持ちが落ち着く。


「開演30分前になりましたので、お越し下さったお客様は、ゆっくりと会場の方に足を運んでください」


 遠く、会場の出入り口でスタッフさんの声が聞こえて振り返る。


「くーちゃん、なるべく前の方いこう。私たちちっちゃいから」

「お母さんたちは?」

「二人は後ろの方でも大丈夫だからって。行こう」

「う、うん」


 氷華ちゃんに手を引かれ、私たちはなるべく前の方へ人混みを進んだ。

 一番前ではないけど、結構前の方までたどり着くことが出来た。

 ステージとの距離、結構近い……


「今回は何組ぐらい出るの?」

「えーっとね、雪ねぇのところも入れて4組だよ。雪ねぇたちは最後」

「そっか」


 早く先輩の演奏を見たかったけど、そこはぐっと我慢してライブを楽しんだ。

 会場はスタートから熱気に包まれており、少しだけ額に汗が滲む。


「次、雪ねぇたちだよ」


 隣でニコニコウキウキする氷華ちゃん。私も表情には出さなかったけど、内心結構発狂してる。ついに先輩の演奏!!


「どうもー、皆さん!!こんにちはー!!」


 明るく挨拶したのは、ボーカルを担当する男性。わずかに女性の黄色い歓声が上がる。

 私の視線はすぐに先輩に注がれる。ボーカルの方が話している間に、ギターの調節をする先輩。ほんとかっこいい。


「くーちゃんガン見……」


 氷華ちゃんが隣で苦笑いを浮かべていたけど、私は全く気にしなかった。先輩から目を離すなんてことはできない。


「それじゃあ早速、一曲目いきまーす」


 いよいよ先輩たちの演奏が始まる。

 曲は先輩が作ったものかはわからないけど、ステージで堂々と演奏する姿は本当に綺麗で、カッコ良くて、胸がぎゅっと苦しくなって涙が滲んでしまう。

 

 私はじっと、先輩を見上げた。視線が交わることはない。それでも、私は先輩は見つめ続けた。

 いつか自分が書いた歌詞の曲をこのステージで先輩に歌ってもらって、この距離で……ううん。もっと近くで聴きたい。


 私は心の中でそう願った……。


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