4−8話:空 side
「むむ……えいっ!」
乾いた空砲音がなった後に、台に置かれた人形が地面に落ちる。
今いるのは射的の出店。どこの学科の人がやってるかわからないけど、なんか機械っぽい学科の人の出し物。私がいま握ってる銃は、この学科の人が作ったものらしい。
「おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
(かわいいなぁ)
「オマワリさーん」
「なんで!!」
大学生のお兄さんから、景品の人形を受け取った。
当然初対面だから人見知りが出てしまって、顔をうまく見ることができなかった。
「くーちゃん、取れた?」
「え、あぁうん。取れたよ」
抱きかかえている人形を氷華ちゃんに見せると、「おぉー」といいながら小さく拍手をしてくれた。
先輩はまだ別のゲームをしているみたいだった。もう少しかかりそうだな。
「氷華ちゃんは終わった?確か、何か欲しいものがあったんだよね?」
「うん。無事に獲得できました。じゃーん」
そう言いながら箱を掲げる氷華ちゃん。箱には“コピック”と書かれてる。
確か、絵を描く道具だっけ?
「獲得点数高かったから頑張った」
「液晶の的当てゲームだっけ?」
「うん。頑張ったら、なんか高得点出た」
「そ、そうなんだ……すごいな……」
氷華ちゃんって、好きなものが絡むとホントにすごいよな……私はたとえ好きなものでも、頑張ってどうにか、はならないかな。でも、ものによるかな。
「はぁ、ダメだった」
「お疲れ様です」
「お疲れー」
「お、二人はうまく言ったみたいだね」
ゲームを終えた先輩は、少しだけ肩を落としていた。ゲームは失敗したみたい。残念……。
「それじゃあ他のところ行こうか」
「はい」
「次はどこ行こっか」
そのまま教室を出て三人一緒に廊下を歩く。
高校の文化祭はまだ体験したことないけど、中学の文化祭とはやっぱり雰囲気が全然違う。というよりも、出し物クオリティが高い。なんというか、アミューズメントパークにきてる気分だ。
だからか、本当に辺りをキョロキョロしてしまう。
「あ、くーちゃん。ここ面白そうだよ」
「どれ?」
「ここ。結構近いね」
「面白そうだね、行こう」
誰が見ても氷華ちゃんははしゃいでる。私も、氷華ちゃんほどじゃないけど、結構はしゃいでる。だって、すごく楽しいもん。
「楽しい?」
口に出ていたのか、先輩にそう聞かれた。
一瞬驚いたけど、私はすぐに「はい」と答えた。
「よし、雪ねぇ!くーちゃん!いざ、次の戦場へ」
「はいはい」
「うん、行こう」
多分今、今まで一番楽しい時間を過ごしているかもしれない。




