4−6話:空 side
「えっと、もう来てるって……」
「あ、くーちゃーん!!」
週末。今日はお姉ちゃんの大学で学園祭があるので、氷華ちゃんと雪凪先輩と三人で行くことに。
二人は電車で学校に通っているから、学校の最寄り駅のホームで待ち合わせをしている。
本音を言えば先輩と二人で行きたかったけど、流石にそれは我儘すぎる。それに、氷華ちゃんは大事な友達だし、別に嫉妬とか……んー……
「どうしたのくーちゃん?」
「へ?い、いや!なんでもないよ」
いつの間にか氷華ちゃんの顔が目の前に。近くにも先輩もいる。
へ、変な顔してなかったよね……
「くーちゃんの服かわいい。フリフリだぁ」
「氷華ちゃんも可愛いよ。ワンピースって珍しいね」
「うん。この服だといっぱい食べれるからね!」
いつものぼんやりした表情だけど、目がキラキラ輝いてるのがわかる。
本来の目的はお姉ちゃんのライブだけど……まぁ楽しみにしてるならいいかな。
因みに、私もちょっとドキドキワクワクしてる。
「二人とも、そろそろ電車が来るから少し大人しくね。危ないから」
「あ、ごめんなさい」
「はーい」
三人一緒にホームのベンチに腰掛けて電車が来るのを待つ。私はその、如月姉妹に挟まれているので、氷華ちゃんの反対側には先輩が座ってる。
どうしよう、すっごく緊張する。
「ん?あ……」
不意に氷華ちゃんがどこかへ行った。
どうしたんだろうと思ってると……。
「おばあちゃん大丈夫?荷物、氷華が持とうか?」
「あー、ありがとね」
「気にしないで。おばあちゃんは、次の電車に乗るの?」
「そうじゃよ」
「じゃあ氷華と一緒だ。じゃあ、降りる駅まで氷華が持っててあげる」
私たちが座ってるベンチから離れたところにいるおばあさんの側に行った氷華ちゃん。会話は微かに聞こえる程度だけど、ちょっと意外。
「氷華、あれで結構親切だから、近所のおじいちゃんおばあちゃんからも人気なんだよ」
「そうなんですか?」
「そうそう。困ってる人がいたら手助けするって感じかな。ぼーっとしてるけど、なんだかんだいい子だから」
「………そうですね、わかります」
電車が来るまで氷華ちゃんはずっと話していた。しばらくして電車が来ても、そのままおばあさんと一緒に入って行った。多分、さっきの会話からおばあさんの降りる駅までは一緒にいるんだと思う。ということは……
「結構空いてるね」
「そ、そうですね……」
氷華ちゃんが戻って来るまでは先輩と二人っきり!!ど、どうしよう!!
す、すごく緊張する。だって、こんな二人きりって久々で……だ、大丈夫かな?へっ、変じゃないかな!?
「大学の文化祭か……私初めてだから楽しみだなぁ。空色はいったことある?」
「え!あ、えっと……わ、私も初めてです。一人で人が多いところに行くの苦手で……」
「そっか。じゃあ私たち、初めてどうしだね」
顔を近づけて、先輩がそう笑顔で言って来た。本当に、先輩はずるい……
先輩の何気ない発言や行動が……もっと私を魅了して、先輩のことを好きにさせる……。
「そうですね」
それからはどんなお店があるかなとか色々話をして、三駅分止まったところで氷華が隣の車両から戻って来た。
「ただいま〜」
「おかえりなさい」
「お疲れ様」
「おばあちゃんからお菓子もらった」
そう言って差し出されたのは、小分けされた麩菓子だった。
よくおばあちゃんの家で食べてたような気がした。
とりあえず、電車で食べるのもあれだし、麩菓子は帰って美味しく食べようかな。




