3−37話:雪 side
「うん、いい感じだね」
「うんうん!やばいぐらいいい!!」
「すごくしっくりきますね」
お盆前の最後の練習。明日から学校がしばらく入れなくなるということで、部員全員の気合いも高かった。
花火大会後の練習に顔を出した時、色々言われるかと思っていけど、みんな快く迎えてくれた。理由を聞くことなく、いつものように練習を行った。
「私たちも悪かったからね」
帰り道、愛華にそのことを尋ねると、そう答えた。そしてついでに、あんなに怒っていた私にも驚いたと言われた。なんだかすごく恥ずかしかった。
「もうほぼ完成だし、あとはもう少しアレンジをして微調節しようか」
「Cメロのドラム、もう少し抑えようと思ってるんだけど」
「じゃあ、ここでのピアノを少し柔らかくして……」
今回は私が歌うわけじゃないから、ギターにだけ集中できる。だから、少しアレンジを加える余裕もあって、普段よりも曲に厚みが出る。
「そういえば雪凪、新曲の方どうなってる?」
不意に、菫先輩にそう尋ねられた。
まだ空色から出来たというメッセージはない。なかなか苦戦しているようだけど、もう時期が時期だ。
「苦戦してるみたいです。今回に限っては、私も詩がないと曲が作れませんし」
「そっかぁ……まぁこっちはお願いしてる身だから早く!とはいえないしね………」
「曲ができたらすぐにお渡ししますので、もう少し待っててください」
「わかったわ。それまでは衣装とかポスター作りをしましょうか」
「ですね」
「私、衣装のデザイン案持ってきました!!」
「あっ!! みたいみたい!!」
私は臨時のギター担当。練習以外だとほとんどやることはない。あるとすれば衣装のサイズ測定と合わせぐらい。
「これかわいい」
「私はこっちの方がいいかな」
みんな楽しそうだな……まぁ、私は私のやるべきことをやらないと。
ピコンッ
「ん?」
不意に、誰かからメッセージが届いた。
楽しく会話している部員たちを横目で見ながら、メッセージを確認をした。
《今日って、学校にいらっしゃいますか?》
相手は空色からだった。久しぶりのメッセージに、思わず口元が緩んでしまう。
《いるよ》
《詩ができたので、第二家庭科室まで来てください》
「ごめん、私少し出てくる」
手にしていたギターをしっかりとケースにしまうと、少しだけ慌てた声で軽音楽部のみんなに言葉をかけて、足ばやに第二家庭科室に向かった。




