4−2話:雪 side
九月上旬。夏休みが明けて、今日から二学期が始まる。
九月とはいえ、すぐに気温が変わるということもなく、相変わらず体育館の中は蒸し暑い。
ちらほら目にする生徒の一部は夏を満喫したようで、黒く焼けている。
私はほとんど室内にいたから、日焼けなんかはしていない。
式が終わった後は、そのまま教室に戻って、先生の話も手短に、そのまま文化祭の準備になった。
「あはは!雪凪の絵、やば!」
「え、雪凪それガチなの?」
「う……そんな笑わなくてもいいじゃん!!」
うちのクラスの出し物はお化け屋敷。結構リアリティに拘り、本気でお客さんを怖がらせにいくらしい。
私は軽音楽部の演奏があるため、担当は受付になっている。なので、準備期間は看板の制作などの手伝いをするのだが……。
「妹ちゃんは絵が上手いのに……」
「ねぇ、そんなに酷い?」
「「酷い」」
声を揃えて言わないでほしい……確かに氷華よりは絵の才能ないけどさ……私だって母さんの娘だし、絵の才能はあると思うんだけどな……。
「まぁよく言えば、一種の芸術?」
「味がある、みたいな」
「はいはい、フォローありがとうございます」
「いじけんなって」
「そうそう。絵はこっちで描くから、雪凪は色ぬりしてよ」
「はーい」
むすっとした表情を浮かべながら、私はクラスメイトの指示通りに色を塗っていく。
今更だけど、私って音楽以外は結構苦手だったりするのかな?いや、料理はできる。そこは大丈夫。
「あ、雪凪のイラスト写メろ」
「私も私も!」
「ちょっ!笑い者にする気でしょ!」
「しないしない。記念だって」
「そうそう。雪凪のイラストなんて、滅多にお目にかかれないしね」
「もぉー!!」
授業という授業は午前中までで、午後からは自由に帰っていい。
文化祭の準備で残ってもいいし、そのまま家に帰ってもいい。今日は軽音楽部の練習もないため、四時間目のチャイムが鳴れば、私はそのまま家に帰るつもりだ。
クラスメイトと会話をしながら作業を進めれば、あっという間に時間はすぎて、気がつけば四時間目終了のチャイムが鳴った。
「じゃあ私は帰るね」
「えー」
「元々今日は、午前中しかいるつもりなかったから」
「ちぇー」
「また明日ー」
帰り支度をし、軽く手を振りながらそのまま教室を出て行った。




