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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
4章:夏は溶け、秋空に歌う彼女の恋
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4−1話:空 side

「はぁ……はぁ……はぁ……」


八月下旬。今日は、コンテスト当日。

会場にはたくさんの同じ年齢の女の子と、数人の男の子の姿があった。

同じ学校の人たちも今回のコンテストには参加しているけど、私は緊張しすぎて隅のベンチに腰掛けてる。


「落ち着け……大丈夫、大丈夫だから……」


心臓はばくばくで、不安が込み上がってくる。やれるかな、ちゃんとできるかなって考えれば考えるほど、頭の中が真っ白になっていく。

周りの音が聞こえなくて、自分の心臓の音がひどく耳に響く。どうしよう、すごく苦しい……やっぱり、出るんじゃなかった……


ピコン!


「はっ……あ、え……通知……」


不意に聞こえた機械的な音。さっきまで息苦しい感じをしていたのに、一気に現実に引き戻された。


「会場ではマナーモードにしておかないといけないのに、緊張してたからきり忘れてたのかな……」


そう思いながら、マナーモードにするついでにメッセージの確認をした。


「あ、氷華ちゃんと……雪凪先輩……」



《コンテスト頑張って。後、ケーキ食べたい》

《頑張って》


「ふふっ」


二人からメッセージは、とてもらしいなって感じの内容だった。だから思わず笑っちゃった。


あの日から、先輩とは会っていない。だけど、メールのやり取りは頻繁にやっていた。

先輩があの詞の曲を歌うことになったと聞いたときはすごく嬉しかった。胸がギュって苦しくなって、そこから今日のコンテスト用のケーキが生まれた。


「メッセージ返さないと」


それぞれに一言ずつメッセージを返信して、そのままカバンの中にスマホをしまった。次にメッセージを見るのは、コンテストが終わった後。


「スゥー……はぁ……」


メッセージのおかげか、さっきまでの激しい緊張と不安はなくなった。


「参加者の皆さん、時間になりましたので中に入ってください」


遠く、スタッフさんの誘導の声が聞こえて、思わず勢い良く立ち上がった。

いよいよ、コント開始の時間になった。


「桜和さん、行くよー」

「あ、はい」


参加する生徒たちが中に入って行く中、先輩に呼ばれて、私も会場の中に向かう。

受かっても落ちても、コンテスト用に考えたケーキは、先輩に食べてもらいたい。もちろん、氷華ちゃんにも。

またクスッと笑ってしまったけど、気持ちが少し軽くなり、頑張ろうって気持ちで中に入って行く。


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